ニュース - 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」 https://scienceportal.jst.go.jp Wed, 18 Feb 2026 05:21:03 +0000 ja hourly 1 高級魚ノドグロ、近畿大が完全養殖に成功 クロマグロなどに続き30魚種目 https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20260218_n01/ Wed, 18 Feb 2026 05:05:41 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=newsflash&p=56247  高級魚のノドグロ(アカムツ)の完全養殖に成功したと、近畿大学が5日に発表した。近畿大による完全養殖は、2002年のクロマグロなどに続いて30魚種目となる。「天然物と同じような脂の乗りとうまみがある」といい、月内に「近大ノドグロ」として近畿大学関連のレストランで提供していく予定という。

完全養殖によるノドグロの稚魚(ふ化後106日、近畿大学提供)
完全養殖によるノドグロの稚魚(ふ化後106日、近畿大学提供)
水槽内を泳ぐ完全養殖によるノドグロの稚魚(近畿大学提供)

 ノドグロは日本海沿岸で水揚げされることが多い白身魚で、脂が乗ってうまみがあるため「白身のトロ」とも呼ばれる。近年、人気が増している一方で供給が追いつかず、高値で取引されるようになっているという。近畿大学発ベンチャー企業の提案で、2015年から近畿大学水産研究所・富山実験場(富山県射水市)で完全養殖の研究が始まった。

 近畿大学水産研究所長で富山実験場長の家戸(かと)敬太郎教授によると、ノドグロを漁獲する時間帯や場所などを工夫して、2019年ごろ、安定的な採卵と人工授精・人工ふ化が可能になった。しかし、ふ化後に稚魚の浮き袋が肥大し、水面をくるくる回っているうちに全滅するという問題が起きた。水深100メートルほどにすむ深海魚である点を考慮して、水温の管理のみならず、水中に泡として溶かし込む酸素の飽和度を調節することで卵や稚魚が死ぬのを防ぐことに成功。22年には1万匹、23年には3万匹の稚魚を養殖によって育てることができた。

 さらには完全養殖を目指し、2022年に天然物のノドグロの卵からふ化した稚魚を育て、25年10月にメス6匹にホルモンを投与して計36万個ほどの卵を採取。人工授精した2日後、約4万匹がふ化したことで完全養殖が実現した。今月初めの時点で、ふ化してから120日程度の稚魚7千匹ほどを飼育できているという。

人工授精・人工ふ化で生まれたノドグロ(上)が産んだ卵から稚魚がふ化したことで完全養殖が実現した(近畿大学提供)
人工授精・人工ふ化で生まれたノドグロ(上)が産んだ卵から稚魚がふ化したことで完全養殖が実現した(近畿大学提供)

 今後は量産に向けて採卵や飼育の技術を向上させ、種苗(稚魚)の安定的な生産技術を確立する。現状の人工飼育ではマダイやブリに比べて成長が遅く、出荷サイズ(全長20センチ、重さ150グラム程度)になるまで3年かかる。また、人工ふ化したノドグロの9割以上がオスとなるという課題もある。家戸教授は「養殖研究の事例が少なく、まだまだ謎の多い魚だが、完全養殖が達成できたので、成長の早い親の子どもを増やす品種改良の道が開けた。成長の早いメスのみ生産する方法なども開発したい」と説明している。

近畿大学水産研究所・富山実験場では、水深100メートルからくみ上げた海水をノドグロの飼育に使っている(近畿大学提供)
近畿大学水産研究所・富山実験場では、水深100メートルからくみ上げた海水をノドグロの飼育に使っている(近畿大学提供)
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ひな祭りの夜、全国で皆既月食 観測しやすい夜8~9時に https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20260217_n01/ Tue, 17 Feb 2026 05:17:31 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=newsflash&p=56242  月面の全体に地球の影が落ちる「皆既月食」がひな祭りの来月3日に起こり、全国で特有の赤みを帯びた月が観察できる。全国で見られる皆既月食は昨年9月8日以来。今回は皆既が午後8~9時頃、欠け終わるのも10時半前だ。現時点で今年の天文ショーのハイライトとされ、さほど夜ふかしせずに済むだけに、好天ならぜひ見届けたい。

