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がん化促す細胞老化がハエにもあった

掲載日:2014年10月28日

老化した細胞ががん化を促進する仕組みを、京都大学大学院生命科学研究科の井垣達吏(いがき たつし)教授と大学院生の中村麻衣(なかむら まい)さん、大澤志津江(おおさわ しずえ)講師らがショウジョウバエで解明した。細胞老化現象が無脊椎動物にも存在することを初めて見つけ、老化した細胞によるがん化促進の普遍性を明らかにした成果で、がん研究の新しい突破口になりそうだ。10月27日付の英科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表した。

細胞老化とは細胞が不可逆的に細胞分裂を停止する現象で、哺乳類の細胞でこれまで解析されてきたが、同様の現象が無脊椎動物に存在するかどうかは不明だった。研究グループはショウジョウバエをモデル生物として用い、がん組織で高頻度に認められる2種類の変異(がん遺伝子Rasの活性化とミトコンドリアの機能障害)を起こした細胞が炎症性サイトカインを産生、分泌して、周辺組織のがん化を促進することを報告してきた。

今回、これら2種類の変異を起こしたショウジョウバエの細胞を詳細に調べて、哺乳類の細胞で観察される細胞老化と同様の変化が起こっていることを突き止めた。研究グループは次に、このショウジョウバエの老化細胞から細胞老化関連分泌(SASP)因子が産生される仕組みを解析した。ショウジョウバエは遺伝学が進んでおり、生きた個体の中で細胞内のさまざまな変化の仕組みを遺伝子レベルで理解するのに役立つ。

老化した細胞はがん抑制たんぱく質p53の活性化などを起こして、細胞分裂を停止させ、JNKと呼ばれるリン酸化酵素が活性化することがわかった。JNKが活性化すると、細胞分裂停止がさらに促進されることも確かめた。細胞分裂停止とJNK活性化が互いに増幅し合って、SASP因子の産生が誘導されることを明らかにした。

井垣達吏教授は「われわれの研究で、細胞老化はハエのような無脊椎動物にも存在する普遍的な現象とわかった。細胞老化は、がん遺伝子の活性化やDNA損傷などさまざまな細胞ストレスによって引き起こされる現象で、がんの発生や進展への役割が近年注目されつつある。今後、ショウジョウバエ細胞老化モデルを用いた研究を発展させて、老化した細胞を標的とした新しいがん治療法のヒントも提供したい」と話している。

分泌たんぱく質によるがん化の促進。ショウジョウバエ上皮組織で、がん遺伝子Rasの活性化とミトコンドリア機能障害を起こした細胞は、SASP因子である炎症性サイトカインIL6(インターロイキン6)などの分泌たんぱく質を産生・放出して、周辺組織のがん化を促進する。
図1. 分泌たんぱく質によるがん化の促進。ショウジョウバエ上皮組織で、がん遺伝子Rasの活性化とミトコンドリア機能障害を起こした細胞は、SASP因子である炎症性サイトカインIL6(インターロイキン6)などの分泌たんぱく質を産生・放出して、周辺組織のがん化を促進する。

老化した細胞によるSASP因子の産生の仕組み
図2. 老化した細胞によるSASP因子の産生の仕組み
(いずれも提供:京都大学)
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