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アルツハイマー病を血液投与で遺伝子治療

掲載日:2013年3月21日

理化学研究所・脳科学総合研究センター神経蛋白制御研究チームの西道(さいどう)隆臣シニア・チームリーダーや長崎大学薬学部の岩田修永(のぶひさ)教授などの研究チームは、アルツハイマー病のモデルマウスに遺伝治療を行い、症状を改善させることに成功したと発表した。病因となる異常タンパク質を分解する酵素の遺伝子を血液中に注射する方法で行った結果、脳内に蓄積していた異常タンパク質の量を半減させ、低下していた学習・記憶能力も野生マウスのレベルまでに回復させることができたという。

研究チームは、アルツハイマー病の原因タンパク質「アミロイド・ベータ」を分解する酵素「ネプリライシン」の遺伝子を、「アデノ随伴ウイルス(AAV)」という、風邪などの原因となるアデノウイルスに寄生する病原性のないウイルスに組み込み、これを“運び屋(ベクター)”として脳に届かせ、神経細胞だけで働くようにした。

この「アデノ随伴ウイルス」ベクターを、アルツハイマー病モデルマウスの心臓に注射して血液中に投与し、5カ月後に観察した。空間学習・記憶能力を評価する「モーリス水迷路試験」では、遺伝子治療を受けたマウスは、野生マウスのレベルまで認知機能が回復していた。PET(陽電子放射断層撮影)による画像診断では、脳内のアミロイド・ベータの蓄積量が、遺伝子治療のマウスでは50%近く減少していた。さらに脳を摘出して測定したところ、遺伝子治療によって、海馬や大脳皮質のネプリライシン活性は対照群に比べて1.5倍に上昇し、アミロイドの蓄積レベルも35%減少していた。

今回開発のウイルス・ベクターは、中枢神経系疾患の遺伝子治療の概念を変える革新的な技術であり、若年発症型を含めたすべてのアルツハイマー病患者の根本的な予防や治療法になるとも考えられる。ウイルス・ベクターの生産技術の開発や安全性の問題などが解決されれば、臨床へ応用も期待されるという。

研究は文部科学省科学研究費補助金・新学術領域研究「シナプス・ニューロサーキットパソロジーの創成」と同省委託事業「分子イメージング研究戦略推進プログラム」の助成で行われた。研究論文“Global brain delivery of neprilysin gene by intravascular administration of AAV vector in mice”は英国のオンライン科学雑誌『サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)』(18日)に掲載された。

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