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人のあくびはイヌにもうつる!?

2013.08.12

 「人のあくびは人にうつる(伝染する)」と言われるが、実は、人とイヌの間でも「あくびはうつる」ことが、東京大学大学院総合文化研究科のテレサ・ロメロ特任研究員と京都大学野生動物研究センターの今野晃嗣研究員らが行ったイヌと飼い主の実験で分かった。こうしたイヌの“伝染性のあくび”は、飼い主との感情的な結びつきに影響されることから、将来は、飼い主の感情を敏感に察知して行動する“作業犬”としての適性判断にあくびが役立つのではないかという。研究論文をオンライン科学誌『プロス・ワン(PLOS ONE)』に発表した。

 “伝染性のあくび”は、他者のあくびを見たり聞いたりすると、その観察者にもあくびが生じる現象のこと。人間のほかにチンパンジーやボノボ、ヒヒなどの霊長類でもみられるが、イヌでは確かめられていなかった。

 研究グループは、一般家庭で暮らすイヌ25匹とその飼い主を対象に実験した。イヌに心拍計を装着して、飼い主と見知らぬ人があくびの動作を演じて見せ、イヌにどのような生理学的な変化がみられるかを調べた。

 研究グループは「伝染性のあくびがイヌの共感能力に関与しているとすれば、他者の感情に反応する“作業犬”としての適性判断にイヌのあくびが役に立つ可能性がある」と指摘する。今後は、イヌの共感能力に犬種差や個体差があるのかどうかといった問題に取り組んでいく予定だという。

 その結果、飼い主のあくびを見ている場合と見知らぬ人のあくびを見ている場合とでは、イヌの心拍変動の数値に差がなかった。しかし、人のあくびを見たイヌにはあくびが誘発され、とくに飼い主のあくびを見たときにより多くのあくびが生じた。このことは、イヌと人との感情的な結びつき、共感レベルの差が伝染性のあくびの生起や強さに関係しているという。

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