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唾液PCR検査で無症状感染者をチェック 入国者や濃厚接触者は公費負担

2020.07.21

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のPCR検査について厚生労働省は、有症者だけでなく、無症状の人を対象にした検査にも唾液を使うことを承認した。海外からの入国者や濃厚接触者の検査には公費負担する。唾液PCR検査は鼻の奥の粘液を綿棒で採取する従来の方法よりも簡単、安全に検体を採取でき、結果も短時間で判明する。同省は空港の検疫所などでの水際対策に活用したい考えだ。

 厚労省は東京都内で無症状の感染者数十人を対象に、従来の方法と唾液を用いた方法の双方について検査精度を検証したところ、結果はほぼ一致した。このため、空港の検疫所で入国検査を受ける無症状の人や、感染者の濃厚接触者らの感染の有無を調べるPCR検査の検体に唾液を用いても問題ないとの結論に達した。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の電子顕微鏡画像(米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)提供)
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の電子顕微鏡画像(米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)提供)

 同省は6月2日以降、有症者の発症後9日までに限って唾液PCR検査を認めていた。厚生科学審議会の感染症部会は今回の検証結果を受け、無症状の人にも唾液を用いたPCR検査を行うことについて問題はないと判断した。加藤勝信厚生労働相が17日の閣議後記者会見で、海外からの入国者や濃厚接触者の検査には公費負担するなどの方針を明らかにした。

 厚労省によると、海外からの帰国者のうち、7月16日、17日の2日間に男性6人、女性3人の計9人が無症状ながらCOVID-19陽性と判定された。年代は20代から60代と幅広く、同省は今後の感染拡大防止上、こうした無症状感染者を水際でチェックする必要があると判断。簡便な唾液PCR検査の活用に踏み切った。

 以前は唾液に含まれるウイルス量は鼻の粘液よりも少ないとみられ、唾液PCR検査の精度は低いとの指摘もあった。しかし厚労省研究班がCOVID-19の感染者約90人から採取した唾液を使っての精度を従来の方法と比べると、発症から9日以内なら判定結果がほぼ一致したという。北海道大学の研究でも唾液を使った方法の有効性が確認されている。米食品医薬品局(FDA)も唾液を使った検査キットの緊急使用許可を5月初旬に出し、現在広く活用されている。

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会(尾身茂会長)は無症状の人に対する検査のあり方について議論している。16日の会合では検査対象を(1)有症状者、(2)無症状で感染リスクが高いとみられる人、(3)無症状で感染リスクが低いとみられる人—の3つに分類。症状が無い(2)(3)のうち(2)については公費負担し、(3)については企業や個人の費用負担を前提に検査を受けることに道を開く方針で合意している。こうした考え方に対して、感染拡大を防止するためには無症状の人を広範囲に検査する体制を確立すべきと指摘する専門家も多い。

厚生労働省が入った中央合同庁舎第5号館(東京都千代田区霞が関)
厚生労働省が入った中央合同庁舎第5号館(東京都千代田区霞が関)

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