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作業員大量被ばくの可能性注視 造血細胞移植学会が声明

2011.03.30

 福島第一原子力発電所の圧力容器、燃料プールの冷却作業や放射性物質を大量に含むたまり水の処理などに追われる作業員の放射線被ばく事故などに備え、日本造血細胞移植学会は29日声明を発表、全国で95個所の施設が造血幹細胞移植に対応できることを明らかにした。全国で患者を受け入れ可能な施設名も公表した。

 造血幹細胞は、主に骨髄にあって白血球や赤血球などの血液の基になる。大量の放射線を浴びると造血幹細胞が破壊されてしまうため、放射線治療を受けた患者などに対し、失われた造血機能を回復する造血幹細胞移植が行われている。

 日本造血細胞移植学会は、不幸にして高度の被ばくを受けた患者に対する治療に加え、長期化する作業に備えてあらかじめ自分の造血幹細胞を保存しておくことの効果も挙げている。これは自己造血幹細胞移植と呼ばれるもので、長期の作業に加わる前に自分の造血幹細胞を採取、保存してもらい、もし大量の放射線被ばくを受けた場合に、この造血幹細胞を再注入して造血機能の回復を図る治療法だ。

 同学会は、造血幹細胞移植が放射線大量被ばくによる造血機能の回復だけにしか効果はないことを強調し、まず作業の輪番制など作業者の危険回避策が先決である、と念を押している。同時に被ばく者に対し、造血幹細胞移植をはじめとする適切な治療を適切な時期に行うため、現場の従業員数、被ばく量、被ばく時間など詳細で速やかな情報提供を要望している。

 福島第一原子力発電所では、タービン建屋内の放射性物質を高濃度に含む水があることをきちんと知らされていなかった3人の作業員が被ばくする事故が24日に起きている(幸い健康障害はないことが判明)。

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