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所得見劣る推薦・AO入試入学者

掲載日:2013年3月25日

推薦入試やAO(アドミッションズ・オフィス)入試による入学者は、学力試験で入学した人たちに比べ、社会人になって収入が低いことが、西村和雄・京都大学経済研究所特任教授らの調査で明らかになった。西村氏らは、これまでも2000年前後から大学生の学力低下が顕著になったことに警鐘を鳴らし続けている。さらに文系出身者より理系出身者、文系出身者の中でも入試科目に数学を選択した人の方が高収入、という調査結果を近年、発表している(2010年8月27日レビュー「大学受験で数学をとった人々の将来」、2010年8月27日ニュース「理系出身者の方が高収入」参照)。今回の調査は、大学入試制度の多様化が、目的通りの効果を挙げているかどうかを調べるために実施された。推薦入試やAO入試は、1980年代半ばから行われるようになった。学力考査(試験)以外の幅広い選抜方法を採用することで、学力試験では測れない多様な能力を持つ人材に大学教育の門戸を開くことを目的としている。推薦入試やAO入試制度が始まった時に大学入学年齢に達した人たちは、調査時点(2011年)で45歳前後になっている。このため、調査は45歳以下を対象にインターネットを利用して、平均所得を回答してもらった。

その結果、学力試験を受けて入学したという回答者5,126人の平均年収は約470万円だったのに対し、学力試験を課さない推薦入試やAO入試制度で入学した1,244人は約394万円と明らかな差が見られた。こうした格差傾向は、文系と理系、あるいは国公立と私立の違いで変わりはない。格差が最も大きかったのは国公立大学の理系出身者で、学力試験入学者の平均年収約580万円に対し、推薦入試やAO入試制度による入学者は約463万円と、約117万円もの差があった。

西村 氏らは、「大学入試制度の多様化は、さまざまな方向から検証されるべきだが、少なくとも学力考査を課さない入試制度で入学した学生は、大学での学びに苦労し、卒業後も労働市場で高く評価されているとは言いにくい状況が伺える」と言っている。

西村 氏と浦坂純子 氏・同志社大学社会学部教授、平田純一 氏・立命館アジア太平洋大学国際経営学部教授、八木匡 氏・同志社大学経済学部教授による調査結果は、論文「大学入試制度の多様化に関する比較分析―労働市場における評価」として、近く、独立行政法人経済産業研究所ホームページの「ディスカッション・ペーパー」欄に掲載される。

平均所得の格差(数字の単位は万円)
平均所得の格差(数字の単位は万円)
(提供:西村 氏)
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