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核燃料サイクルのコストは

掲載日:2012年4月20日

原子力委員会の「原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会」が19日、2030年までに核燃料サイクルにかかる費用を3つのケースについて試算した結果を公表した。3つもケースとは、「2030年時点で総発電量に占める原子力発電の割合が35%」、「同じく20%」、「2020年時点で原子力発電がゼロ」だ。

この3つのケースについて、「使用済み燃料を全て再処理し、プルトニウム・ウランの混合燃料(MOX燃料)として再利用する)」「再処理と一部を直接処分(地中などに埋める)の併存」「全て直接処分」の3通りについて必要となるコストを算出している。

新聞各紙の報道を見ると、再処理と直接処分を組み合わせた場合より、全量を再処理した場合の方が高くつく、ということを強調しているように見える。それはその通りなのだが、一番安く済むのは2020年に原子力発電をゼロにするケース、という試算結果にも注目してよいのではないだろうか。さらに2030年に電力の30%が原子力のケースで、全てを直接処分すると全量を再処理した場合よりさらに高くつく、という数字にも。

要するに原子力発電に依存する期間、割合が長く、大きいほど再処理しようが直接処分しようがコストは高くなるという評価だ。

そもそも核燃料サイクルの意義は、エネルギー資源に乏しい日本が、使用済み燃料を再処理、再利用することでウラン資源を最大限利用したいことにある。ウランの価格が高騰すればするほど再処理やMOX燃料の加工費用などがかかっても十分、ペイするという計算が成り立つ。しかし、原子力委員会小委員会によると、ウラン価格が2倍になった場合、直接処分することによる核燃料サイクルコストは約35%しか上昇しない。核燃料サイクルの経済的メリットが急激に上がるわけではないということではないか。

今回の試算結果は、政府のエネルギー・環境会議が現在、検討中のエネルギー中長期戦略に反映されるという。2020年に原子力発電をゼロにして使用済み燃料を全て直接処分した時にどのような課題が生じるかは当然、日本が原子力に今後、どのように依存するかを考える上で、重要な検討事項になると思われる。この点について原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会は、次のように指摘している。

再処理事業を中止することで日本原燃と関連会社で働く約5,000人の雇用問題が出てくる。また、蓄積されている建設・運転・保守の知見や人材が失われるため、再び再処理政策を選択したとしても、失われた技術を取り戻すために、長い期間や多大な費用が必要。さらに高速増殖炉サイクルの実用化に向けた研究開発を中止した場合、これまで培ってきた技術を長期間維持することは困難になり、民間に蓄積された技術・人材も失われ、再び高速増殖炉の実用化を目指したとしても、長い期間や多大な費用が必要となる。

このほか、海外からの返還放射性廃棄物を受け入れることができなくなる可能性がある、などだ。これらが、逆に核燃料サイクルをやめられない決定的な理由になるかどうか、が問題だろう。

ちなみに再処理事業にかかわる日本原燃の人員は約2,400人。高速増殖炉サイクルには原子力研究開発機構約1,680人、メーカー技術者約200人という人材が投入されているという。

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