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多様性とセクハラ軽減が種の繁栄の鍵

掲載日:2014年7月24日

生物は多様である。雌の多様性と雄のセクハラの軽減が生物種の繁栄にとって鍵を握ることがわかった。アオモンイトトンボの雌の色彩多様性が集団の繁栄の程度(増殖率や密度、安定性など)を高める傾向があることを、東北大学大学院生命科学研究科の高橋佑磨(たかはし ゆうま)助教と河田雅圭(かわた まさかど)教授らが野外での観察と実験、数理モデルで検証した。

生物を繁栄させるのには、見た目の多様性と、それに関連したセクハラの抑制が重要であることを裏付ける研究として、進化や生態学の教科書に載るような新発見といえる。東邦大学の大学院生の香川幸太郎さんと、スウェーデンのルンド大学のエリック・スベンソン教授との共同研究で、7月18日の英オンライン科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表した。

アオモンイトトンボは体長3、4センチとやや小型のごくありふれたトンボで、5、6月に本州以南に出現する。その雌には、体の色彩が青色のオス型と茶色のメス型がある。研究グループが野外で観測したところ、雌の両方の色彩型が半々に混在して多様性が高いほど雄が混乱して、効率的に雌を探索できず、雌へのセクハラのリスクが低下することを見いだした。この結果は数理モデルによる予測とよく一致した。

さらに、野外にテントのような大きな虫かごを設置して、雌の体の色に関してオス型とメス型の比率を人為的に変えて実験したところ、雌の多様性を高めた集団ほど、繁殖力が上がることを実証した。一連の観察や数理的分析、実験は、集団内に個性の多様性を許容し保持し続けることが、リスクを分散し、集団の繁栄につながる可能性を示した。

研究グループの高橋佑磨さんは「5年間、沖縄から宮城県まで全国を回り、スウェーデンまで出かけて、苦労して野外調査や実験を積み重ねた。昆虫の世界の話だが、ヒトを含む動物の繁殖にも同じ原理が働いているのではないか。『多様さが生物を繁栄させる』という視点は重要で、多様性生物学の研究や、生物の保全対策に生かしてほしい」と提言している。

アオモンイトトンボの雌の色彩2型。上にいる雄はすべて緑色で、下にいる雌には青と茶のタイプがある。
写真1. アオモンイトトンボの雌の色彩2型。上にいる雄はすべて緑色で、下にいる雌には青と茶のタイプがある。

アオモンイトトンボの雌の色彩2型。上にいる雄はすべて緑色で、下にいる雌には青と茶のタイプがある。
写真2. 雌(下)に交尾を試みてセクハラをする雄(上)。トンボの雄は交尾の回数に比例して子孫の数が増えるため、すきがあれば出会った雌に交尾を試みる。そのため、雄がしつこく交尾を試みる行動がしばしば観察される。このようなセクハラが雌の産卵行動やエサ取りを妨害して、次世代に残す子孫の数が減少してしまう。

野外実験と理論的裏付け。野外調査で得られたデータから、雌の色彩の多様性の高い集団(2つの色彩型の雌がバランスよく存在するとき)ほど、雌1匹が受けるセクハラのリスクが減り、集団の増殖率や密度が増加することが示された。このことは、数理モデルの分析から裏付けられた。
図1. 野外実験と理論的裏付け。野外調査で得られたデータから、雌の色彩の多様性の高い集団(2つの色彩型の雌がバランスよく存在するとき)ほど、雌1匹が受けるセクハラのリスクが減り、集団の増殖率や密度が増加することが示された。このことは、数理モデルの分析から裏付けられた。

多様性を人工的に操作した実験。野外の大きなケージ(虫かご)内に、オス型とメス型の割合を変えて雌を導入して、雄も入れた場合、多様性が最も高くなる状況(5:5)で雌の繁殖力や生存率が最大になった。
図2. 多様性を人工的に操作した実験。野外の大きなケージ(虫かご)内に、オス型とメス型の割合を変えて雌を導入して、雄も入れた場合、多様性が最も高くなる状況(5:5)で雌の繁殖力や生存率が最大になった。
(いずれも提供:東北大学)
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