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光を感じる分子1個の動き電子顕微鏡で観察

掲載日:2007年7月3日

網膜内にあって光を感じる重要な役割を果たす分子を「カーボンナノチューブ」に取り込んで分子一個の動きを電子顕微鏡で観察することに、産業技術総合研究所の研究チームが成功した。

この分子は「レチナール」と呼ばれ、ロドプシンという網膜にあるタンパクの中で光を感じる部分にあたる。光を受けると形が変わり、これが網膜に入った光が視神経を伝わり脳に伝達される過程で最初の重要なステップになっている。

しかし、この変化を直接、電子顕微鏡で観察することは、レチナールが生体分子であるために電子線によるダメージを受けやすい上、観察するための試料を固定する方法がなく、これまでだれも成功していなかった。

産業技術総合研究所の末永和知・研究チーム長や片浦弘道・研究グループ長らの研究チームは、科学技術振興機構の研究プロジェクトで観察法の開発を進めた結果、レチナールをいったんフラーレンと結合させた上で、カーボンナノチューブ内部に入れる方法により、はじめてルチナールが曲がったり、元に戻ったりする構造変化を直接観察することに成功した。

フラーレンとカーボンナノチューブはいずれも炭素原子からだけからなる極微細な分子で、フラーレンはサッカーボールのような構造、カーボンナノチューブは筒状の構造をしている。今回の成果は、カーボンナノチューブが電子顕微鏡による観察で極微少な“試験管”の役割を果たす機能と、フラーレンがマーカーの役割を果たす機能をそれぞれ持つことをうまく利用したもので、今後、他の生体機能を原子・分子レベルで理解することにも応用できると期待されている。

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