来月3日の皆既月食の概要(国立天文台提供)
来月3日の皆既月食の概要(国立天文台提供)

 国立天文台の資料によると、同日の月は東の空で満月の状態から午後6時50分に欠け始め、南東の空で10時18分に満月に戻る。その間の8時4分~9時3分に皆既食となる。観察にあたっては場所の安全やマナー、寒さ対策に留意したい。各地の公開天文台や科学館などが観望会を計画している。

赤みを帯びた過去の皆既月食(国立天文台提供)
赤みを帯びた過去の皆既月食(国立天文台提供)

 皆既月食では月が地球の影に完全に入り込むが、真っ黒で見えなくなるのではなく、赤銅色などと呼ばれる赤みを帯びる。夕日が赤いのと同様、太陽光のうち波長の長い赤い光が散乱しにくく、地球の大気を通過するためだ。またこの大気がレンズのようになって太陽光を屈折させるため、赤い光が皆既食中の月面を照らす。大気中の塵(ちり)の量などにより毎回異なる微妙な色合いが、皆既月食の見どころの一つとなる。

 月食は太陽光が当たる地球の影の中を月が通過することで、地球から月が欠けて見える現象。太陽と地球、月が一直線に並ぶ満月の時に起きる。ただし地球から見た月の通り道(白道)が太陽の通り道(黄道)に対し少しずれているため、満月は地球の影からずれた所を通ることが多い。このため、満月の度に月食が起こるわけではない。

 太陽が欠けて見える日食では、月が地球に落とす影の範囲が限られるため、観察できる地域は限られる。これに対し月食は月面に地球の影が落ちる現象なので、発生時間帯に月が見える場所ならどこでも見える。

月食が起こる仕組み(国立天文台提供)
月食が起こる仕組み(国立天文台提供)

 国内で見られる次の部分月食は2028年7月7日、皆既月食は29年1月1日…今回のひな祭りに続き七夕、元日と、雅やかな日を飾り続けるようだ。後者は、年明け直後の午前0時7分に月が欠け始めるのだとか。

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宇宙に輝く天使の輪? 赤外線で見るソンブレロ銀河 https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20260216_n01/ Mon, 16 Feb 2026 04:13:02 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=newsflash&p=56235
中間赤外線で捉えたソンブレロ銀河(NASA、欧州宇宙機関、カナダ宇宙庁、米宇宙望遠鏡科学研究所提供)
中間赤外線で捉えたソンブレロ銀河(NASA、欧州宇宙機関、カナダ宇宙庁、米宇宙望遠鏡科学研究所提供)

 漆黒の宇宙に輝く天使の輪? 米欧とカナダのジェームズウェッブ宇宙望遠鏡が中間赤外線によって捉えたソンブレロ銀河(M104)の画像だ。地球からはるか3000万光年離れ、直径は5万光年などとされる。

ハッブル宇宙望遠鏡が可視光で捉えたソンブレロ銀河(NASA、ハッブル宇宙望遠鏡、米宇宙望遠鏡科学研究所提供)
ハッブル宇宙望遠鏡が可視光で捉えたソンブレロ銀河(NASA、ハッブル宇宙望遠鏡、米宇宙望遠鏡科学研究所提供)

 おとめ座の1等星スピカのすぐ横にあり8等級だが、普通はこのように見えない。ソンブレロとは、つばに縁取りのあるメキシコの帽子のこと。中間赤外線の画像で輝いている輪のあたりは、可視光の望遠鏡だとチリのせいで暗い帯となり、そのおかげで全体がソンブレロのように見える。画像を公開した欧州宇宙機関は「銀河の外輪の細部を鮮明に捉え、チリの分布の知見が得られた」とするが、「ソンブレロに見えない」と、少しさえない気持ちになる人もいるかもしれない。

 おとめ座というとロマンチックなイメージがあるが、ギリシャ神話では実に考えさせられる。この乙女は女神アストレアで、他の神々が天界に帰る中、最後まで地上に暮らして正義を訴え続けた。が、欲望の尽きない人類に愛想をつかし、ついに天に逃れておとめ座になった。彼女が人類の善悪の重さを判断するのに使った道具が、おとめ座の隣にあるてんびん座だ。

