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野口さん、米国の新型宇宙船でISS到着 「『全集中』で頑張りたい」と抱負

2020.11.18

 野口聡一さん(55)と米国人3人の宇宙飛行士を乗せた米スペースX社の新型宇宙船「クルードラゴン」が日本時間16日午前、米フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられ、17日午後、国際宇宙ステーション(ISS)に到着した。クルードラゴンは今年の5~8月の有人試験飛行に続く打ち上げで、米国の有人宇宙船の本格運用がスペースシャトル廃止以来9年ぶりに再開した。3回目の飛行となった野口さんは、約半年間のISS滞在を開始し、人気漫画の言葉を引用して「全集中で頑張りたい」と話した。

ISSに到着し、滞在中の米国人飛行士から歓迎される野口さん(NASAテレビから)
ISSに到着し、滞在中の米国人飛行士から歓迎される野口さん(NASAテレビから)

 クルードラゴンは16日午前9時27分に同社の大型ロケット「ファルコン9」に搭載されて打ち上げられた。約12分後にロケットから分離されて打ち上げは成功した。全自動で飛行を続け17日午後1時1分、高度約400キロのISSにドッキングした。結合部の気密性などの確認を経てハッチが開き、午後3時18分ごろに野口さんらがISSに移ると、滞在中の米露3人の飛行士が出迎えた。

 10月31日に予定された打ち上げは、ロケットの追加点検のため今月15日に、さらに悪天候で16日に延期された。15日なら約8時間半の行程だったが、宇宙船の飛行経路が変わり約27時間半の長旅となった。

野口さんらのクルードラゴンを載せ打ち上げられるファルコン9(左)と、ISSに接近するクルードラゴン(右)=いずれもNASA提供

 野口さんはクルードラゴンに外国人として初搭乗。操縦には直接関与せず、飛行データの監視など船長らを補佐する役割を果たした。野口さんら飛行士は搭乗機に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの困難に打ち勝つ意味を込め、英語で回復力を意味する「レジリエンス」と命名している。

 到着のセレモニーで、筑波宇宙センター(茨城)から交信した宇宙航空研究開発機構(JAXA)の山川宏理事長が「全日本国民に勇気と歓喜を引き起こした。本格運用初号機に野口さんが乗ったことはとても重要なこと。全集中で頑張ってください」と呼びかけた。野口さんはこれに応え「ISSに戻ってきて感無量。日本、世界中の皆さん、今年はコロナをはじめ非常に厳しい状況があったが、(搭乗機に)レジリエンスと名付けて頑張ってきた。全集中で頑張りたい」と話した。

到着のセレモニーで発言する野口さん(前列右端、NASAテレビから)
到着のセレモニーで発言する野口さん(前列右端、NASAテレビから)

 米国はスペースシャトルの廃止後、有人飛行をロシアの宇宙船「ソユーズ」に依存してきた。米航空宇宙局(NASA)は自国の有人船復活を目指し、宇宙船開発と運用を2社に委ねた。このうちスペースX社は現役の物資補給機「ドラゴン」をベースに、有人仕様のクルードラゴンを開発した。ボーイング社の「スターライナー」は昨年12月、無人試験飛行に臨んだものの、エンジン噴射のタイミングがずれてISS到着に失敗。年内にも再挑戦する。

 野口さんは石川島播磨重工業(現IHI)を経て1996年に宇宙飛行士候補者に選ばれた。2005年にスペースシャトル「コロンビア」の空中分解事故後のシャトル初飛行に搭乗。2009〜10年には日本人では初めて「ソユーズ」でISSと地上の間を往復した。

 来年春ごろには、野口さんに続き星出彰彦さん(51)がクルードラゴン本格運用2号機で飛行予定。日本人2人目となるISS船長を務める。

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