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がん幹細胞が“がん増殖の土台”作る iPS細胞使う手法で岡山大グループが解明

掲載日:2017年8月4日

がん細胞を生み出すもとになる「がん幹細胞」が、がん組織の主体となる細胞(CAF)も作り出すことを、岡山大学の研究グループが明らかにした。CAFはがん細胞の成長を促す物質を生み出して増殖のかぎを握るとされているが、これまでがん幹細胞由来のものが存在するとは考えられていなかった。マウスの人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った成果で、まだ不明なことが多いがん幹細胞研究を前進させそうだ。論文はこのほど英科学誌電子版に掲載された。

がん組織は、がん細胞だけでなく、がん細胞を取り囲んで栄養を供給する血管の細胞をはじめとして増殖に関係する多くの細胞群で構成されている。この中で最も量が多いのは「がん関連線維芽(せんいが)細胞」(CAF)と呼ばれる細胞。がん細胞の成長、増殖を促す物質を生み出して“増殖の土台”となる。このためがん細胞との相互作用の関係が注目されていたが、CAFがどのように作られるか詳しいメカニズムは不明だった。

岡山大学大学院自然科学研究科の妹尾昌治(せのお まさはる)教授、笠井智成(かさい ともなり)講師らの研究グループは、今回の研究に当たり遺伝子変異操作などの従来の手法を使わずにiPS細胞技術を活用した。妹尾教授らは、iPS細胞をがん幹細胞に変化(分化誘導)させる手法を2012年に成功させている。今回の分化誘導に際してはヒトの乳がん由来の細胞株培養液(培養上清)が使われた。

研究グループは、マウスのiPS細胞から作ったがん幹細胞が、がん細胞に変化する過程を詳しく解析。その結果、がん幹細胞が変化した細胞がCAFの性質を持っていることを確認し、がん幹細胞がCAFを作り出していると判断した、という。世界で初の発見で、同グループは、がん幹細胞がCAFに分化することによりがん幹細胞自身の自己複製をも促している、とみている。

がん幹細胞はさまざまな細胞になる自己複製能力を持ち、がん細胞を生み出すもとになる細胞で、抗がん剤や放射線治療が効きにくい。がん幹細胞は最近のがん研究で注目されている、がん細胞の中に極めて微量しか存在せず発見が難しかった。このため妹尾教授らが今回用いたマウスのiPS細胞を使った手法の活用により、今後はがん幹細胞研究が進展すると期待されている。

画像 がん幹細胞から分化して生まれた“がん関連線維芽細胞(CAF)”。左はスケールバーが: 200μm、右は同100μm(提供・岡山大学研究グループ)
画像 がん幹細胞から分化して生まれた“がん関連線維芽細胞(CAF)”。左はスケールバーが: 200μm、右は同100μm(提供・岡山大学研究グループ)
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