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イプシロンS、開発難航受け2段機体を従来型に 来年度打ち上げへ https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20260212_n01/ Thu, 12 Feb 2026 06:12:06 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=newsflash&p=56231  開発が難航する小型ロケット「イプシロンS」の2段機体について、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は計画を変更し、運用を終えた従来型イプシロンのものにいったん戻す方針を明らかにした。ロケット運用の空白期間を縮める狙いがあり、来年度の打ち上げを目指す。文部科学省宇宙開発利用部会に報告し、了承された。

従来型イプシロンの最終6号機=2022年10月(JAXA提供)
従来型イプシロンの最終6号機=2022年10月(JAXA提供)

 イプシロンSは開発中だが、2023年7月と24年11月に2段機体の燃焼試験で爆発を起こし、2回目について原因究明が続いている。今月4日に開かれた同部会で、JAXAが状況を説明。究明や対策に時間がかかっており、政府の基幹ロケットとしての役割や、顧客の信頼確保が困難な状況との認識を示した。その上で、当面の衛星打ち上げ需要に対応するため、開発計画を見直すことを報告した。

 見直しにより、2段機体はイプシロンS用に開発してきた型式ではなく、従来型を復活させて採用することにした。ただし燃料の粒子を混ぜ合せて固める結合剤と、断熱剤の材料の一部が入手困難となっており、これらを代替品にする。このタイプの機体全体を「イプシロンSロケット・ブロック1(ワン)」と呼ぶとした。

 見直しにより、機体の全長は27.2メートルから26.8メートルに、2段の搭載燃料は18トンから15トンに減少する。ブロック1は本来のイプシロンSより能力が低下するため、搭載できる衛星の一部に制約が生じる。例えば、イプシロンS初号機で打ち上げる計画だったベトナムの地球観測衛星「ロータスサット1」は搭載できるが、最終目的の軌道に到達するために衛星の燃料を多く使うことになる。2028年度に打ち上げ予定の太陽観測衛星「ソーラーC」では能力が不足し、対応の検討が必要という。

イプシロンSの2段燃焼試験中に起きた爆発=2024年11月(JAXA提供)
イプシロンSの2段燃焼試験中に起きた爆発=2024年11月(JAXA提供)

 種子島宇宙センター(鹿児島県)の燃焼試験設備は近く、2024年11月の爆発からの復旧工事を終える。同設備を使い、改めて2段機体の燃焼試験を実施し、来年度中のブロック1実証機打ち上げを目指す。実証機に衛星を搭載するかは未定という。

 同部会で井元隆行プロジェクトマネージャは「先の話をするのは難しい状況だが、まずは第1ステップとして(ブロック1の)の打ち上げを着実に成功させて実績を重ね、次の計画で能力をできるだけ回復させることも考えている」と説明し、理解を求めた。

 イプシロンは3段式の固体燃料ロケット。昨年退役した大型の液体燃料ロケット「H2A」や後継機「H3」などと共に、政府が基幹ロケットに位置づけている。科学や観測、技術実証目的の小型衛星を搭載する。従来型を2013~22年に6機、内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県)で打ち上げ、1~5号機が成功。22年、従来型の最終6号機は失敗した。1段を大型ロケットの固体ロケットブースターと共通化し、機体点検や管制を合理化するなどしてコストを抑えている。改良型のイプシロンSは開発当初、23年に初打ち上げを計画していた。

H3、年度内に最小機体の燃焼再試験

 一方、H3も昨年12月に8号機の打ち上げに失敗しており、原因究明が続く。JAXAと三菱重工業は今月3日、H3の9号機について、予備期間としてきた年度内の打ち上げを見送ると発表した。

 H3は固体ロケットブースターを装備しない最小形態を、開発中の6号機で実現する計画だ。国産大型ロケットで初めてとなる。昨年7月に種子島で実施した6号機の燃焼試験では、1段機体の燃料タンク内の圧力が十分に上がらない問題が発生した。JAXAは、対策を講じた再試験を今年度中に行うことを、今月4日の文科省部会で明らかにした。

