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アインシュタイン予言の重力波初観測 宇宙創成の謎解明に有力手掛かり

掲載日:2016年2月12日

アインシュタインが100年前に存在を予言した重力波を初めて観測することに成功した、と米大学を中心とする国際実験施設「LIGO」の研究チームが日本時間12日未明、ワシントンで発表した。LIGO が13億光年離れた宇宙のかなたで二つのブラックホールが合体したときに放出された重力波を捉えた、という。発表内容が世界の研究者により最終的に確認、追認されれば、光や電波では見ることができない誕生直後の宇宙を調べることができ、「宇宙創成」の謎を解明する有力な手掛かりになる。また一般相対性理論の正しさを裏付けることになり、世界の科学史に残る偉業となる。

重力波は、極めて重い物体が超高速で激しく動くと、周囲の空間や時間の流れがわずかにゆがんで、あるいは揺らいで、波として伝わる現象とされる。1916年にアインシュタインが一般相対性理論でその存在を予言したがこれまで実際に検出、観測されたことはなかった。宇宙が生まれた直後に放出され、ブラックホールの合体や超新星爆発などでも生じるとされる。日本でも昨年11月に重力波望遠鏡「KAGRA(かぐら)」(岐阜県飛騨市)が完成し、チームリーダーでノーベル物理学賞を受賞した 梶田隆章(かじた たかあき)東京大学宇宙線研究所長らが観測を目指している。LIGOには米カリフォルニア工科大学、米マサチューセッツ工科大学など米国内の大学を中心に15カ国による約1,000人の研究者が参加した。

アインシュタインは、空間は重力によって曲がったり伸び縮みし、その空間を流れる時間も早くなったり遅くなったりすると当時提唱したが、3次元空間にいる人類にとって「時間も空間も揺らぐ」とする理論のリアリティを感じることは難しい。重力波による宇宙空間のゆがみは、大きさを例えると、太陽と地球との距離での水素原子1個分程度という。また、高密度で大きな質量の物体が動かないと観測は不可能とされてきた。しかし重力波の観測と一般相対性理論の裏付けは「物理学に残された最大の宿題」と言われ、米国、欧州、日本など世界の研究者がしのぎを削って初観測を競っていた。

LIGOは、米ワシントン州とルイジアナ州の2カ所に重力波望遠鏡を設置している。L字形(1辺が4キロの長さ)の巨大装置で、中心部から2方向に同時にレーザー光を放出し、4キロ離れた鏡に反射させて戻ってきた光を測る仕組み。重力波が届くと鏡までの距離が伸び縮みし、光の戻る時間にずれが生じるのを検知できるという。LIGO研究チームの発表によると、2015年9月14日に、地球から13億光年も離れたところにあり、太陽の29倍と36倍の重さをそれぞれ持つ二つのブラックホールが合体して出た重力波を示す信号を捉えた。

宇宙は138億年前に生まれたと考えられている。宇宙誕生からしばらくは超高温高密度な状態だったために光は直進できなかった。宇宙が冷えて光や電波が地球に向かって直進できるようになったのは宇宙誕生から38万年後とされる。つまり光や電波による宇宙観測は宇宙誕生38万年以降しかできなかった。重力波が観測できるようになると、光や電波を捉える従来の天文学では観測できなかった古い宇宙の姿も観測でき、天文学を飛躍的に発展させる、と言われてきた。

かぐらはニュートリノ観測装置「スーパーカミオカンデ」と同じ鉱山跡に建設された。基本構造や重力波を検知する仕組みはLIGOと似ており、L字形に2方向に延びた長さ3キロのトンネルに設置され、重力波によるごくわずかな空間のゆがみを捉えることを目指している。今回、重力波の観測ではLIGOに先を越された形だが、LIGO研究者は「今回の初の重力波観測は今後、重力波研究分野での国際的観測ネットワークづくりを促進させる」としている。かぐらも本格始動後の観測によるデータの交換などにより、新たな「重力波天文学」の分野で貢献できる、と期待される。

中性子星が互いを回る連星による重力波放出のイメージ図(NASA/R. Hurt/Caltech-JPL提供)
中性子星が互いを回る連星による重力波放出のイメージ図(NASA/R. Hurt/Caltech-JPL提供)
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