レポート

「「大人のための化学実験教室」に見た“大人が喜ぶツボ”」

2013.01.28

科学コミュニケーションセンター) / 田中 禎人(科学技術振興機構(JST)

 1月12日土曜日の午後、JR市ヶ谷駅から歩いて5分。ひときわ高いビルが、この日の「大人のための化学実験教室」の会場、法政大学市ヶ谷キャンパス校舎だ。「子供たちの理科離れの克服は、まず大人から」と、同大学の山崎友紀教授と東京都立戸山高校の田中義靖教諭が「教室」を始め、自ら講師も務める。

 10階の実験室に入ってみると、 参加者は(見た目で)20代から60代の約20人、特に若い世代では女性が多い。応募多数により「途中で募集を締め切った」という人気イベントだ。

 参加費は100円の保険代のみ。 理科の実験ではおなじみの黒い天板の実験テーブルで、ロゴ入り専用白衣とゴーグルの着用で、これから実験するという気持ちが高まる。私と同じ実験テーブルには、ほかに「実験は学生以来」という初参加の女性1人、半導体関連のエンジニアという男性、映像関係が仕事という男性がいる。

 今回のテーマ「光を発する化学反応」では 、実験の不安を感じる間もなく、乾燥したウミホタルの発光実験から始まり、短い発光に関する化学反応の説明の後は、高価な試薬をばんばん使って、共同作業で光らせ放題。すぐに強烈に光るので、「もっと光らせたい」「その色を写真に残したい」という衝動に駆られる。周りをみると、全てのテーブルで記念写真大会になっている。学生は好き勝手に写真はとれないが、この大人げなさも“大人の喜ぶツボ”なのだろう。

 光を愛でている間、講師からは絶え間なく雑学の提供がある。除菌状態のチェックや犯罪捜査などの実社会での利用の話に加え、直接関係ない試薬の値段やメーカーによる違いの説明にも参加者の質問が飛ぶ。やはり大人はお金の話になると食いつきが違うようだ。

 実験のハイライトでは青、赤、緑の光る試薬(光の三原色)を混ぜて白色を作る課題に挑戦する。 同じテーブルの映像関係のYさんが、光と絵の具の色の違いを解説するのを聞きながら、慎重に調合を行った。このような参加者のバックグラウンドの多様さも、楽しみの一つといえる。ちなみに結果は、強い赤い光を抑え込めず、うすピンクとなったままで試薬切れとなった。

 初めて参加した「教室」は、お手軽なのに本格的な雰囲気。今回はとにかく光るので、光るたびに参加者が歓声を上げ、一斉に撮影大会。沢山の思い出と友達も出来て、知識欲も満たされた1時間だった。帰りに同じグループでお茶して、夕方には帰宅。これって子供でも楽しいかも。

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