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生まれつき肝臓に病気の子どもに光明

掲載日:2014年7月18日

ごくまれな子どもの難病、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症1型の患者への臨床研究で、フェニルブチレートという薬が、この病気で生じる耐え難いかゆみを改善することを、東京大学と大阪大学の共同研究グループが世界で初めて発見した。生まれつき肝臓に病気がある子どもたちに光明を与える発見といえる。

フェニルブチレートは、同じように希少疾患の尿素サイクル異常症の治療薬として既に使われており、対象疾患の適応拡大で保険診療に組み込みやすい。東京大学大学院薬学系研究科の林久允(ひさみつ)助教、直井壯太朗大学院生、楠原洋之教授らと大阪大学大学院医学系研究科(小児科)の近藤宏樹助教、長谷川泰浩医員、大薗恵一教授らの共同研究で、7月15日の英科学誌Orphanet Journal of Rare Diseasesに発表した。

進行性家族性肝内胆汁うっ滞症は、患者数がごく少ないこどもの肝臓に関する病気で、成人前に肝不全となり、治療が極めて難しい。遺伝子の変異が原因の疾患で、患者は肝臓の機能の低下に伴う強いかゆみのため、物事に集中できず、夜に熟睡できないなど、日常生活で深刻な悩みを抱えている。

林久允東京大助教がこの病気の治療薬に関する基礎的な探索研究で、フェニルブチレートを見いだした。今回、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症1型で大阪大病院に通院している子ども3人に、フェニルブチレートを半年間、薬の量を段階的に増やしながら、投与したところ、この病気を原因としたかゆみが3人とも著しく改善した。かゆみに伴ってできたひっかき傷も消えて、きれいな皮膚が再生してきた。投与をやめると、かゆみは元の症状に戻った。フェニルブチレートは飲み薬で、比較的安全に使える。

進行性家族性肝内胆汁うっ滞症に限らず、肝臓の病気を原因としたかゆみに対する有効な治療法は現在なく、こどもたちの生活の質を低下させる要因になっている。研究グループは「フェニルブチレートは、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症だけでなく、他の肝臓の病気によるかゆみを減らす効果も期待できる」とみている。

研究グループは、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症の患者が保険でフェニルブチレートを早く使えるようにするための臨床試験開始を準備している。林久允東京大助教は「この病気の子どもたちは全国で数十人と少ないが、有効な治療法が十分にないのが現状だ。フェニルブチレートはその治療の可能性を広げる。個人輸入する場合は薬価が高くて、負担が大き過ぎる。ぜひ保険診療で使えるようにしたい」と話している。

フェニルブチレートを飲んでいる間のかゆみの推移
グラフ. フェニルブチレートを飲んでいる間のかゆみの推移
(提供:東京大学、大阪大学)
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