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体に貼ってもずれない粘着性センサー開発

掲載日:2014年12月24日

粘着性のゲルを独自に開発して、湿布のように体に貼り付けるだけで生体情報を計測できるシート型センサーの作製に、東京大学大学院工学系研究科の染谷隆夫(そめや たかお)教授とリー・ソンウォン博士研究員らが成功した。生体情報計測の発展を促す新技術で、ヘルスケアやスポーツ、医療、福祉など多方面での活用が期待される。12月19日付の英オンライン科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表した。

ビッグデータなど情報通信技術の目覚ましい進展に伴い、生体情報の計測の必要性が増している。その精度を高めるには、センサーを測定点に直接接触させることが望ましいが、シリコンを中心とした硬い電子素材は、微妙に動き続ける生体に使いにくい。そこで、センサーを体に直接貼り付ける際の装着感や違和感を減らそうと、高分子フィルムなど柔らかい素材の上に電子部品を作製する研究が近年盛んになっている。特に、体に直接接触するセンサー表面が、体との親和性や粘着性をどれだけ備えているかが課題だった。

研究グループは、厚さ1.4μm(μは100万分の1)の極薄のポリエチレンテレフタレート(PET)という高分子フィルムに、高性能な有機トランジスターの集積回路を作製し、生体と直接接触する電極部分だけに粘着性のあるゲルを形成した。試作した集積回路は、4.8×4.8cm2の面積に144(12×12)個のセンサーが4 mm間隔で配列されている。ゲル付きの電極は生体と直接接触し、生体からの電気信号を計測するセンサーとして機能した。このシート型センサーは、対象物がダイナミックに動いても、壊れなかった。

開発の決め手は、生体適合性に優れる素材だけで、粘着性の高いゲルを作ったことだ。この新型ゲル素材は、ポリロタキサンと呼ばれるゲルの中に、接着剤のポリビニルアルコール(PVA)を均一に分散させて形成される。光でさまざまな形になるため、格子状に並べられたセンサーの電極部分だけに、この新型ゲルの接着剤を配置できる。新型ゲルは湿った生体との接触を維持し、生体組織が動くと位置がずれたりはがれたりする問題を克服した。

試作されたデバイスは、驚異的な柔軟性がある。ラットの心臓を露出して、その表面に張り付けると、長時間安定して良好なコンタクトを保ち、質のよい心電計測が実現した。PVAは溶けると粘着性がなくなるため、計測後には心臓に負担を掛けずに簡単に外すこともできる。さらに、同様の設計で、高感度で伸縮性のある、ひずみセンサーを試作し、ヒトの指の動きのようなダイナミックな動きも計測できた。特許も出願した。

染谷隆夫教授は「センサーの計測点だけに、接着剤がついているゲルを開発できたのがポイントだ。センサーをつける対象が、心臓のようにダイナミックに動いても、はがれたり、ずれたりしない。ゲルの素材は汎用性があり、コストも高くなく、使い捨てのシールに使いやすい。将来はヒトの電気的な計測に幅広く応用していきたい」と話している。

生体適合性に優れ、粘着性があり、光で形成できる新型ゲル。人の手の形に追従して貼ることができる。100円玉を載せて手を振っても、振り落ちないくらい表面に粘着性がある。
写真. 生体適合性に優れ、粘着性があり、光で形成できる新型ゲル。人の手の形に追従して貼ることができる。100円玉を載せて手を振っても、振り落ちないくらい表面に粘着性がある。

新しいシート型センサー。(a)極薄高分子フィルム上に有機トランジスター集積回路を作った後、電極部分だけに粘着性ゲルを形成して作製する。このセンサーを(b)のように風船(白い部分)に貼り付けてしぼませても壊れなかった。
図. 新しいシート型センサー。(a)極薄高分子フィルム上に有機トランジスター集積回路を作った後、電極部分だけに粘着性ゲルを形成して作製する。このセンサーを(b)のように風船(白い部分)に貼り付けてしぼませても壊れなかった。
(いずれも提供:東京大学)
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