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エコー検査用の固形ゲルパッド、近畿大が開発 液体ゼリーと違ってベタつきません https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20260209_n01/ Mon, 09 Feb 2026 05:03:26 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=newsflash&p=56196  超音波診断(エコー検査)で使う新たな固形ゲルパッドを、近畿大学医学部などの研究チームが開発した。液体ゼリーを体に塗る検査と同等の診断画像を得られるうえ、ベタつかず拭き取る必要がないことから受診者の満足感も大きいという。衛生的に再利用できるようになれば、人にも環境にも優しいエコな医療用品となる可能性がある。

固形超音波診断用ゲルパッドの上でプローブ(探触子)を動かし、超音波で臓器の状態を診断する(近畿大学医学部・植原拓也講師提供)
固形超音波診断用ゲルパッドの上でプローブ(探触子)を動かし、超音波で臓器の状態を診断する(近畿大学医学部・植原拓也講師提供)

 エコー検査では、超音波の送受信をするプローブ(探触子)を体の表面に当てながら動かし、体内の臓器からはね返ってくる超音波を画像化して異常の有無を調べる。受診者の肉体的な負担が少なく、信頼度の高い診断法として普及している。プローブと体の間に空気があると超音波が遮断されて体内が見えなくなるため、受診者の体に載せた液体ゼリーを塗り広げるようにプローブを滑らせながら画像を得ることが多い。

 ただ、検査に時間がかかると液体ゼリーが乾燥して空気が入り、診断画像が荒れてしまうことがある。また、検査後にゼリーを拭き取るものの、乾燥してカピカピになったり衣服に付いたりして不快に感じる受診者もいる。ゼラチン製の固形ゲルパッドもあるが、保湿の難しさや保管の煩雑さが課題だという。

現在はエコー検査の際、容器ごと温めた液体ゼリーを検査する部分に載せ、プローブを滑らせながら画像を得ることが多い(近畿大学医学部・植原拓也講師提供)
現在はエコー検査の際、容器ごと温めた液体ゼリーを検査する部分に載せ、プローブを滑らせながら画像を得ることが多い(近畿大学医学部・植原拓也講師提供)

 近畿大学医学部の門前一教授(医学物理学)らは、ゼラチンに代わる新たな固形ゲルパッドの素材として「タマリンドシードガム」に目を付けた。南インド料理によく使われるマメ科常緑樹タマリンドの種子に含まれる天然多糖類で、食品や医薬品などの添加物として広く使われている。

 門前教授らはタマリンドシードガムで放射線治療用ゲルパッドの開発を試みていたが、水が染み出るのを止められない点が課題となっていた。湿り気を保つ必要があるエコー検査用のゲルパッドにはうってつけなのではないかと考え、植原拓也講師(放射線腫瘍学)も加わって開発を進めた結果、タマリンドシードガムと多価アルコール、水を主成分とする固形ゲルパッドが完成した。

 研究用ゲルパッド(厚さ5ミリ、5センチ四方)を用意し、健康な4人を対象に実験をした。肝臓や胆嚢など腹部の臓器の検査(コンベックスプローブ)、比較的体内の浅い部分にある頸動脈でプラークができていないかを調べる検査(リニアプローブ)、心臓内部の弁などの動きを見る検査(セクタプローブ)を実施。画像の鮮明さや診断の精度に関して、従来の液体ゼリーを使った場合と大差はなかった。検査の満足度を1~5の5段階評価(数字が大きいほど満足)で被験者に問うと、従来の液体ゼリーはおおむね1~2にとどまっていたが、新開発の固形ゲルパッドは4~5だった。

液体超音波ゼリーを用いた腹部エコー検査で撮影した肝臓の画像(左)と、新開発の固形超音波診断用ゲルパッドを用いた画像(いずれも近畿大学医学部・植原拓也講師提供)
液体超音波ゼリーを用いた腹部エコー検査で撮影した肝臓の画像(左)と、新開発の固形超音波診断用ゲルパッドを用いた画像(いずれも近畿大学医学部・植原拓也講師提供)

 植原講師によると、今後は大規模臨床試験で有効性を検証したり、長期間使用時の耐久性を評価したりして臨床応用を目指すという。今回の研究は早川ゴム株式会社(広島県福山市)と共同で実施し、1月12日、英科学誌「サイエンティフィックリポーツ」に掲載された。

