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グラフェンのデバイス実用化に前進

掲載日:2014年6月2日

シリコンに代わる次の電子材料として、炭素原子が蜂の巣状の平面に並んだグラフェンに期待が集まっている。動作中のグラフェントランジスタ(GFET)の電位のピンポイント測定に、東北大学電気通信研究所の吹留博一准教授らが初めて成功し、グラフェンを電子デバイスに使うための一歩を進めた。

東京大学放射光連携研究機構の尾嶋正治名誉教授、高エネルギー加速器研究機構の堀場弘司准教授、東京大学大学院工学研究科の長汐晃輔准教授らとの共同研究で、東京大学放射光アウトステーション(SPring-8)にある三次元ナノESCA装置を用いて測定した。GFETの精密設計を可能にし、その実用化を前進させる成果として注目される。5月28日に応用物理学会の英文誌Applied Physics Express オンライン版で論文を発表した。

グラフェンは2004年に発見されたばかりだが、電子の動きやすさがシリコンの200倍もあり、熱的にも化学的にも安定なため、「2020年ごろにはシリコンに変わる電子材料になる」と有望視され、世界中で開発競争が行われている。しかし、シリコンと異なって、動作中の電位分布や電子の振る舞いをナノスケールの精度で測定できないため、デバイスへの実用化が困難だった。

吹留東北大准教授らは、きれいな単原子層のグラフェントランジスタを、兵庫県佐用町の大型放射光施設SPring-8にある東大の三次元ナノESCA装置に持ち込んで、直径70ナノメートルまで絞り込んだ放射光を照射して、動作中の電位を狙った場所でピンポイントに測った。

三次元ナノESCAは光電効果で物質中の電位の測定を可能にした装置で、東大の尾嶋名誉教授らが最初に開発した。世界で唯一100nmを切る高い空間分解能と200meV以下の高いエネルギー分解能を併せ持つ走査型光電子顕微鏡で、今回の研究でもその優れた威力を示した。グラフェンのデバイスを動かしながら測定できるように工夫し、GFETの狙った場所の電位を測るのに成功した。

吹留准教授は「SPring-8の強いX線を絞り込めたのがよかった。グラフェンの電子の振る舞いを100ナノメートル以下の分解能で測れる技術がこの装置が初めてだ。インジウム系などの通信用半導体の測定にも、この技術は使える。今後は、グラフェンデバイスの作製、評価とこの測定技術を組み合わせて、精密なGFET応用研究を展開したい。企業とも共同研究して、世界初のグラフェンデバイスの実用化を目指している」と話している。

三次元ナノESCAによるピンポイント測定の概略
図1. 三次元ナノESCAによるピンポイント測定の概略

グラフェン中の電位のピンポイント測定結果
図2. グラフェン中の電位のピンポイント測定結果
(いずれも提供:東北大学・東京大学放射光連携研究機構)
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