レビュー

アカデミー賞の主役は「環境問題」

2007.02.27

 米映画の祭典、アカデミー賞授賞式を伝える26日夕刊、27日朝刊各紙の記事は、やはり、日本人の俳優や、日本人俳優が出演した作品が「惜しくも受賞を逃した」ことを強調する記事が並んだ。

 「日本(人)に関係するか否か」で、外信ニュースの扱いが極端に左右される。グローバル化が叫ばれようと、こうしたマスメディアの長年の習慣は簡単には変わらない、ということだろう。

 そうした記事の中で「アカデミー賞 主役は『環境問題』 温暖化テーマ…受賞者もエコカー」という見出しを掲げた産経新聞27日朝刊の総合面トップ記事が、目を引いた。

 ゴア前米副大統領が出演している話題作(日本でも公開中)「不都合な真実」が、長編ドキュメンタリー賞と主題歌賞を受賞したことと、ゴア前副大統領をはじめ授賞式に出席したスターたちの多くが、リムジンではなく「ハイブリッド車やバイオディーゼル車」といった「エコカー」で会場入りした様子を伝えている。

 他方、「不都合な真実」に対しては、「根強い反発が保守層に残り、米国は一部で上映反対の動きなども起きている」と、地球温暖化で意見が二分している米国の事情もきちんと紹介していた。

 一方、27日朝のNHKラジオも、アカデミー賞の結果とともに、温暖化対策に向けて新しい動きが米国内に出てきていることを伝えるワシントン特派員のリポートを放送していた。最近、デュポンなど米国の有力企業10社が、二酸化炭素排出削減の取り組みを政府に要請する声明を公表したという。

 ブッシュ政権は、二酸化炭素(CO2)の排出削減を先進国に義務づけた京都議定書から離脱したままだ。

 地球温暖化対策の緊急性を訴える研究者の1人、山本良一・東京大学生産技術研究所教授(インタビュー「持続可能な地球目指し」参照)は、「温暖化対策は既に手遅れの可能性が高いが、一つのポイントは米政府の姿勢が変わるかどうかだ。近々、何らかの動きが出てくる可能性は十分ある」と語っている。

 果たしてブッシュ政権が、政策の変更に踏み切ることはありうるのだろうか。

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