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”戦略的イノベーション創造”の10課題

掲載日:2013年9月18日

総合科学技術会議(議長・安部晋三首相)は、日本の経済再生のために府省庁の枠を越えて来年度から取り組む「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の3分野10項目の研究課題候補を決めた。

主な課題候補は、エネルギー分野ではマグネシウムや炭素繊維などの革新的構造材料、自動車の低燃費化を目指す革新的燃焼技術、次世代インフラ(社会基盤)分野では、車の自動走行(運転)システムや、センサーやロボットを使ったインフラ維持管理・更新・マネジメント技術、地域資源分野では、高収量や自給率の向上を目指した次世代農林水産業創造技術など。長寿健康分野の課題候補は後に、健康・医療戦略推進本部が決定、追加する。

同プログラムでは、課題ごとにプログラム・ディレクター(PD)を置き、社会や産業界の需要、市場や雇用の規模、国際的な競争力強化の方向性、研究開発の新規性や難易度などを検討し、今年度中に事業化戦略を作る。「科学技術イノベーション創造推進費」として来年度予算の概算要求戦略的イノベーションに計上した517億円を、各課題に重点配分する。

各分野の課題、内容は次の通り。

◇エネルギー分野
〈革新的燃焼技術〉 燃焼現象の解明や、燃料噴霧・燃焼状態などに関する研究開発を高度化し、自動車用エンジンの燃費などの抜本的改善を図る。大学などの基礎研究と企業における研究開発の連携が必要となる。自動車のコア技術の一つであり、エネルギー・環境制約の打破と、競争力強化の双方の観点から重要だ。
〈次世代パワーエレクトロニクス〉 パワーエレクトロニクス(電圧・電流を制御する半導体とその周辺技術)の飛躍的な高効率化によって、電気・電子機器、輸送機器などの一層の省エネ、再生可能エネルギー(太陽光発電、風力発電など)の導入拡大などを実現する。新たな半導体材料などの基礎研究と、周辺部材などの応用研究のすり合わせが必要となる。大きな市場の成長が期待され、日本の競争力維持が不可欠。
〈革新的構造材料〉 軽量・高強度の画期的な材料(革新鋼板、チタン、マグネシウム、炭素繊維など)、これらを複合、接合した部材を開発し、輸送機器などの抜本的な軽量化(省エネ)や長寿命化(耐久性向上)を図る。大学などの基礎研究、企業における実用化研究、材質や試験方法などの標準化、これらの橋渡しなど、総合的な取り組みが必要となる。素材産業のコア技術の一つ。
〈エネルギーキャリア〉 水素の利用による新たなエネルギー社会を確立するため、水素の製造、輸送、貯蔵、利用技術(水素を炭化水素、アンモニアなどに変換して輸送、貯蔵する技術も含む)の高効率化・低コスト化に資する研究開発を推進する。新たなエネルギー社会の確立に向けたシナリオの検討・検証は、社会・産業全体にかかわる国家的課題であり、府省一体となった取り組みが必要となる。
〈次世代海洋資源調査技術〉 銅、鉛、亜鉛、レアメタルなどを含む「海底熱水鉱床」や「コバルトリッチクラスト」など、海洋資源を高効率に調査する技術を確立し、資源制約の克服に寄与する。国家的な重要課題であり、深海域を対象とした難易度とリスクの高い技術の開発と、さまざまな専門分野の知見の集積が必要となる。
◇次世代インフラ
〈自動走行(運転)システム〉 クルマの運転支援システム(通信利用型運転支援技術、走行支援技術、事故回避技術など)の飛躍的な高度化と普及により、自動走行(運転)も含む新たな交通システムを実現する。交通事故や渋滞を抜本的に削減し、移動の利便性を飛躍的に向上させる。運転者も歩行者も高齢者が増える中での、喫緊の課題となる。クルマや通信、道路、交通など、さまざまな分野の産学官の専門家による協力が不可欠となる。
〈インフラ維持管理・更新・マネジメント技術〉 安全性を維持しつつ、低コストでインフラを維持管理する技術が不可欠となる。このため、センサーやロボット、非破壊検査技術、モニタリング技術などの活用による高度で効率的なインフラ点検・診断・補修技術、インフラ長寿命化に資する新材料技術、構造物の性能評価・性能向上技術などを開発する。精度良く効率的な点検のためのセンサーやロボットの開発、インフラ長寿命化に資する新材料の開発などは難易度が高く、府省一体となった取り組みが必要となる。
〈レジリエントな防災・減災機能の強化〉 自然災害に備え、耐震性などを強化した、強靭なインフラを実現する防災・減災対策技術、自然災害に関する高精度な観測・分析・予測技術を開発する。発災時の被災者避難と災害対応を安全、確実に行うために、IT(情報技術)を活用して、迅速・的確に被災状況を把握し伝達する技術や災害対応技術を確立する。その早期導入を図る。多くの省庁、自治体、企業などが関連する国?的課題であり、緊急性を有する。 ※レジリエントな=「復元力のある」の意
◇地域資源
〈次世代農林水産業創造技術〉 新品種育成の迅速化や先端的ITなどの活用により、画期的な高収量・高収益モデルを実現する。また、生活の質の向上などに資する、次世代の機能性を有する農林水産物・食品などの開発や未利用・低利用資源の活用によって、新たな市場を創出する。食料自給率の向上や農業の付加価値・生産性の向上、安全性の確保は国家的課題であり、農業者、研究者、関係企業、行政が?丸となって取り組む必要がある。
〈革新的設計生産技術〉 三次元造形技術など、時間的制約や地理的・空間的制約を打破する可能性のある革新的な設計・生産技術を高度化・実用化する。地域の企業や個人のアイデアや技術・ノウハウを生かして、多品種・高付加価値の製品を迅速に製造する「新たなものづくり」のスタイルを確立する。製造業の競争力維持のために重要なテーマ。基礎的研究にまで立ち返って真に革新的な技術を確立する、府省一体の取り組みが必要となる。
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