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南鳥島EEZでレアアース試掘に成功 深部探査船「ちきゅう」活用 https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20260206_n01/ Fri, 06 Feb 2026 06:22:18 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=newsflash&p=56192  南鳥島(東京都)沖の排他的経済水域(EEZ)でレアアース(希土類)の試掘に成功したと、内閣府と海洋研究開発機構(JAMSTEC)が発表した。地球深部探査船「ちきゅう」からパイプを接続しながら降ろし、水深約6000メートルの深海底からレアアースを含む泥を引き揚げた。レアアースは自動車や電子機器などの性能向上に欠かせず、「産業のビタミン」とされる鉱物資源。世界生産の大半を中国が握る中、国産化に向けた一歩として注目される。

南鳥島沖のちきゅう船上で、引き揚げたレアアース泥を取り出す作業(内閣府SIP、JAMSTEC提供)
南鳥島沖のちきゅう船上で、引き揚げたレアアース泥を取り出す作業(内閣府SIP、JAMSTEC提供)

 試掘は内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一環。ちきゅうは先月12日に事実上の母港である清水港(静岡県)を出港。17日、都心から南東に約1900キロ離れた南鳥島沖の現場海域に到着した。開発した機器や無人潜水機などを一通り使った採鉱システムの試験が主目的だが、実際にレアアース泥の引き揚げも試みた。30日に採掘を開始し、今月1日、レアアース泥を船上に引き揚げたことを確認した。15日に帰港する。

 今後は引き揚げた泥からレアアースの精製を試みるほか、調査手法や技術課題の検証などを進める。来年2月にも南鳥島沖で、一日当たり350トンを目標にレアアース泥の本格採掘を実証する。その後は資源量の高精度3次元地図化や、産業化に向けた検討などを進める。

 小野田紀美科学技術担当相は3日の閣議後会見で、「2018年の開始以来、着実に実施してきたプロジェクトの節目として喜ぶと共に、引き続き精力的に研究開発と技術実証を進めていく。一連のプロセスを実証し、総合的に南鳥島沖レアアース生産の経済性評価を行う。その結果を踏まえ、実用化の可能性を検討していく。今後、国としてどうするのかしっかり検討したい」と述べた。

南鳥島沖でちきゅうからパイプを延ばし、レアアースの眠る海底に到達した採鉱機(内閣府SIP、JAMSTEC提供)
南鳥島沖でちきゅうからパイプを延ばし、レアアースの眠る海底に到達した採鉱機(内閣府SIP、JAMSTEC提供)

 松本洋平文部科学相も同日、「引き揚げた試料のレアアース含有量など、詳細は今後確認すると聞いているが、まずは成功をうれしく思っている」と話した。続けて「水圧や海流の影響が大きい中、パイプを傷つけずに上げ続けるには大変な技術が必要だ。また、町工場の皆さんが知恵と技術を結集した(小型無人深海探査機)『江戸っ子1号』も一緒にやって、こういうことができた。世界最先端の、わが国の大きな一歩になるかもしれない。大きなチャレンジに大変、貢献をしていただいている」と付け加えた。

 レアアースは希少、または抽出の難しい金属「レアメタル」の一部で、ネオジムやジスプロシウムなどのランタノイド15元素にスカンジウム、イットリウムを加えた計17元素。元素ごとに磁気や超電導、光学、触媒などの独特な性質を発揮するため、電気自動車のモーターや風力発電機、ハードディスク、スマートフォン、発光ダイオードなど、幅広い用途で使われている。レアアース鉱床の多い中国が世界生産の7割、埋蔵の5割を占め、輸出規制の強化を外交カードに利用しているとされる。

 東京大学大学院工学系研究科の加藤泰浩教授らが2011年、海底にレアアース泥が分布することを発見。13年に南鳥島沖のEEZに超高濃度で高品質のレアアース泥の存在を突き止めたのを機に、資源開発に向けた産学官の取り組みが続いてきた。経済安全保障推進法に基づく経済産業省の「重要鉱物に係る安定供給確保を図るための取組方針」はレアアースについて、30年時点で国内の永久磁石の需要確保を目指すとし、目標を定めている。

