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大陸移動の原動力はマントル対流を実証

掲載日:2015年2月13日

スーパーコンピューターを用いた3次元全球内のマントル対流のシミュレーションで、約2億年前から始まった超大陸パンゲアの分裂から現在までの壮大な大陸移動と、地球内部の物質の流れの様子を再現することに、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の吉田晶樹(よしだ まさき)主任研究員と浜野洋三(はまの ようぞう)特任上席研究員が世界で初めて成功した。

ドイツの気象学者、ウェゲナー(1880~1930年)が1915年に著書「大陸と海洋の起源」で大陸移動説を提唱して以来100年間、謎だった超大陸の分裂とその後の大陸移動の主要な原動力が、大陸直下のマントル対流であることを突き止めた。JAMSTECが実施した北海道南東沖の太平洋プレートの地下構造調査に基づく観測結果(2014年4月2日ニュース「プレートが動く謎を解明」参照)とも符合した。2月12日の英オンライン科学誌サイエンティフィックリポーツに発表した。

研究グループはまず、マントル対流の新しいシミュレーションモデルを開発した。大陸を剛体的な板のように扱った従来のモデルと異なり、大陸がマントル対流で自由に変形しながら移動できるもので、過去の大陸の動きをよく再現できる。JAMSTECのスーパーコンピューターで、2億年前の超大陸パンゲアの形状と、実際のマントルの物性パラメーターを考慮した3次元全球内のマントル対流の大規模シミュレーションを実施した。

さまざまな物性パラメーターを変化させた系統的なシミュレーションで、2億年前から現在までの大陸移動の様子を調べた。中生代から起きた大西洋の拡大やインド亜大陸の高速北進とユーラシア大陸への衝突など、パンゲア分裂後の地球表層の“大イベント”を追跡でき、現在の地球に近い大陸配置に至るまでが再現された。

パンゲアの分裂は超大陸が熱を遮蔽したため、パンゲア直下のマントルが異常な高温になって「裂け目」を作り、たまった熱を地表へ吐き出す必要があったとみられる。また、パンゲアの一部のインド亜大陸が高速(年間最大18㎝)で北進した主な原動力は、パンゲア分裂直後にテーチス海北部に発達してマントル内を下降するコールドプルームだったことも確かめた。約4000万年前にユーラシア大陸に衝突後、沈み込み帯を持たないインド亜大陸が現在もなお北上を続けてヒマラヤ山脈を高くしている。この事実は原動力がコールドプルームである証拠といえる。

プレートに働くさまざまな力が定量的に議論されるようになった1970年代半ば以降、大陸・海洋プレートの移動の主要な原動力は、マントル中に沈み込む海洋プレートの引っ張り力であるという説が有力視されてきた。しかし、今回のシミュレーション結果で、大陸移動の主要な原動力は、プレート沈み込み帯の引っ張り力でなく、大陸直下のマントル対流であることが明らかになった。

吉田晶樹主任研究員は「ことしはウェゲナーの大陸移動説からちょうど100年節目の年に当たる。その記念すべき年に、超大陸パンゲアの分裂、現在までの大陸移動が、マントルの熱対流運動の物理法則のみから再現されることが計算機シミュレーションで実証できたことに、感慨を覚える。シミュレーションモデルをさらに高度化させ、現在の地球の大陸配置をより正確に再現して、造山運動や地震・火山噴火の仕組みを深く理解できる統合的な地球モデルを構築していきたい」と話している。

シミュレーション結果の一例。地球表層の大陸分布の時間変化を表す。(a)2億年前、(b)1億5000万年前、(c)1億年前、(d)現在。
図1. シミュレーション結果の一例。地球表層の大陸分布の時間変化を表す。
(a)2億年前、(b)1億5000万年前、(c)1億年前、(d)現在。

インド亜大陸の高速北進の仕組みを示した模式図
図2. インド亜大陸の高速北進の仕組みを示した模式図

大陸移動の原動力に関する2つの考え方。(上)1975年以降の考え方。マントルが大陸の底面を引きずる力は大陸移動の抵抗力として働く。(下)今回の研究のシミュレーション結果に基づく考え方。大陸下のマントルの引く力が大陸移動の原動力として働く。
大陸移動の原動力に関する2つの考え方。
(上)1975年以降の考え方。マントルが大陸の底面を引きずる力は大陸移動の抵抗力として働く。
(下)今回の研究のシミュレーション結果に基づく考え方。大陸下のマントルの引く力が大陸移動の原動力として働く。
(いずれも提供:吉田晶樹・海洋研究開発機構主任研究員)
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