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大村智氏にノーベル医学生理学賞

掲載日:2015年10月5日

スウェーデンカロリンスカ研究所は5日、今年のノーベル医学生理学賞を大村智(おおむら さとし)北里大学特別栄誉教授ら3人に贈ると発表した。

大村氏への授賞理由は、アフリカなどで患者が多い感染症に有効な治療薬イベルメクチンの開発に対する業績。

大村氏は、長い間、北里研究所で細菌からの生理活性物質の新薬開発に携わってきた。1970年代半ばに静岡県伊東市川奈の土壌から採取した細菌が産生する抗寄生虫活性物質が、イベルメクチンの開発につながった。ヒトの寄生虫病への薬としても有効で、オンコセルカ(河川盲目症)やフィラリア症などの予防に役立つことが分かり、大村氏と共同でイベルメクチンを開発した米メルク社が無償でこの薬を大量に提供したこともあり、年間約2億人が恩恵を受けているといわれる。

大村氏は、日本学士院会員で文化功労者。昨年、カナダのガードナー財団が医学への顕著な業績を挙げた研究者に贈るガードナー国際保健賞も受賞している。日本人のノーベル医学生理学賞は、2012年の山中伸弥京都大学教授以来、3人目。文学賞2人、平和賞1人を含め23人目(米国籍の故南部陽一郎氏、中村修二氏を含む)の日本人受賞者となる。

北里大学ホームページの「抗感染症薬の発見による国際貢献」によると、大村氏は微生物がつくる化合物を400種余り発見し、その中の17種がヒトや動物用の医薬品として、また生命現象を解明する生化学研究用の重要な薬として実用化されている。フィラリアなどの線虫類に対して効果がある抗生物質をつくり出す放線菌を土壌から分離し、この物質を改良したイベルメクチンが、犬や猫だけでなく家畜なども含めた動物向け駆虫薬として、またヒトの疥癬(かいせん)の薬として世界中で使われている。

患者の2割が失明するといわれる熱帯病のオンコセルカ症の特効薬として使われており、北里研究所と米国の製薬会社メルク社の無償提供により、WHO(世界保健機関)を通じアフリカや中南米の患者の治療と感染防止に使用されている。現在までイベルメクチンに耐性を持つ線虫は発見されていないため、これらの地域で劇的な予防・治療効果を挙げている。

大村氏以外の受賞者は、ウィリアム・キャンベル米ドリュー大学名誉研究フェローと屠呦呦(ト ユウユウ)中国中医科学院終身研究員兼首席研究員。キャンベル氏は、大村氏が見つけた抗寄生虫活性物質が家畜の寄生虫に対して劇的な効果があることを発見し、化学的構造を変えてイベルメクチンの開発に導いた。

屠氏は、漢方薬の研究を続ける中でキク科の薬用植物「クソニンジン」から抽出される物質が、マラリアに効果があることを発見した。マラリアの治療薬アーテミニンとして現在でも広く使われている。中国籍の研究者で、自然科学系のノーベル賞を受賞するのは屠氏が初めてとなる。

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