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超音波集中放射で極小域だけ音聞かす

掲載日:2014年6月3日

空間の特定の狭い地点にいる時だけ音が聞こえる。推理小説に出てきそうなこうした不思議な仕掛けを、立命館大学情報理工学部の西浦敬信(にしうら たかのぶ)教授らが開発した。複数のスピーカーで集中放射した超音波を交差させて、重なり合う位置にいる人だけに可聴音を届ける新しい音響技術で、ほかの地点にいる人には音が聞こえない。

西浦教授は「世界初の成果で、美術館での作品の説明や広告の音声伝達、スポーツ選手へのサインなど多様な用途が考えられる。装置を改良し、実用化を進めたい」と話している。電子情報通信学会論文誌4月号に論文を発表した。

音は空気の振動によって起きる。超音波は1秒間に2万4千回以上振動する細かい波で、耳には聞こえないが、まっすぐ進む性格がある。周波数が高いため、スピーカーを小型化しやすい。超音波のキャリア波と側帯波を空気中で干渉させれば、違う周波数帯がぶつかり合ってうなりを生じ、人が聞こえる音に復調できる。

研究グループは「キャリア波と側帯波を別々のスピーカーで放射すれば、交わった所だけで復調が生じ、聞こえる音を再現できる」という基本アイデアを思いつき、その効果を実証した。ただ、側帯波のスピーカーが1つだけでは、混変調の歪みが生じて、音が聞こえる領域が広がるという問題があった。

この問題を克服するため、側帯波を周波数帯域ごとに分割して、それぞれ異なる複数の超音波スピーカーから放射して空間の1点に集中させ、音圧も上げる手法をさらに考案した。その結果、超音波が重なり合った、手のひらサイズの領域だけで、音が聞こえるようになった。

研究グループは、必要な人にだけ音を聞かせるこの新技術を「極小領域オーディオスポット」と名付けた。舞台照明のスポットライトのように、音のスポットが実現した。しかも、超音波の波が交差しない所では、音が聞こえない。音が再現される空間の領域は、複数の人たちが聞けるように大きくしたり、1人だけ用に狭く絞り込んだり、移動させたりすることも、超音波スピーカーの向きの微妙な調節によって可能という。

西浦教授は「超音波の周波数帯域を分けて出すという発想はこれが初めてだ。違う周波数帯をぶつからせてうなりを生じさせ、聞けるようにした。音質は、安物のスピーカーぐらいで、まだ悪い。空間の狭い領域だけで音を聞かせる多様なニーズはあると思う。音質を改良するなどの課題はあるが、実用化にこぎつけたい」と話している。

音波の分離放射の基本アイデア
図1. 音波の分離放射の基本アイデア

複数の側帯波を用いたオーディオスポット形成の概念図
図2. 複数の側帯波を用いたオーディオスポット形成の概念図

極小領域オーディオスポットのデモンストレーション概要
図3. 極小領域オーディオスポットのデモンストレーション概要
(いずれも提供:立命館大学)
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