レポート

サイエンスアゴラから(1)「あの手この手、仕組みや工夫を紹介 = 最先端研究の「驚き」伝わる =」

2014.11.07

JSTサイエンスウインドウ編集部

 7日に始まったサイエンスアゴラの会場である東京・お台場の日本科学未来館の一階のフロアには、科学技術振興機構(JST)などがプロジェクトとして進めている最先端の研究を紹介する展示ブースが並ぶ。そこには、来場者が「アッと驚く」発想の研究があった。

「赤ちゃんから学ぶ」方法を体験

デジタルおしゃぶり
デジタルおしゃぶり

 赤ちゃんの知られざる学ぶ力を紹介しているブースの「赤ちゃんから学ぶ研究室」。赤ちゃんが使う「おしゃぶり」をすると、目の前のテレビ画面のアニメーションと連動し、タイミングよくしゃぶるとキャラクターが転ばず、ジャンプできる仕掛けの装置を用い、赤ちゃんの能力を試す研究などを紹介。実験では、わずか8ヶ月の赤ちゃんがこの道具を操る様子が観察できたという。

 会場でも見学する大人が、指で触りながらこの「おしゃぶり」を試していた。研究代表の開一夫東京大学教授は「赤ちゃんは私たちが思っている以上に『教えられる能力』をもっている。人間の赤ちゃんだけがもつ特別な『教えられる』能力と、人間だけが持つ特別な『教える』能力の関係を調べていけば、教育の方法から人間の進化まで、いろいろなことに示唆を与えてくれるはずです」と話す。

「歩く姿」から心身状態をチェック

心身の健康が分かる「歩き」の測定
心身の健康が分かる「歩き」の測定

 歩く姿から健康状態を調べてくれるというブースもある。大阪大学の八木康史教授らが出展した「歩き方であなたを測る研究室」では、希望する来場者には、細い通路のようなスペースを何度も歩いてもらい、カメラで撮影。その情報を、コンピューターに蓄えたデータを使って分析し、20代や認知症患者の平均と比べながら、心身の状態を教えてくれる。

 八木研究室の満上育久助教は、「人は、悲しかったりうれしかったりすると、歩き方に変化が現れることが分かっています。私たちは、実際に多くの人の歩く姿を撮影し、そのデータを統計的に処理して、歩くことと感情の間にある特徴を見つけようとしています」と解説。今後の応用の一つは、歩き方から認知症の度合いを客観的に測る方法の開発。歩くという日常的な行動を通して、科学の最先端に触れられる。

不思議、空中に浮かぶ操作画面

空中に浮かぶ操作画面と山本准教授
空中に浮かぶ操作画面と山本准教授

 「最初はスター・ウォーズのレイア姫を三次元的に浮き上がらせたかったのです」と笑って話すのは宇都宮大学オプティクス教育研究センターの山本裕紹准教授。開発したのは空中に大型のパソコン画面が浮かんでいるように見える三次元立体の装置。「空中結像表示技術」(ARR Tablet)と呼び、ハーフミラーと交通標識にも使われる反射シートを組み合わせ、空中に虚像を浮かばせる原理だ。実際に液晶画面があるわけでなく、触ることもできないが、空中で指を動かせば、赤外線カメラが感知し、操作もできる。

 山本准教授は「将来、自動車の中のハンドルの位置に映し出す速度計などのメーターを映し出すスクリーンに活用できる」と期待する。アゴラでの発表は初めてだけに「学会での発表と違って、会場には子どもからプロまで来るので、人によって説明を変えないといけない。国民に広く発表しているという実感がわく」と話している。

ページトップへ