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その白色矮星は、表面の爆発が最期の引き金になった

掲載日:2017年10月5日

自然相手の科学の場合、その始まりは観測だ。気象なら測器を載せた気球を揚げるし、海なら船で水温を測りに行ったり、浮いたり沈んだりする観測装置を大量に海に投入したり。ところが天文学はつらい。太陽系の惑星を除けば、現場へはまず行けない。光の速さでも何年、何万年、あるいは何十億年もかかる遠い天体が、観測の対象だからだ。

そんな天文学にとっては、天体が出す光や電波などが有力な情報源だ。それを捉える高性能の望遠鏡が研究に使えるかどうかは、天文学者の死活問題といってよいほどだ。国立天文台などの国際チームがハワイ・マウナケア山頂に建設を計画している「TMT」。直径30メートルの大きな反射鏡をもつ次世代の望遠鏡だ。その建設が地元の反対などで中断し、まさに死活問題になっていたが、この9月末に建設再開が決まった。

マウナケア山頂は、標高が高くて空気が澄んでいる。周りに大都市がないので、その悪影響も受けない。その割には行きやすい。だから、この標高4200メートルの高地には、研究用の望遠鏡がいくつもある。東京大学博士課程学生の姜継安(じゃん じあん)さん、土居守(どい まもる)教授らの研究グループは、そのうちのひとつ、国立天文台の「すばる望遠鏡」を使い、星がその最期に爆発して輝く「超新星」の、爆発直後の姿を捉えたと発表した。「Ⅰa型」という種類の超新星について、その爆発の仕方を観測から裏付けた初めての成果だという。

超新星は、自ら光り輝く「恒星」の最期の姿だ。光るエネルギーにする中心部の水素を使い果たした恒星は、膨張を始めて「赤色巨星(せきしょくきょせい)」になる。太陽の8倍くらいより重い恒星は、自らの重力でやがて崩壊し、大爆発を起こして超新星として輝く。最期をはなばなしく飾るのだ。超新星を生み出す爆発を「超新星爆発」という。

一方、太陽くらいの重さの恒星は、赤色巨星になったあと、中心部だけが残って白くほのかに光る「白色矮星(はくしょくわいせい)」になる。白色矮星はこのまま冷えて寿命を迎えるが、一転して超新星爆発を起こすこともある。近くの星から加わったガスが爆発の原因だと考えられているが、何が直接のきっかけになって爆発に至るのか、その具体像はよく分かっていない。姜さんらが観測に成功したのは、この白色矮星の爆発だ。

姜さんらは2016年、爆発から数日しかたっていないできたての超新星を「すばる望遠鏡」の観測で見つけ、世界中の施設に協力を求めてデータを集めた。分析の結果、これまでの観測例に比べて、その色が赤っぽかった。

その理由は、爆発の仕方にあった。理論的な計算から推定したところ、この白色矮星には、まず、近くの星から「ヘリウム」が降り積もり、そのヘリウムが表面の層で爆発的に核融合反応を起こした。それが引き金となって衝撃波が星の中心に達し、全体の爆発を誘発した。このとき、ヘリウムの核融合で生成されたチタンが、爆発にともなう光のうち青っぽい成分を吸収してしまった。それが、今回の超新星を地球から見たとき赤っぽかった理由だという。白色矮星の爆発について、その仕組みがひとつ具体的に分かったのだ。

白色矮星の超新星は、天文学では特別な意味を持っている。どれもほとんど同じ明るさで輝くので、「標準光源」として使える。地球から見て暗ければ、超新星自体が暗いのではなく、遠くにあるから暗いのだと判断できる。この標準光源を使って、宇宙の膨張がどんどん速くなっている事実が分かり、2011年のノーベル物理学賞につながった。

姜さんらの研究成果をきっかけに、白色矮星が爆発を起こす仕組みがさらによく分かっていけば、標準光源としての精度が増し、このような宇宙論の分野でも、より詳しい観測ができるようになるという。

図 超新星爆発を起こしている白色矮星の想像図。表面のヘリウム層がまず爆発し、それが中心部の核融合反応を誘発した。(東京大学大学院理学系研究科付属天文学教育研究センター提供)
図 超新星爆発を起こしている白色矮星の想像図。表面のヘリウム層がまず爆発し、それが中心部の核融合反応を誘発した。(東京大学大学院理学系研究科付属天文学教育研究センター提供)
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