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熊野灘海底下300メートルに分岐断層

2007.11.20

 地球深部探査船「ちきゅう」による熊野灘での掘削調査を進めている海洋研究開発機構は、海底下300メートルに分岐断層の存在を確認するなど第1次研究航海の結果を公表した。

 「ちきゅう」による日本近海初の本格的調査といえる「南海トラフ地震発生帯掘削計画」は、9月21日から11月15日までの56日間行われ、南海トラフの紀伊半島側6個所の掘削を行った。今回は掘削試料の採取はしなかったが、ドリルパイプの先端近くに各種の物理計測センサーを搭載し、地層密度、空隙率、音波速度、自然ガンマ線、比抵抗などの地質状況を連続観測した。

 駿河湾から紀伊半島沖、四国沖、九州沖まで続く南海トラフは、南からフィリピン海プレートが、日本列島の地下に沈み込んでいる場所となっている。沈み込む際に海洋のプレートの上に堆積した堆積物や火成岩がはぎ取られ、陸側のプレートに次々に積み重なる付加体と呼ばれる地層が存在することが分かっている。

 今回の調査では、海洋掘削として付加体の最も深くまで掘削を行い、海底下220メートルから400メートルにかけてメタンハイドレートに富む地層群が存在することを確認した。また別の掘削地点で、南海の掘削では初めて、海底下300メートルの深さに存在する分岐断層に到達した。海洋研究開発機構は、昨年4月に同海域で実施した三次元反射法音波探査のデータ解析により、プレート境界面から派生する分岐断層の存在を確認している。今回の調査結果は、事前調査で推定された分岐断層の深さと一致していた。

 分岐断層は、フィリピン海プレートとの日本列島を載せた陸のプレートの境界から派生した断層で、熊野灘に存在する分岐断層は1944年の東南海地震(マグニチュード8.1)の時に発生した津波を起こす原因になった、と考えられている。

 メタンハイドレートは、水分子とメタンガス分子からなる氷状の固体物質。温度が低く圧力の高い場所で安定して存在するため、深海堆積物中や永久凍土域に分布する。これまで資源としての関心が大きかったが、海底下のメタンハイドレートが直接、大気、海洋に影響する可能性があることから、資源だけでなく地球温暖化に対する影響という観点からも関心が高まっている。

 「ちきゅう」による「南海トラフ地震発生帯掘削計画」は、統合国際深海掘削計画として実施され、1次研究航海には6カ国、16人の科学者が乗船した。乗船研究者が交代し、引き続き、11月16日から第2次研究航海が始まっている。

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