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日本独自の有人月探査構想

掲載日:2009年3月16日

2025-30年ごろに有人宇宙船で飛行士とロボットを月に送り込むという計画案を、宇宙開発戦略本部の事務局が6日、宇宙開発戦略専門調査会に提出した、と報じられている。宇宙開発戦略本部は昨年8月に施行された宇宙基本法に伴って発足した組織で、本部長は首相、副本部長は官房長官と宇宙開発担当相、本部員は本部長、副本部長を除くすべての閣僚で構成されている。

宇宙基本法によって、研究開発主導の宇宙開発は、利用を重視した開発戦略に修正されたと説明されている(2008年5月21日オピニオン・鈴木 一人 氏・筑波大学大学院 准教授「宇宙基本法で日本の宇宙開発は変わるか」参照)。宇宙基本法施行前であれば、冒頭のような議論は宇宙開発委員会の役割だった。宇宙開発戦略本部内に設けられた宇宙開発戦略専門調査会(座長・寺島実郎 氏・日本総合研究所会長)に検討が委ねられたことが、宇宙政策の大きな様変わりを示している。

さて、自力の有人宇宙開発計画が具体化するとなると、日本の宇宙開発にとっては大変な出来事だ。ただ、現時点で宇宙開発戦略本部のホームページには、これに関する何の情報は見あたらない。宇宙戦略本部事務局からの提案に、新設の宇宙開発戦略専門調査会がどう対応するのか。議論の途中経過もぜひ詳しくホームページ上で公開してもらいたい、と願う人たちも多いと思われる。

宇宙における有人活動について、これまでどのような議論があったのか、関連のウェブサイトから探してみた。

総務相、文部科学相連名で昨年2月に公表されたばかりの「宇宙開発に関する長期的な計画」では、「宇宙探査への挑戦」の項目中に次のような記述がある。「当面は、工学実験探査機『はやぶさ』等で築いてきた我が国の強みを活かし、無人活動を中心に宇宙探査を進めることとする。…独自の有人活動については、これへの着手を可能とすることを視野に入れ、基盤的な研究開発を進める」。同じ長期計画にある別の項目「宇宙輸送系の維持・発展」中では「将来の輸送系を展望しての有人輸送システムや再使用輸送システムに関しては、重要技術に重点を置いて、将来において独自の有人宇宙活動への着手を可能とすることを視野に入れ、基盤的な研究開発を着実に推進する」とも書かれている。

これらの記述から「何が何でも独自の有人宇宙計画を」という強い意志をくみ取る人はまずいないだろう。

一方、「宇宙探査への挑戦」の項目中には「月は、地球に最も近く、従って、アクセスが最も容易であることから、様々な宇宙探査の足掛かりとなることが期待され、また、地球と同様の進化過程を含む形成期の痕跡が保存されており、宇宙科学における大きな意味を持っている。また、月探査への国際的な関心が高まっており、月探査活動は国際的な影響力を確保する上でも重要なものとなっている」と、月探査についての積極的な記述が盛り込まれている。

結局、「宇宙開発に関する長期的な計画」の中の記述からうかがわれることは、以下のようなものではなかろうか。

有人活動については、国際協力で進めている国際宇宙ステーション計画の中で「我が国単独では困難な、有人宇宙技術や宇宙環境の利用技術の獲得等を行う」ことで現実には精いっぱい。しかし、ブッシュ大統領時代に米国が月探査への意欲を示し、中国その他の国も月に狙いを定めた探査計画を持っているを考えると、日本も置いてきぼりにされるわけにはいかない。

こんな思惑が「宇宙開発に関する長期的な計画」策定の際の議論の根底にあったことが推察される。「宇宙開発に関する長期的な計画」づくりを実質的に担ったのは、宇宙開発委員会計画部会だ。部会で交わされた議論を議事録で読むと、月に狙いを絞ることに確たる意見の一致があったとは必ずしもいえないようにも見える。「なぜ月探査を重視するのか」といった基本的な理由付けからして、いろいろやりとりがあるからだ。

5月に策定する宇宙基本計画の中に日本独自の有人月面探査計画を盛り込みたい。そんな考えを宇宙開発戦略本部の事務局長が記者会見で述べたと報じられている。5月といえばすぐだ。宇宙開発戦略専門調査会が、短期間でどこまで踏み込んだ結論を出せるだろうか。

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