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アルツハイマー病関連の新たなタンパク発見

2015.08.21

 神経の生存と機能に重要な役割を果たしているタンパクが、アルツハイマー病の発症にも重要な役割を果たしていることを、星美奈子(ほし みなこ) 先端医療振興財団客員上席研究員(京都大学大学院医学研究科特定准教授)を中心とする研究チームが発見した。

 アルツハイマー病は、神経細胞のシナプスの異常から神経細胞の死に至り、脳の高度な機能の消失につながる経緯をたどる。原因はアミロイドβ(Aβ)と呼ばれる小さいタンパク が凝集し「Aβオリゴマー」となって神経細胞に対する毒性を持つためと考えられている。星氏らは、「Aβオリゴマー」は、Aβが約30個集まって直径10〜15ナノメートル(ナノは10億分の1)の球状となることで強い毒性を持つことを既に解明済み。この球状構造体を「アミロスフェロイド」(ASPD)と名付けている。

 今回の新たな研究成果は、このASPDが神経細胞を死に至らしめる際の標的がNAKα3というシナプスタンパクであることを突き止めたこと。NAKα3は神経細胞膜の電位を一定に保つなど神経細胞の生存と機能に極めて重要な役割を果たしている。ASPDがNAKα3に結合すると、NAKα3の機能が低下し神経細胞が死に至ることを、実験的に確かめた。神経細胞膜の電位が上昇してカルシウムチャンネルが開く結果、細胞外から多量のカルシウムが流れ込み、ミトコンドリアの機能が破綻してしまうためだ。

 さらなる成果は、ASPDに結合するペプチドの発見。このペプチドが ASPD表面を覆い隠すことで、ASPDとNAKα3との相互作用を阻止し、神経細胞死を抑制することを突き止めた。4つのアミノ酸から成る低分子のペプチドであるために、この配列を基盤としてASPDの神経毒性を抑制する治療薬の開発にも好都合、と研究チームは見ている。

 今後、アルツハイマー病への臨床応用を目指すには、ASPD結合ペプチドから低分子治療薬を開発する方法と、ASPD自体をワクチンとして用いる免疫療法の二つの戦略が考えられる、と研究チームは言っている。

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