レポート

2050年までの科学技術の夢と道筋 =日本学術会議の理学・工学部会が描く=

2014.10.16

宇津木聡史

 日本学術会議の第三部(荒川泰彦部長)は9月26日、科学者たちが共同で描いた未来ビジョン「理学と工学における科学・夢ロードマップ2014(夢ロードマップ2014)」について、一般に説明する公開シンポジウムを開いた。11の分野別委員会の代表が一堂に会し、それぞれの分野から科学技術の発展や持続可能な社会の実現に向けた未来像について語った(下記のリンク先で記録映像が見られます)。

 夢ロードマップは、2011年に初めて作成されたが、今回はその改訂版。例えば化学では、30年後までに石油や鉱石などの混合物を直接目で見て分析できたり、ありふれた炭素などの有機化合物でコンピューターなどの電化製品を作ったりする夢を掲げた。また、リンなどの元素資源が枯渇すると考えられ、ここでも化学が寄与できることがあると予想した。情報学では、過去短期間に100万倍以上の性能や記憶容量の進歩が実現され、予見困難な数多くの技術が過去生み出されてきたとして、今後も一層、人間生活や社会との関わり合いを中心に大きな貢献が期待されるとの考えを示した。具体的には、センサ技術の進展と医療情報の高次電子化によるパーソナルヘルスケアをはじめ、高度なセキュア技術による安心なIT、個別化教育、心地よいインタラクションを可能とする自律ロボットなどの多様な夢を描いた。

 各委員会からの報告後、社会科学者と生命科学者を含む4人のパネリストによる総合討論に移った。会場からは「このロードマップはだれのために、何のためにあり、学術会議全体の中でどういうものなのか」という厳しい問いや、「学者が社会に対して、今何を考え将来をどう思っているのかを示していくのは重要だ」と励ます意見も出た。

 今回、第三部は理学・工学分野全体の研究者の夢を一枚に集約した「夢俯瞰マップ」(下)も作成。その中心には2020年ごろに実現したい夢を描き、遠くに離れるほど時が進み、2030年、2040年、2050年ごろに形にしたい夢を大きく膨らませている。

 ワーキンググループの渡辺美代子委員長(第三部会員・科学技術振興機構執行役)は「各委員会から参加した先生方はとても熱心に、自分の分野だけでなく、第三部全体でどういう方向に進むべきかと議論してもらい、報告をまとめた。第一部や第二部の先生にもていねいに査読してもらうなど、学術会議が総力をあげて作ったものとなっている。今後、これをもとに多くの人と議論したい」と締めくくった。

 「日本学術会議のウエブサイトに今回の報告の資料があります」
理学と工学における科学・夢ロードマップ2014

 下記のリンクから各登壇者の発表が動画で見られます

 

 「理学・工学分野における科学・夢俯瞰マップ」

理学・工学分野における科学・夢俯瞰マップ
一番外にある青色の枠の中にあるものは、科学・技術が社会で実現したい8種類の将来像。黄色の矢印は、科学・技術が目指すべき方向性。将来に向けて、理学や工学、技術の夢が広がる様を描いている。

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