地球深部探査船「ちきゅう」=2024年9月、静岡市清水区の清水港
地球深部探査船「ちきゅう」=2024年9月、静岡市清水区の清水港
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テーブル状サンゴが横須賀で生息、北限記録を30キロ更新 立教大などが調査 https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20260205_n01/ Thu, 05 Feb 2026 05:47:54 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=newsflash&p=56171  神奈川県横須賀市の佐島漁港でテーブル状サンゴが発見され、立教大学などの調査で日本国内の生息地の北限記録を約30キロメートル更新したことが分かった。これまでこの種類は、太平洋側では房総半島の先端(千葉県)、日本海側では対馬(長崎県)が北限だった。テーブル状サンゴは通常、台湾や沖縄の海域に生息しており、研究者は「ストレスに強い個体が北上しているのではないか。サンゴに共生する植物プランクトンの褐虫藻が強いのか、サンゴ自体が強いのか調べたい」と話している。

佐島漁港で水揚げされたテーブル状ミドリイシ。新江ノ島水族館(藤沢市)で展示されている(同水族館 園山貴之氏提供)
佐島漁港で水揚げされたテーブル状ミドリイシ。新江ノ島水族館(藤沢市)で展示されている(同水族館 園山貴之氏提供)

 立教大学環境学部開設準備室の大久保奈弥教授(サンゴの生物学)は、藤沢市にある行きつけの寿司屋で、「漁師がサンゴらしきものを発見した」と聞き、調査を始めることにした。漁師らは「4、5年前からサンゴが増えてきた」と話しているという。

 佐島漁港から採取された3群体を大久保教授が確認したところ、大きさは1片が15~35センチメートルほどで、水深3~5メートルで採れたテーブルのような形をしたミドリイシの一種だった。サンゴには通常、褐虫藻が共生しており、光合成によって栄養分をサンゴに供給する。この褐虫藻がいなくなると白化し、サンゴは死に至るが、今回の個体は3つとも白化しておらず、健康な状態で見つかった。

 現在、サンゴの分類は「研究者によって記載している種類が異なる」という混乱が生じていることから、世界中の研究者により、形態に加えてDNA解析などを基に再度、記載がなされている最中だ。今回見つかったミドリイシはAcropora cf. solitaryensis(エンタクミドリイシ)とAcropora aff. divaricata(ミドリイシ)という種で、台湾や沖縄など、暖かい南方の海に生息する種類であることは間違いないという。

 佐島漁港の2025年の海水温は、13.4~28.3度。沖縄の海水温は20度を下回ることがほとんどないため、今回のミドリイシは「低水温に耐性のある個体」である可能性が高いという。大久保教授によると、本来、ミドリイシは「弱い」サンゴで、水槽で飼うのは向かないとされるが、今回の個体は藤沢市の新江ノ島水族館内や大久保教授の水槽で「元気」に成長していることからも、ストレスに強いと推察されるという。

日本近海におけるテーブル状ミドリイシの分布北限。これまでの地域より北に移動した
日本近海におけるテーブル状ミドリイシの分布北限。これまでの地域より北に移動した

 これまでこの種のミドリイシは、日本海側では長崎県対馬市沖、太平洋側では千葉県館山市波左間が北限で、これらの緯度よりさらに高い場所で見つかったことになる。館山市波左間の2025年の海水温は14.7~27.7度で、冬場は約30キロメートル北にある佐島漁港より約1度高い。

 また、1年で3~4センチメートルの成長速度と見積もると、ミドリイシは10年以上この地域に生息していた計算になり、「黒潮大蛇行が近年ニュースで流れていたが、それより前に入ってきて定着した可能性がある。東京湾の奥は水質が悪く、今回のミドリイシは育たないだろう。佐島漁港は水質もきれいで地形的にも入り込みやすいので、住み着いたのではないか」としている。

 今後は、現在開発中の実験用モデルサンゴとの比較解析などをおこなって、ストレスに強い原因を探りたいという。研究は大隅基礎科学創成財団の助成を受けて行われた。成果は、日本サンゴ礁学会の「ガラクシア ジャーナル オブ コーラル リーフ スタディズ」に2025年11月21日に掲載され、立教大学などが同12月23日に発表した。

