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iPS細胞で失明マウスの目に光 理研グループ

2017.01.11

 「網膜色素変性症」で失明したマウスに人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った網膜組織を移植してマウスの目に光を感じさせることに成功した、と理化学研究所(理研)の研究グループが発表した。今後安全性を確認しながら人での臨床応用研究につなげるという。研究成果は10日付の米科学誌電子版に掲載された。

 理研多細胞システム形成研究センターの高橋政代(たかはし まさよ)プロジェクトリーダー、万代道子(まんだい みちこ)副プロジェクトリーダーらの研究グループは、網膜色素変性症末期で失明したマウスがいる空間に光を当てた上で電気ショックを与えてマウスが光を感じた場合は体が反応する実験を行った。

 その結果、iPS細胞から作った網膜組織を移植したマウスの一部は光を感じる反応を示したが移植しなかったマウスは反応を示さなかった。研究グループはまた、マウスに移植した網膜組織がシナプスを形成し、元々あった網膜内の神経回路(双極細胞の軸索末端)とつながったことも確認したという。

 これらの結果から研究グループは、iPS細胞由来の網膜組織を用いて網膜色素変性症末期で失明したマウスの視機能を回復できることが分かった、としている。

 網膜色素変性症は、目の奥で光を感じる厚さ0.2ミリほどの網膜の網膜組織(視細胞)がだんだんとなくなっていき、視野狭窄(きょうさく)になったり暗いと見えにくくなったりする難病。悪化すると失明することもある。数千人に1人の割合で発症するとされる。人工網膜の研究が進んでいるがそれ以外は根本的な治療法は見つかっていない。

画像 マウスiPS細胞から分化させた網膜組織を移植した網膜変性末期マウスの網膜のシナプス形成の様子(理研提供)
画像 マウスiPS細胞から分化させた網膜組織を移植した網膜変性末期マウスの網膜のシナプス形成の様子(理研提供)

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