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fMRIで統合失調症診断

2015.07.30

 磁気共鳴機能画像法(fMRI)を利用して統合失調症の患者を見分ける新しい解析法を、情報通信研究機構(NICT)と大阪大学の研究チームが開発した。統合失調症の診断は精神科医の診断能力に頼っているのが現状。今後、医師を補完する自動診断システムの開発に発展することが期待できる、と研究者たちは言っている。

 fMRIで脳の活動を調べるのは、これまで特定の部位と脳の活動の関連を突き止めようとする研究が多かった。NICT脳情報通信融合研究センターの下川哲也(しもかわ てつや)主任研究員と大阪大学大学院連合小児発達学研究科の橋本亮太(はしもと りょうた)准教授らが着目したのは、複数の部位間で見られる相互作用と脳の機能や病気の発症との関連を突き止める方法。いろいろな学問分野で使われているネットワーク理論をfMRIによる解析に応用した。

 研究チームは、統合失調症患者群、健常者群それぞれ2グループ、計4グループを対象に二つの脳部位の安静時の脳活動を調べた。fMRIデータが似ていればその二つの部位が「つながっている」つまりネットワーク構造があると推定する。脳部位のペアを全部調べ、脳全体のネットワーク構造を画像化した結果、患者群と健常者群で違いが出るだけでなく、患者群同士では類似し、健常者群同士でも類似していることが分かった。

 統合失調症は代表的な精神障害で、約100人に一人が発症するといわれる。客観的な検査などによる診断法は確立していない。今回の成果について研究チームは「患者の主観的意見に左右されない、脳画像のデータに基づく客観的な診断法につながる」と言っている。

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