レビュー

つくりあげられた予言

2006.06.09

 ネットや書籍で出回っている「アインシュタインの予言」なるものは、アインシュタインとは全く関係のないことが、中澤英雄・東大教授(ドイツ文学)の調査で明らかになった。

 朝日新聞6日夕刊「科学面」に、久保田裕記者が書いている。この説は中澤教授自身によってウェブ上や雑誌などで何度か報告されていたようだが、この記事ではじめて知った人間にとっては、あ然とするような話だ。

 「我々は神に感謝する。我々に日本という尊い国をつくっておいてくれたことを」。予言はこのように終わる。

 中澤教授によると「アインシュタインの言葉」として引用された例として一番古いのは、1956年の書籍。ただし、該当するアインシュタイン博士の原文は見当たらない。

 一方、よく似た文章が、1928年の田中智学という宗教家の著作「日本とは如何なる国ぞ」に見られる。明治憲法成立に大きな影響を与えたドイツの法学教授ローレンツ・フォン・シュタインの言葉として、という。

 「それが孫引きを繰り返されているうちに、どこかで『アイン』がついて、アインシュタインの予言だということにされてしまったらしい」

 さらに驚くのは、その最初の文章もまた中澤教授によると「起源はシュタインの言葉でもなく、田中智学が自らの思想をシュタインに寄せて語った文章の可能性が高い」というのである。(注:東京本社版の記事から)

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