レポート

大学教育の組織的取り組み デンマークの博士課程の事例から学ぶ

2014.12.26

 東京理科大学教育開発センターFDセミナー#11「大学教育の組織的取り組み デンマークの博士課程の事例から学ぶ」(2014年10月2日開催)より

 東京理科大学で10月2日、同大学の教職員と大学院生を対象にしたセミナー「大学での教授法と教育の質保証〜コペンハーゲン大学博士課程の事例から学ぶ〜」が開催された。このセミナーは東京理科大学教育開発センターが、大学教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取り組み「ファカルティ・ディベロップメント(FD)」の一環として開催しているもので、今回が第11回目にあたる。セミナーでは、コペンハーゲン大学大学院理学研究科科学教育専攻博士課程に在学中の吉田実久氏が、デンマークにおける博士課程の教育システムについて講演を行い、その後大学教員らと博士課程の今後についての議論を行った。(下記のリンクで記録映像が見られます)

 デンマークの大学で博士課程に在学する学生たちは、大学教育の一端を担う存在として大学に雇用され、学部生や修士学生向けの授業を担当し、論文指導の補助をすることが基本となっている。そのために大学は、博士課程の学生たちに「大学教授法の基礎を学ぶコース」の履修を義務付けている。
これに加え、デンマークの法令では、大学教員と大学職員に博士課程の学生たちを交え大学教育の方針や運営について議論させる委員会「PhD Study Board/Committee」の設置が定められている。博士課程の学生たちを大学教育の運営の議論に参加させることで、彼らに自身が大学の一員であるという自覚を促すと共に、大学全体の「教育の質」を向上させる狙いがあるのだという。

 講演後の議論では、講師の吉田実久氏と受講者の間で、東京理科大学の教育システムの未来について多くの意見が交わされた。

 東京理科大学副学長と大学教育開発センター長を兼務する山本誠教授は議論を受け「学生一人一人に焦点を当てた教育をしていかなければ、これからの大学教育や人材育成は難しい。デンマークのような先進的な取り組みも、少しずつ取り入れていけるようにしたい。」と語った。また、セミナーの閉会を務めた同大学大学院科学研究科の北原和夫教授は「コペンハーゲン大学は長きに渡って今の教育システムを作っており、現在も改善に向けた議論を行っている。東京理科大学でも議論を重ねながら、5年、10年と常に前に進んでいくことが必要だと思う。」と締めくくった。

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