レポート

「世界に発信、「さっぽろ地球環境憲章」」

2008.07.24

成田優美 / SciencePortal特派員

 札幌市では、市民がよりいっそう地球環境の保全に取り組んでいくために2007年6月から、めざすべき市民像・都市像を検討する準備が進められてきました。同年10月、学識経験者、産業界や消費者団体などの方々11人と公募委員4人、計15人による「環境首都札幌宣言市民会議」が発足しました。この市民会議では、市に寄せられたいろいろな市民の声を踏まえて、自然環境、資源、エネルギーなど多くの観点から協議が重ねられました。本年6月ついに「さっぽろ地球環境憲章」、「地球を守るためのプロジェクト・札幌行動」が決定、6月25日の市民式典で「環境首都・札幌」宣言の後、音楽とともに高らかに謳(うた)われました。

「環境首都・札幌」宣言 市民式典

  2008年6月25日(水)18時30分〜20時30分
  会場:札幌コンサートホールKitara 大ホール

 当日は第10代Kitara専属オルガニストのシルヴァン・エリ氏によるメンデルスゾーンのソナタ演奏でスタート、上田文雄札幌市長が宣言文を、「こども環境サミット」の参加児童10人が順に憲章を読み上げました。余韻に浸るなか、小林三樹・藤女子大学教授(同上市民会議会長)がスピーチで登壇、市民会議委員が紹介されました。小林会長は衛生工学・都市環境工学・地球環境が専門で、宣言に至った経緯、札幌の街の変遷、そして人間活動と今日の異常気象について話しました。(以下抜粋・引用)

  • 『目先の自分のことだけ、そして身の周りのことだけしか考えない行動では、周辺の自然環境を保全できないし、ひいては地球の環境が保たれず、温暖化に伴う異常気象の頻発と、過激になる大嵐や日照りや洪水が、弱い経済構造や不利な立場にいる人々を一層苦しめ、地球上諸国民の平和共存が危ぶまれる時代になってまいりました』
  • 『世の中は見えるものと、見えないものの世界から成り立っております。普通は物質的なものと精神的なものという意味で使われると思いますが、目や耳で感じられる身の周りの環境(河の汚れとか、ごみ悪臭騒音など)の改良に、長い努力を続けて、現在の住み良い街が実現しているわけです。実感できないもの、目に見えないものは、出してしまえば無いも同然と出し続けてきた結果、地球上空の空気層に貯まりに貯まって、人類社会に禍を及ぼし始めているのが、二酸化炭素やフロンに起因する気候変動にほかなりません』

 そして暖房などに燃料消費が欠かせない北海道では 『住宅の断熱や省エネ行動に、真剣に取り組まざるをえない必然性がある』こと、『地球環境新時代を先取りした生き方や社会の仕組みが当たり前に行われている都市』が環境首都であると指摘しました。

 また、6月29日に鴨下環境大臣に渡す「こども環境サミット・札幌宣言」 について解説、『子どもたちが未来に希望を抱いて、目を輝かせて成長していける「生きるに値する環境を」引き継ぐのは、私ども大人の責任ではないでしょうか』 と訴えました。

 結びに会場のKitara のホールに道産木材が使われ、オルガンを造ったフランスの職人が札幌のイメージをシンボル化した飾りをデザインしてくれたことを例に、人間を支える物と心の豊かさについて語りました。将来にわたって健全な環境を引き継いで行けるように、札幌市民は新しい価値観を実践して全世界に広めることを提唱、上田市長がお礼の言葉を述べました。

 第二部の記念演奏会は、中原達彦作曲:環境首都・札幌」宣言のための作品 「We act for the earth!」、ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」。
1,300人を超える参加者から大きな拍手が湧き起り、感動に包まれました。

この市民会議で特に論議が起きたのは、エネルギー問題と都市環境の動脈といえる交通整備についてです。北海道では太陽光や風力の自然エネルギーの普及・実用化に関心が高く、雪利用・バイオマスなどの研究開発が期待されていることを付記いたします。

札幌市環境保全「環境首都札幌宣言市民会議」サイト

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