レポート

見逃せない6月6日の「金星太陽面通過」

2012.03.27

北條五男 氏(茅ヶ崎市在住)

2004年6月8日 金星の太陽面通過
2004年6月8日 金星の太陽面通過
(提供:国立天文台 天文情報公開センター)

 5月21日朝、日本国内では約25年ぶりとなる金環日食が広い範囲で見られることは、このサイトでもニュース(2012年1月17日「25年ぶり金環日食5月に国内広範囲で」として紹介されていたし、多くの人が知っていると思う。しかし、こちらの天文現象については、あまり話題になっていないようなので紹介したい。6月6日に起こる「金星太陽面通過」だ。

 この現象は8年前の2004年にも起きているのだが、当時、大きな話題になったという記憶はない。太陽面を金星の黒い点が6.5時間をかけて横切るだけなので、知っていてわざわざ観測しない限り気が付きにくく、話題性に乏しいのだろう。

 常に8年の間隔で2回観測されるのだが、113.5±8年の周期でしか起こらない珍しい天体現象である。2004年に続いて今回も見逃すと次は2117年だそうで、現在の成人は恐らく二度と見ることはできないと考えられる。

 今回の現象(2004、2012年)をさかのぼると、1874・1882年、1761・1769年、1631・1639年に起きたとのこと。 歴史的には、ケプラーが1631、1639年の現象を予報し初めて観測した。その後、ハレーが「この現象を精密に観測すればそれまで知られていなかった地球−太陽間距離や太陽系の大きさなどを測定できる」との科学的提案を1716年に提出して、1761、1769年の現象は地球規模で観測された。1874、1882年の現象は観測適地であったため明治になって間もなくの日本に米、フランス、メキシコの観測隊が来て観測したという。

 ちなみに、明治生まれの父は生前「ハレー彗星(すいせい)を子供の時と年取ってからの二度見た」と自慢していた。

 「金星太陽面通過」については、日本物理学会が発行している「大学の物理教育Vol.18 No.1(2012)」に北海道教育大学札幌校の岡崎隆氏が「金星太陽面通過〜ハレーが考えたこと」に詳しく紹介されている。

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