レポート

サイエンスアゴラから(2)「「実物」で訴える創造力 = 思わず触りたくなる! =」

2014.11.10

JSTサイエンスウインドウ編集部

 11月7日から3日間開かれた科学の祭典「サイエンスアゴラ」の会場(日本科学未来館など)では、科学技術を伝えるさまざまな団体の展示が見られた。効果的な伝え方の一つは、「実物」を見せて来場者におもしろさや抱えている課題を知ってもらう方法だ。

折り紙でつくる建築物

折り紙でつくる構造と研究グループ(右が舘さん)
折り紙でつくる構造と研究グループ
(右が舘さん)

 不思議な形をした大きな立体が目に留まった。硬くて強度がありそうなのに、簡単に折りたためてコンパクトにもなる。この折り紙を応用した立体を作っているのは東京大学総合文化研究科助教の舘知宏さん。「オリガミで建築を折る研究室」の展示コーナーだ。

 折り紙で立体構造をつくるには、変形しない面とちょうつがいの役割をする辺を組み合わせて、一枚のシートがどのように立体に姿を変えるか理論的に計算する。形が変わる立体を見つけるのも大変だが、それを折って実際の作品に仕上げる苦労もあるという。

 舘さんは「数学の幾何学的な性質と芸術性の融合した部分が魅力。強度と柔軟性を併せ持つ折り紙の性質は、構造物の材料として応用できる。折りたたみ可能な性質を生かして仮設住宅やパビリオンにも応用したい」と話す。美しくて汎用性の高い建築物が期待できそうだ。

マラウイ青年制作の風力発電機

マラウイの青年が制作した風力発電機を前に3人のメンバー
マラウイの青年が制作した風力発電機を前に3人のメンバー

 トタンの屋根の廃材で作った羽を自転車の車輪に付けて、電気製品のモーターと組み合わせて作った簡易な風力発電機。ライトは白色LED—。「えっ、これで発電ができるの?」と、このブースにやってきた子供たちは、びっくりした表情を見せながら、手で羽を回してみた。

 青年海外協力隊で、アフリカのマラウイ共和国に中高等学校の理数科教師として派遣されていたメンバーによって結成されたサイエンスキャラバン「PICO factory Japan」の出展。メンバーが持ち込んだのは、マラウイ人の青年が制作したこの風力発電機。廃材や古い電気製品を分解して取り出した部品を使って、電気のない村に光を灯そうとした意欲と工夫が伝わってくる。

 「良い教科書も少ないマラウイです。現地の材料を使って、こどもたちができる実験や理科の教材をこれからも作れるといいと思います。子どもが実験で驚く場面は日本でもマラウイでも同じですね」と、新江梨佳さんらメンバーは会場に訪れた大人や子どもを相手にペットボトルを使った簡易な実験を見せていた。

外来種のカメやザリガニ

捕獲されて水槽に入れられている外来種のカミツキガメとアメリカザイガニの釣りに遊ぶ子ども
捕獲されて水槽に入れられている外来種のカミツキガメとアメリカザイガニの釣りに遊ぶ子ども

 鎖をかけた水槽内で、カミツキガメが暴れている—。カミツキガメは、アメリカ大陸に生息し、かつてペット用に大量に輸入された外来生物だ。現在は法律により輸入も飼育も禁止されており、最近、東京都内の公園内で捕獲されたものを特別に許可を取り、展示場に運んだ。このコーナーにはハクビシンのはく製や、生きたアメリカザリガニが動いている水槽も用意してある。

 在来生物の保護活動を進める市民団体をはじめ、日本技術士会、環境教育関係者などさまざまな団体が集まっている一般社団法人「生物多様性保全協会」の出展だ。外来種の多くは食用や害獣、害虫の駆除、ペット用など人間の都合で持ち込まれる。ブースでは子どもたちがザリガニを釣って遊んでいる間に、親たちにはアンケートをお願いし、外来生物法違反の罰金額や外来種が日本に持ち込まれた理由などについて関心をもってもらう。

 代表理事の赤澤豊さんは「外来種によって絶滅が危惧される在来種もありますが、単に駆除すればよいという単純な問題ではない。多くの人が話し合うことが必要です」と一般の人への意識喚起の機会にしている。

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