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『はやぶさ』帰還の意義

掲載日:2010年6月14日

TBSラジオ朝の番組「森本毅郎・スタンバイ!」で、前日13日夜7年ぶりに地球に戻ってきた小惑星探査機「はやぶさ」について、森本氏とコメンテーターの渋谷和宏 氏・日経ビジネスアソシエ編集長が、新聞紙面とは一味異なるやりとりをしていた。

聴取者からの反応がまっぷたつであることを森本氏がまず紹介していた。『はやぶさ』をとにかくたたえる声が半分。残り半分は、それほど感動するような話なの、という冷ややかな反応だった、という。

森本氏が、探査機を擬人化してまで褒めたたえるような報道ぶりに懐疑的なのに対し、渋谷氏は、年間400億円を投じる国際宇宙ステーションプロジェクトを引き合いに、半分の費用で済んだ「はやぶさ」の費用対効果は十分、と応じていた。特にNECが開発したイオンエンジンなどを挙げて、今回の成果がこれから宇宙関連ビジネス分野で大きな力になると強調していた。イオンエンジンについては読売新聞の14日朝刊記事でもより詳しく紹介されている。

「NECは、世界初の事業化に向けて米企業と提携し、来年度から3年間で20億円の受注を見込む」。さらに「はやぶさで圧倒的な実績を示せたことで、世界最大の米国市場で占有率6割以上を狙える」というNEC担当者の自信に満ちた声も伝えている。

また日経新聞も「はやぶさの開発費は約130億円。日米欧など15カ国が参加する国際宇宙ステーション(ISS)計画で日本が毎年負担する約400億円に比べ大幅に安い。米の小惑星探査計画に比べても割安だ。日本の宇宙関連ビジネスでの競争力確保に、今回の成功は大きく貢献する可能性がある」という記述で14日朝刊のトップ記事を締めている。

一方、読者の科学・技術的な関心というよりは感情に訴えているのでは、と思われる記述もまた、目に付いた。

「エンジン故障や通信の途絶、燃料漏れなど数々の試練を不死鳥のように乗り越えていく姿に涙腺がゆるむ」(東京新聞14日朝刊1面コラム「筆洗」)、「大気圏突入で探査機本体は燃え尽きる。母が捨て身で子を守ったかのように、直径40センチのカプセルだけが今夜、オーストラリアの砂漠に落下する」(読売新聞13日朝刊1面コラム「編集手帳」)、「満身創痍(そうい)のはやぶさは、地球からの指令に健気に応え、小惑星への往復という大仕事をなしとげた。小惑星のかけらと引き換えに、自らは燃え尽きた」(毎日新聞14日朝刊トップ記事)…。

記事自体はともかく、同じような印象の見出しも多い。「あきらめない姿 人生重ね」(朝日新聞14日朝刊社会面記事)、「あきらめない大切さ知った」(産経新聞14日朝刊社会面記事)、「『満身創痍』乗り越え」(日経新聞14日朝刊社会面記事) 、「『はやぶさ』完全燃焼」(毎日新聞14日朝刊トップ記事)。

「はやぶさ」の科学的意義や、日本の宇宙開発政策に占める位置づけなどについては、各新聞社も既に科学欄、あるいは前触れ記事で書き込んでいる、ということだろう。ただ、多くの読者が最も読むのは当日の記事だ。日本の宇宙開発に問われている最も大きな課題は何か、もきちんと指摘してほしい。多くの人が関心を持つこうした機会にこそ。そう望む読者も相当いると思われるが、どうだろう。

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