ニュース - 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」 https://scienceportal.jst.go.jp Wed, 07 Jan 2026 04:28:48 +0000 ja hourly 1 「ナイスステップな研究者2025」に気鋭10人、多彩な分野で成果 https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20260107_n01/ Wed, 07 Jan 2026 04:28:40 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=newsflash&p=55954  文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP、ナイステップ)は、科学技術イノベーションのさまざまな分野で活躍している研究者10人を「ナイスステップな研究者2025」に選定した。社会的課題に関わる研究に取り組むほか、広く成果を還元している人物を選んだという。

「ナイスステップな研究者2025」に選ばれた釜江氏の研究から。(左)理想的な大陸を配置した数値実験により雲や大気循環の応答を調べる(右)中緯度で観測される特徴的な水蒸気輸送システム」(筑波大学提供)
「ナイスステップな研究者2025」に選ばれた釜江氏の研究から。(左)理想的な大陸を配置した数値実験により雲や大気循環の応答を調べる(右)中緯度で観測される特徴的な水蒸気輸送システム」(筑波大学提供)

 専門家約1600人への調査などにより、最近の活躍が注目される研究者を抽出。研究実績に加え、人文・社会科学との融合などの新興・融合領域を含めた最先端の画期的な研究内容、産学連携・イノベーション、国際的な研究活動の展開などの観点から、NISTEPの所内審査を経て10人が決まった。

 活躍が期待される若手研究者を中心に、気象や材料科学、AI(人工知能)、ライフサイエンス、民俗学などの分野の人材が選出された。

 「ナイスステップな研究者」は2005年に開始。過去には、後にノーベル賞を受賞した山中伸弥氏や天野浩氏も選ばれている。

     ◇

 選定された研究者と研究内容は次の通り。敬称略。所属は公表の先月26日時点。

 釜江陽一=筑波大学生命環境系准教授「雲と大気循環を基軸とした気候感度および極端現象の研究」

 川越吉晃=東北大学グリーン未来創造機構グリーンクロステック研究センター准教授「マルチスケール解析で拓く航空機材料・設計・運用の学際研究」

 塩足亮隼=独マックスプランク協会フリッツハーバー研究所物理化学科グループリーダー「ナノスケールを超越した極小の光による単一分子の化学」

 新津藍=理化学研究所生命医科学研究センターチームディレクター「タンパク質をつくり細胞膜のダイナミクスを理解する」

 橋本雄太=国立歴史民俗博物館研究部准教授「みんなで翻刻:古文書資料のシチズンサイエンス」

 日永田智絵=奈良先端科学技術大学院大学助教「心に寄り添うAIロボットに向けた感情モデルの開発」

 姫岡優介=東京大学大学院理学系研究科生物普遍性研究機構助教「生命と非生命の差異を明らかにするための理論研究」

 深見開=東北大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻准教授「非線形機械学習を用いて非定常航空流体解のデータ科学的ブレイクスルーを狙う」

 八木隆一郎=コルバトヘルスCEO、慶応大学病院臨床研究推進センター特任助教「心血管疾患の早期発見の革新を目指して―心電図・心エコーAIの研究開発とその実装―」

 山本慎也=米ベイラー医科大学分子人類遺伝学部准教授「ショウジョウバエを用いた希少未診断疾患研究」

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互助共助コミュニティ型資源回収ステーション利用で介護リスク15%低下 千葉大 https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20260106_n01/ Tue, 06 Jan 2026 06:20:42 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=newsflash&p=55949  高齢者が互助共助コミュニティ型資源回収ステーションの拠点を利用すると、要介護・要支援になるリスクが15%低下することを、千葉大学などの研究グループが実証した。奈良と福岡の3カ所で、資源回収ステーションに隣接したカフェや販売所、畑を設けることで男女ともに利用者を確保できた。地域包括ケアの推進や介護予防策への貢献が期待されるとしており、今後は拠点の利用頻度や、併設施設での役割による違いを調べたいという。