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80億人が消える“地球の入り”の一枚、人類は何を思う https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20260204_n01/ Wed, 04 Feb 2026 05:48:23 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=newsflash&p=56168
米宇宙船「オリオン」が捉えた“地球の入り”。左は機体の一部=2022年11月(NASA提供)
米宇宙船「オリオン」が捉えた“地球の入り”。左は機体の一部=2022年11月(NASA提供)

 「80億人が消えるところ」。米航空宇宙局(NASA)がユーモア交じりにこう説明するのは、2022年11月に米国の宇宙船「オリオン」が飛行中に捉えた一枚。巨大な月の向こうに、小さな地球が隠れようとしている“地球の入り”だ。オリオンは、日本も参画する国際月探査計画「アルテミス」で使われる有人船。その無人試験飛行中に撮影されたもので、NASAが先月24日、公式サイトで紹介した。

 この時の飛行「アルテミス1」でオリオンは、有人用に開発された宇宙船として地球からの最長距離となる、40万キロ超に到達したという。続く「アルテミス2」はアポロ計画以来、実に53年ぶりの有人月周回飛行で、来月にも米国とカナダの計4人が出発する予定だ。彼らもこんな光景を眺めるのだろうか。

 月が手前にあるために遠くの地球が小さく見えることは、誰にも分かる。しかしこうして見ると、私たちの故郷のはかなさと、それを協調して守ることの大切さに、改めて思いが至る。

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「命をつなぐ」を掲げ、災害関連死の減少を 国交省、南海トラフ地震対策計画を改定 https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20260203_n01/ Tue, 03 Feb 2026 05:43:50 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=newsflash&p=56162  国土交通省は1月16日、南海トラフ巨大地震の対策計画を改定し、建物崩壊や津波などによる直接死を減らす「命を守る」対策に加え、災害関連死も大幅に減らす「命をつなぐ」対策を重点的に進めると発表した。被災者が避難生活で体調を崩して亡くなる災害関連死をできる限り減らすため、支援物資の円滑な広域輸送体制の確保や自治体や民間事業者などとの連携を強化し、避難者の生活の質の向上を目指すとしている。

 政府は昨年3月に「死者29万人超」などとする新たな被害想定を公表、7月に「防災対策推進基本計画」を改定した。国交省は今回、これらを受けて改定対策計画をまとめた。

国土交通省の南海トラフ巨大地震対策計画(改定版)の表紙(国土交通省提供)
国土交通省の南海トラフ巨大地震対策計画(改定版)の表紙(国土交通省提供)
赤い線内が南海トラフ巨大地震の想定震源域(地震調査研究推進本部・地震調査委員会提供)
赤い線内が南海トラフ巨大地震の想定震源域(地震調査研究推進本部・地震調査委員会提供)

 対策計画は冒頭の章で「南海トラフ巨大地震による国家的な危機に備えるべく(中略)広域的見地や現地の現実感を重視しながら、国土交通省として総力を挙げて取り組むべきリアリティのある対策をまとめた」と強調した。

 昨年3月に改定された被害想定では、最大で約29万8000人の直接死と、最大で約5万2000人の災害関連死が出るとされた。対策計画では、まず直接死を減らすために「命を守る」ことを目指して、▽海岸堤防の耐震化▽住宅・建物の耐震化の徹底▽ライフラインの強靱(きょうじん)化▽津波避難に関する情報伝達の周知・徹底などを挙げた。

 また、災害関連死を減らして「命をつなぐ」ために、ライフラインの早期復旧体制の強化や、緊急災害対策派遣隊(TEC-FORCE)の拡充、避難者の生活環境整備などを進めるとした。生活環境整備の具体例として、▽支援物資の広域輸送の促進▽関係機関と連携した飲料水の確保▽生活用水や緊急時のトイレ洗浄用水など衛生環境の確保▽被災者向け住宅の供給体制の整備などを列挙している。


