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遺伝子導入でヒト心筋様細胞を作製

掲載日:2013年7月16日

慶應義塾大学医学部の家田真樹特任講師と和田りえ研究技術員らの研究グループは、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を経ずに、ヒトの心臓線維芽細胞に遺伝子を直接導入するだけで心筋様細胞を作り出す方法を開発した。論文を米国科学雑誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」(オンライン版)に近く掲載する。研究グループは昨年8月、マウスでの実験に成功したことを発表していた。

家田特任講師らは2010年に、マウスの心筋細胞を作り出すために必要な「心筋誘導遺伝子」としてGata4、Mef2c、Tbx5の3つを見つけていた。今回はさらに心筋細胞の誘導に重要な2つの遺伝子(Myocd、Mesp1)を見いだし、これら5つの遺伝子をヒト心臓線維芽細胞に導入したところ、約5%の細胞で心筋の特徴を持つたんぱく質を発現し、細胞の形態や構造も心筋様へと変化した。細胞内部には心筋に特徴的な横紋筋構造が見られた。

この心筋様細胞をほかの心筋細胞と一緒に同じシャーレで培養したところ、心筋様細胞の成熟が進み、周囲の細胞と協調して拍動するようになった。さらに、ヒト心臓線維芽細胞から心筋様細胞へ転換する際には、未分化な幹細胞が誘導されないこと、3カ月の長期間の培養でも腫瘍形成を起こさないことなども確認できた。

なお、実験に用いたヒト心臓線維芽細胞は、心臓病のため心臓外科手術によって患者から取り除かれた心筋組織を培養したもので、本研究は全て大学の倫理委員会の認可を得ており、全ての患者から同意を得た上で心臓線維芽細胞を使用したという。

心臓を構成する心筋細胞は全体の30%程度で、残り50%以上はポンプ機能(拍動性)を持たない心臓線維芽細胞が占める。心筋梗塞などで心筋細胞が壊死(えし)すると、心臓線維芽細胞が増殖して線維化し、さらに心不全を増悪させてしまう。心臓線維芽細胞を心筋細胞へと直接転換する今回の研究は、心臓移植や細胞移植に頼らない新しい医療法の開発につながるものと期待される。

「左」5つの遺伝子を導入し作製した心筋様細胞。横紋筋構造も確認できる(右上の拡大画像) 「右」ヒトES細胞(胚性幹細胞)から作製した心筋細胞

「左」5つの遺伝子を導入し作製した心筋様細胞。横紋筋構造も確認できる(右上の拡大画像)
「右」ヒトES細胞(胚性幹細胞)から作製した心筋細胞

(和田りえさんら提供)

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