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コロナ影響、宇宙から捉えた JAXAなど日米欧が共同サイト

2020.07.03

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のさまざまな影響が懸念される中、地球観測衛星から得られる情報を社会に効果的に役立ててもらおうと、日米欧の宇宙機関が共同のウェブサイトを開設した。ロックダウン(都市封鎖)と一致する時期に起きた、大気中の二酸化窒素(NO2)濃度の低下など環境変化や、自動車生産の減少など社会経済活動の変化が把握できるという。

 サイトは「EARTH OBSERVING DASHBOARD」で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と米航空宇宙局(NASA)、欧州宇宙機関(ESA)が6月25日に開設。3機関などの衛星計17基の観測データの解析結果の図表や解説(英文)を掲載し、適宜更新していく。日本は温室効果ガス観測衛星「いぶき2号」や地上観測用レーダー衛星「だいち2号」など5基と、日米共同開発の衛星に搭載した観測機器1機のデータを提供する。

 サイト開設当初のデータから、重要な変化が読み取れるという。工場や自動車などから排出されるNO2の濃度は、パリやミラノなどでは3月中旬からの1カ月間、昨年同期に比べ半減した。米国北東部でも3月に例年より30パーセント少なかった。インド各地でも大幅に減ったが、発電所の操業が続いた北東部ではほぼ一定値を保ったという。NO2は大気中の寿命が数時間と短いため、コロナの影響による変化が表れやすいとみられている。

衛星の観測データから得られた、欧州の二酸化窒素(NO2)濃度の昨年3〜4月の平均(上)と今年3月13日〜4月13日の平均。気象条件の違いを考慮しなければならないものの、減少傾向がはっきり分かる(ESA提供)
衛星の観測データから得られた、欧州の二酸化窒素(NO2)濃度の昨年3〜4月の平均(上)と今年3月13日〜4月13日の平均。気象条件の違いを考慮しなければならないものの、減少傾向がはっきり分かる(ESA提供)

 JAXAの分析手法によると、東京と北京では大気の上層と、都市活動の影響を受けやすい下層の二酸化炭素(CO2)の濃度差が、今年3月などに例年より小さい傾向をみせた。ただ、オンラインで会見したNASA科学局地球科学部門のケン・ジャックス氏は「CO2は寿命が数世紀と長い。局地的な排出量よりも気象現象の方が、濃度への影響がはるかに大きい」と述べ、今回分かったCO2の減少がコロナの影響によるものとは、ただちには断定できないとの見方を示した。

 社会経済活動の面では、世界の主要空港で多数の航空機が駐機している様子や、周辺駐車場の車両の激減が観測された。自動車工場の駐車場はコロナ流行前に多数の車両で埋まっていたが、ガラ空きになっており、新車生産が止まった様子がうかがえた。

 JAXA第一宇宙技術部門の平林毅・宇宙利用統括は「3機関がデータと知見を共有し、解析結果を検証しあうことで信頼性が高まる。協力するメリットは非常に大きい。さまざまな分野の人々が情報を利用すれば、さらに価値が高まる。世界的な危機により人類と地球がどう変化するのか、宇宙から発信する」と述べた。

 JAXAは共同サイトとは別に、解析結果を説明する独自の日本語・英語サイト「JAXA for Earth on COVID-19」も開設した。

コロナの影響を捉える日米欧の地球観測衛星の想像図(JAXAなど提供)
コロナの影響を捉える日米欧の地球観測衛星の想像図(JAXAなど提供)

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