南海トラフ巨大地震では大きな津波が各地を襲い、深刻な被害をもたらす恐れがある(2011年3月11日、岩手県釜石市内で撮影。国土交通省・東北地方整備局震災伝承館提供)
南海トラフ巨大地震では大きな津波が各地を襲い、深刻な被害をもたらす恐れがある(2011年3月11日、岩手県釜石市内で撮影。国土交通省・東北地方整備局震災伝承館提供)
政府の南海トラフ巨大地震の被害想定では最大1230万人の避難者が出るとされる(2011年3月13日、仙台市内で撮影。国土交通省・東北地方整備局震災伝承館提供)
政府の南海トラフ巨大地震の被害想定では最大1230万人の避難者が出るとされる(2011年3月13日、仙台市内で撮影。国土交通省・東北地方整備局震災伝承館提供)

 対策計画の大きな柱となる応急活動計画では、「避難支援」として▽津波避難に関わるハザードマップの整備促進▽避難路・津波到達時間の情報周知▽緊急地震速報・津波警報の高精度化などを挙げた。また、「被災状況等の把握」「被災者の救命・救助」としては、▽「統合災害情報システム(DiMAPS)」を活用した初動情報収集・共有体制の強化▽災害対策用ヘリ・人工衛星・レーザー測量技術の活用▽全国からのTEC-FORCEの活用▽災害対応力がある巡視船艇・航空機の整備などを列挙している。

 政府の被害想定では、山間部や沿岸部の広い範囲で約2700の集落が孤立し、半島や離島も孤立する恐れがあるとされた。このため今回の対策計画では、対象となる自治体や現地の警察・消防、自衛隊といった関係機関と国交省が対策を検討するなど、事前に孤立集落への対応支援を進めることになった。

 このほか、「複合災害対策」については、大雨・土砂災害、火山噴火、原子力災害など、災害ごとに求められる対策が大きく異なるため、災害の種類ごとにきめ細かい対策を充実させることを挙げている。

国土交通省の改定南海トラフ巨大地震対策計画の概要(国土交通省提供)
国土交通省の改定南海トラフ巨大地震対策計画の概要(国土交通省提供)

 政府が昨年7月に改定した防災対策推進基本計画では、対策推進地域として6県の16市町村を追加指定し、723市町村に拡大した。最大29万8000人と想定される死者数を今後10年間で「8割減らす」との目標を設定したほか、最大想定235万棟の全壊・焼失棟数も改定前と同様に半減を目指している。

 この基本計画では、高潮・津波対策としての海岸堤防などの整備率は2023年度の42%から30年度に50%に引き上げ、23年度に90%だった住宅耐震化率を35年度に「耐震性の不十分なものをおおむね解消させる」という目標を掲げた。

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宇宙に巣を張る赤いクモ? 惑星状星雲「NGC6537」 https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20260129_n01/ Thu, 29 Jan 2026 07:11:38 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=newsflash&p=56130
惑星状星雲NGC6537(欧州宇宙機関・ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡、NASA、カナダ宇宙庁、J.H.カストナー氏=米ロチェスター工科大学=提供)
惑星状星雲NGC6537(欧州宇宙機関・ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡、NASA、カナダ宇宙庁、J.H.カストナー氏=米ロチェスター工科大学=提供)

 真ん中のひときわ明るい星。そこから、一対の楕円(だえん)状のガスが、正反対の方向に延びている。いて座にある惑星状星雲「NGC6537」だ。「赤いクモ星雲」とも呼ばれる通り、一匹のクモのように見える。宇宙に巣を張り、輝く星々を捕らえて餌にしているのだろうか。

 惑星状星雲は、年老いて死にゆく星が赤色巨星から白色矮星(わいせい)へと変わりつつある天体だ。今回の画像は米欧とカナダのジェームズウェッブ宇宙望遠鏡が近赤外線によって捉え、米航空宇宙局(NASA)などが新たに公開した。これまでで最も精細な姿で、水素分子の放つ光がクモの足に見える。

 ジェームズウェッブの名は、1960年代にアポロ計画などを指揮したNASAの2代目長官にちなむ。ウェッブのつづりは「Webb」で、クモの巣の「web」と少し違うが…クモの巣がクモを捕らえたという、しゃれた解釈もできそうだ。

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