レビュー

地震学会員の社会的関心度

2012.05.14

 日本地震学会が11日、「地震学の今を問う」(東北地方太平洋沖地震対応臨時委員会報告)を公表した。

 「短い期間のデータから考え出したことに縛られ、間違った前提条件のもとに将来を推定していた。そのことに深い反省を行わなければならない」(松澤暢・東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究観測センター教授)など、今回の地震発生を予見できなかった地震学者の反省や、今後の社会的責任を強調する多くの論文を含む。今回の地震発生に対し、地震学者たちが感じている責任の大きさが十分伺える内容だ。

 一方、地震学と社会との関係について、一般の人にとっては意外と思われる現実も読み取れるのではないだろうか。「地震学への提言-臨時委員会における議論の総括-」の中で、東北地方太平洋沖地震対応臨時委員会(委員長:鷺谷威・名古屋大学減災連携研究センター教授)は、地震学会員に「本職である研究以外でも、地震防災やアウトリーチに対する意識改革を呼びかけたい」と訴えている。提言はさらに「地震学と社会を結びつけるこうした取り組みに、より多くの研究者が関わることが望ましいが、自ら参加しないまでも、そうした取り組みを正当に評価し、敬意を払うべきである」とも書いているのだ。

 地震研究を職業にしながら、研究成果の社会への発信や説明ばかりか、防災そのものに関心が薄いとしか思えない研究者も少なくない、ということだろう。

 報告には、昨年9月から10月にかけて地震学会員に対して実施したアンケート結果(回答者627人)も付いている。「地震学会は国や自治体の施策にこれまで十分に関わってきたと思うか」との問いに対する回答はどうか。「関わってきた」とする人が6%という結果だ。「関わってこず」との答えが、22.2%もある。

 また、「地震学の知見を防災に役立てるうえで、次にあげる要素が障壁となっていると思うか」という問いについてはどうだろう。障壁として挙げられた中の「研究者の防災に対する意識が希薄なこと」という要素(理由)に対して、「そう思う」という回答が24.6%あった。ちなみに「そう思わない」は10.6%にとどまる。さらに「他分野への関心が希薄なこと」が障壁ではないかという理由に対しては、「そう思う」という回答が、実に3人に1人(33.1%)いた。

 東日本大震災を機に、一般の人々や国、自治体の防災担当者の防災意識が問題になっている。自らの研究対象にしか関心を持たず、自分の専門以外の分野には関心が薄い地震学者というのはいかがなものだろうか。

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