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「モンスター銀河」は、内部のあちこちで星を生み出し暴走していた

2018.08.30

 太陽のような星は、宇宙に漂うガスが集まり固まってできる。星の集団である銀河は、その質量(重さ)で周りからガスを引き付け、銀河の中では星が誕生し続ける。私たちの太陽系が属しているこの銀河では、質量にして1年あたり太陽1個分くらいの星が生まれているとされる。

 ところが、いまから100億〜125億年ほど前には、その1000倍くらいのハイピッチで星を生み出す、まるで怪物のような銀河がいくつもあった。「モンスター銀河」ともよばれるこの銀河は、なぜこんなに星を大量生産できるのか。国立天文台で研究している但木謙一(ただき けんいち)・日本学術振興会特別研究員らのグループが、南米チリの高地にある「アルマ望遠鏡」を使った観測で、その秘密の一端をつかんだ。

 アルマ望遠鏡は、干渉計とよばれるタイプの天体観測装置。たくさんのパラボラアンテナを宇宙に向けて、宇宙から来る電波をとらえる。但木さんらは2017年の10〜11月に、約50台のパラボラアンテナを使って124億年前のモンスター銀河を観測した。アンテナ間の最大距離は16キロメートル。こうして、口径が16キロメートルもの現実にはありえない超巨大望遠鏡と同等の高解像度で、遠方にある小さくて弱い光の銀河を観測したのだ。

 星が形成される場で強く放射される一酸化炭素ガスからの電波を観測したところ、ふつうの銀河で見られる中心部に加え、すぐ脇の2か所からの強い放射がみつかった。通常の銀河の場合は、できた星や星の最期である超新星爆発から噴き出すガスの影響で、空間に漂っているガスが収縮しにくくなり、星の形成が抑えられる。だが、このモンスター銀河の場合はガスを収縮させる力のほうが強く、ふつうの銀河のようにバランスがとれていなかった。つまり、ガスが収縮して星ができる一方の「暴走状態」になっている。それが、ハイピッチで星を生み出す理由だった。

 宇宙は138億年前に起きたビッグバンで1点から始まり、膨らみながら星や銀河、銀河が集まった銀河団ができてきた。どうやって宇宙は、この現在の姿になったのか。それを解明することは天文学や宇宙物理学の大きな課題であり、夢でもある。大昔にできたモンスター銀河の素性を知ることも、そのひとつ。但木さんはこの研究の魅力について、「今回の研究は、宇宙の考古学のようなもの。アルマのような高解像度の望遠鏡を使えば、現在の宇宙にいたる途中のこうした古い銀河の姿を、直接見ることができる」と話している。

図 アルマ望遠鏡の観測結果にもとづいて描いたモンスター銀河の想像図。中心部とその脇の2か所にガスが集まり、星がさかんに生まれている。(国立天文台提供)
図 アルマ望遠鏡の観測結果にもとづいて描いたモンスター銀河の想像図。中心部とその脇の2か所にガスが集まり、星がさかんに生まれている。(国立天文台提供)

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