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小さな雲がぎっしり詰まった台風の全容が初めて明らかに

掲載日:2017年6月23日

台風の風は、強く吹いたり急に弱まったりするし、向きも一定していない。これは、地面の近くを吹く台風の風が、細かい複雑な構造を持っているからだ。この構造を解明できれば、ときに大きな災害をもたらす台風の正体にもっと迫れるはずだが、それがじつは難しい。

台風は、大きなものだと、その広がりは直径1000キロメートルを超え、雲の高さは高度10キロメートルに達する。台風内のあらゆる地点、あらゆる高度で風速などの観測を実施することは不可能だ。そのため、台風をコンピューターでシミュレーションして全体像を把握することが実像に迫る有力な手段なのだが、これまでは解像度が粗くて、詳細が分からなかった。気象研究所の伊藤純至(いとう じゅんし)研究官らの研究グループは、100メートル刻みの解像度で台風を再現するシミュレーションを行い、このほど成果を発表した。細かな雲がぎっしり詰まった台風の詳細な全容が、世界で初めて明らかになった。

このシミュレーションは、理化学研究所のスーパーコンピューター「京」を使って行われた。水平方向に縦横各2000キロメートルの広がりを持つ領域を100メートル刻みの解像度で再現したため、その計算量は膨大で、世界最速クラスの「京」でも1年がかりの研究だったという。

伊藤さんらが再現したのは、海上で十分に発達した台風。注目したのは、海面に接した大気の層だ。「境界層」とよばれるこの層の中では、海面や地面の摩擦の影響で、風の乱れや渦が発生しやすい。シミュレーションでは、1~2キロメートル以下の間隔で並ぶ3種類の小さな渦が、それぞれ台風内の特定の場所で再現されていた。個々の渦は、上昇気流と下降気流をともなっていた。

とくに台風の中心に近い部分で発生していた特殊な渦は、上空の速い風を海面近くに引きずり下ろす役割を果たしていた。その結果、平均的な風速に急に秒速20メートルもプラスされるような突風が吹くことが分かった。

台風などの熱帯低気圧は、温かい海面からたっぷりもらう水蒸気がエネルギー源だ。上昇気流に乗った水蒸気が、上空で冷やされて雲粒になるときに熱を放出し、それがさらに上昇気流を生む。熱帯低気圧が海面から水蒸気をもらう過程には、伊藤さんらのシミュレーションで再現された渦が深く関係しているはずだ。こうした点を細かく分析することで、日々の天気予報に登場する台風予測の精度を上げられる可能性もあるという。

動画1 コンピューター・シミュレーションで得られた台風の雲。2000キロメートル四方の領域で行った計算結果から、台風の中心を含む200キロメートル四方の部分を切り取って示した。台風の中で生まれる個々の小さな「積雲」まで解像されている(動画はいずれも伊藤さん提供)

動画2 台風の中心を横切る断面

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