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元素間融合で発現する機能の謎を解明

掲載日:2014年10月20日

「AとCという元素を混ぜたら、周期表で真ん中にあるBという元素ができた」というような元素間融合の技術は「現代の錬金術」として近年大きな注目を集めている。それ自体が水素を吸蔵しない銀(Ag)とロジウム(Rh)からなる合金ナノ粒子は、パラジウム(Pd)のように水素吸蔵の特性を示す。その理由は、Ag-Rh合金ナノ粒子とPdの電子構造が類似していることで説明できることを、物質・材料研究機構の坂田修身(さかた おさみ)高輝度放射光ステーション長と京都大学の北川宏(きたがわ ひろし)教授、九州大学の古山通久(こやま みちひさ)教授らの共同研究チームが突き止めた。元素間融合による新機能創製を促す成果といえる。10月16日付の米科学誌Applied Physics Lettersに発表した。

通常、RhとAgは水と油のように混じり合わず合金になり得ないが、10数ナノメートルの大きさにして初めて合金にできることを、北川宏教授らが2010年に発見した。2種類の元素を原子レベルで混ぜて作製した新材料は、水素吸蔵特性を有することがわかったが、それぞれ水素を吸蔵する能力を持っていないRhとAgを用いて水素吸蔵特性を有する材料ができるという驚くべき現象がなぜ生じたのかは謎だった。

共同研究チームは、 Ag-Rh合金ナノ粒子の電子構造を大型放射光施設SPring-8(兵庫県佐用町)の高分解能光電子分光測定で調べた。また、電子系のエネルギーの計算スペクトルから、実験結果を理論で精密に解釈した。Ag-Rh合金ナノ粒子は、AgとRhが微視的に分離した混合物ではなく、原子レベルで混成しており、電子構造はPdと極めて類似していることを実験と理論の両面で確かめた。この電子構造の類似性によって、Ag-Rh合金ナノ粒子がPdと同じように水素を吸蔵することを実証した。

Ag-Rh合金ナノ粒子はその電子構造から、さまざまな触媒として使われているPdと同様に、水素吸蔵だけでなく、有用な触媒となる可能性もある。坂田修身・高輝度放射光ステーション長は「今後、さまざまな新機能性物質を探索できるよう、電子構造や原子配列に関するデータを提供して設計型物質・材料研究(マテリアルズ・インフォマティクス)の基盤を形成したい」としている。北川宏・京都大学教授は「放射光科学、理論化学、合成化学との共同でAg-Rh合金の謎を解明できた。分野の異なる共同研究の大切さをあらためて感じた。今回得られた指導原理を基に、元素の有効活用を目指す」とコメントし、古山通久・九州大学教授は「材料の物性は電子が決めている。周期表で両隣の元素を融合できれば、真ん中の元素の電子状態が現れることを証明したことで、現代の錬金術の可能性が高まった」と話している。

Pdナノ粒子とAg0.5Rh0.5合金ナノ粒子の高輝度放射光光電子分光スペクトルの比較。(a) 0-15eVの結合エネルギーの範囲におけるAg0.5Rh0.5合金ナノ粒子(赤破線)とPdナノ粒子(黒実線)の高輝度放射光分光による価電子帯スペクトル。Ag0.5Rh0.5合金の強度はPdの約半分。(b)0-3.5eVの結合エネルギーの範囲を拡大したAg0.5Rh0.5合金ナノ粒子(赤破線、強度をPdに合わせて拡大)とPdナノ粒子(黒実線)の価電子帯スペクトル。青い点線は、黒線と赤線のスペクトルの差異。
グラフ. Pdナノ粒子とAg0.5Rh0.5合金ナノ粒子の高輝度放射光光電子分光スペクトルの比較。(a) 0-15eVの結合エネルギーの範囲におけるAg0.5Rh0.5合金ナノ粒子(赤破線)とPdナノ粒子(黒実線)の高輝度放射光分光による価電子帯スペクトル。Ag0.5Rh0.5合金の強度はPdの約半分。(b)0-3.5eVの結合エネルギーの範囲を拡大したAg0.5Rh0.5合金ナノ粒子(赤破線、強度をPdに合わせて拡大)とPdナノ粒子(黒実線)の価電子帯スペクトル。青い点線は、黒線と赤線のスペクトルの差異。
(提供:物質・材料研究機構、京都大学、九州大学)
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