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電気エネルギーで生きる微生物初めて特定

2015.09.28

 電気エネルギーを直接利用して生きている微生物がいることを、理化学研究所と東京大学の共同研究チームが、初めて明らかにした。太陽エネルギーでもなく化学エネルギーでもない電気に依存した生命圏が深海底に広く存在する可能性を示す研究成果として関心を集めそうだ。

 理化学研究所環境資源科学研究センター生体機能触媒研究チームの中村龍平(なかむら りゅうへい)チームリーダー、石居拓己(いしい たくみ)研修生(研究当時)、東京大学大学院工学系研究科の橋本和仁(はしもと かずひと)教授らの共同研究チームが、これまで知られていなかった機能を解明した微生物は、鉄酸化細菌の一種。高濃度の鉄が存在し、pH(水素イオン指数)が2以下という強酸性の条件下で生きている。2010年に研究チームが太陽光の届かない深海熱水環境に電気を非常によく通す岩石が豊富に存在することを見つけたことが、研究のきっかけとなった。電気を流す岩石が触媒となり、海底下から噴き出る熱水が岩石と接触することで電流が生じることも確認した。

 海底に生息する生物の一部は、電気を光と化学物質に代わるエネルギーとして利用し生きているのではないかという仮説を立て、研究チームはAcidithiobacillus ferrooxidans(A.ferrooxidans)という鉄酸化細菌の代謝機能を調べた。A.ferrooxidansは、エネルギー源として鉄イオンや硫黄を用い、二酸化炭素(CO2)から有機物を作り出すことが知られている。鉄イオンを含まず電気だけがエネルギー源となる環境で培養した結果、細胞が増殖、体外の電極から電子を引き抜くことにより生体内で電子伝達反応を担う化合物を作り出してCO2から有機物を合成することを確認した。

 CO2からデンプンのような栄養分を作り出す生物は、植物のように光エネルギーを利用するか、深海底に生息する一部の微生物のように水素や硫黄など化学物質のエネルギーを利用するかのどちらかと考えられていた。

 今回の研究成果は、電気が光と化学物質に続く地球上の食物連鎖を支える第3のエネルギーであることを示している。さらに、極めて微小な電力で生きる電気合成微生物の存在が明らかになったことは、微小電力の利用という観点からも新たな知見を提供する、と研究チームは言っている。

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