英国在住30年以上のフリーランス・コンサルタント山田直氏が、新しい大学の生き方を求め、イノべーション創出、技術移転などに積極的に取り組む英国の大学と、大学を取り囲む英国社会の最新の動きをレポートします。(毎月初めに更新)
2010年夏、英国大学協会(Universities UK)は2010 年度版の「Higher education in facts and figures」と題する、英国の大学に関する18ページの統計資料集を発行した。今月号では、この英国大学協会の資料から要点を抜粋して紹介したい。(なお、紙面の制約や表の関係から、一部を編集し直して紹介する)
【1. 学生】
1-1) 高等教育機関への応募者数
1-2) 高等教育進学率
1-3) 学科別学生数
1-4) フルタイム、パートタイム別学生数
1-5) 高等教育機関在籍学生数の推移
1-6) 留学生の国籍
【2. 教員】
2-1) 全教員
2-2) 年俸水準別・教員数
2-3) 年齢別・教員比率
【3. 財務】
3-1) 地方別・高等教育機関数
3-2) 高等教育機関の規模
3-3) EU以外からの留学生数及びその授業料収入
3-4) 高等教育機関の総収入の内訳
3-5) 高等教育機関の総支出の内訳
3-6) 国別の高等教育への公的支出のGDP比率
【4. 筆者コメント】
イングランド地方の高等教育進学率は、1999年の39%に比べ、2008年度には45%に達している。これは、高等教育進学率50%達成を目標に掲げた10年以上にわたる前労働党政権による各種支援政策の結果であるが、現保守党政権は高等教育進学率をこれ以上に高めることに消極的であるように思われる。今後は、単に高等教育進学率を高めるよりも、社会や学生のニーズに応じて、技能訓練を含めた高等教育以外の各種教育訓練にも力を入れていく可能性がある。
運営費交付金の大幅削減に直面している各大学は、授業料収入増を図るために、すでに全学生の10%を超えているEU以外からの留学生のさらなる確保に力を入れると思われる。しかしながら、最近では留学を装った不正入国者が増加していることから、英国政府は学生ビザの発給条件を厳しくしており、かつ2012年度からは多くの大学が現在の授業料の3倍近くの値上げを計画しており、今後は英国といえどもEU以外の留学生を大幅に増やすことは難しくなるかもしれない。
注釈)
- *1 2年コースの「Foundation Degree」など。
- *2 1ポンド135円で換算。