 千葉大学予防医学センターの阿部紀之特任研究員(社会疫学・予防医学)らは、奈良県生駒市の1地区と福岡県大刀洗町(たちあらいまち)の2地区に設置された拠点の利用者に対し、利用前後で「約3年以内に要介護・要支援になるかどうか」を調べるために、運動機能や栄養状態を観察する尺度を用いて、65歳以上の高齢者に対する郵送調査を2020年から22年にかけて行った。

 拠点には単に資源(ごみ)出しの役目だけでなく、小規模農園の運営やそこで収穫した作物の共有・販売、カフェ、ケーキの販売所を設け、体を動かしたり、他人と話したりといった社会活動ができるコミュニティの場を提供した。これにより、「高齢者のコミュニティに関する研究は女性の参加率が高くなる傾向にある」「コミュニティに参加する人は元々健康意識が高い」という研究上の偏りを解消するように努めた。

奈良と福岡の3カ所で行われた拠点の社会実証の様子。資源(ごみ)出しの際に、高齢者が集い、話をしたり、社会的な役割を担ったりする(千葉大学提供)
奈良と福岡の3カ所で行われた拠点の社会実証の様子。資源(ごみ)出しの際に、高齢者が集い、話をしたり、社会的な役割を担ったりする(千葉大学提供)

 対象となった2554人中、郵送式のアンケートに同意して回答した973人について、拠点を利用した場合の要介護・要支援リスクを、しなかった場合と比較した。973人中、男性は455人、女性は518人だった。

 拠点ができる1年前と、設置後にアンケートを取った結果、拠点を「1度でも利用した」と答えた高齢者は、「利用しなかった」という高齢者に比べて、「約3年以内に要介護・要支援になるリスク」が15%低下していた。また、拠点を利用した高齢者は、利用しなかった高齢者に比べ、外出機会や交流機会、地域活動に参加する機会が増えており、運動機能や社会性を保つような行動を取っていた。阿部研究員は「15%は予想より高かった。介護予防を意識した行動ではなく、拠点の利用によって介護予防効果が得られたのは驚いた」と話している。

拠点を利用することで、要介護・要支援になるリスクが低下していた(千葉大学提供)
拠点を利用することで、要介護・要支援になるリスクが低下していた(千葉大学提供)

 生駒市の拠点は徒歩で行けるが坂道が多く、大刀洗町の2カ所ある拠点はいずれも自家用車での利用が多かった。阿部研究員は理学療法士でもあり、「歩くほうが、運動負荷がかかって介護リスクを減らせるように思えるが、クルマでの来所者が多かった大刀洗町を含めた分析でも介護リスクが減ることを実証できた」と振り返った。

 阿部研究員は「資源(ごみ)出しのついでに、人が集まるところに立ち寄ることができれば、同様の効果があると思う。今後は、拠点を利用する頻度や、どのようなコミュニティであればより介護リスクを減らせるか、研究を続けたい」と話した。

 研究はアミタホールディングス、科学技術振興機構(JST)の産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム OPERAの助成を受けて行われた。成果は2025年10月15日に米国科学誌「プロスワン」に掲載され、同11月7日に千葉大学が発表した。

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国際卓越研究大学、2校目に東京科学大 京大も候補、東大は継続審査 https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20251224_n02/ Wed, 24 Dec 2025 05:01:28 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=newsflash&p=55883  文部科学省は、世界トップレベルの研究水準を目指す「国際卓越研究大学」の第2期の公募で、東京科学大学が選定されたと発表した。10兆円規模のファンド(基金)の運用益により支援する制度で、有識者会議が審査結果をまとめた。正式認定を経て支援を開始する。このほか京都大学を候補とし、最長1年かけて体制強化計画を改善して認定するとした。東京大学を継続審査とした。

東京科学大学=東京都千代田区

 初回公募で昨年11月に東北大学を認定したのに続き、第2期の公募を今年5月まで行った。初回に認定されなかった大学のうち、東京理科大を除く8校が再挑戦した。海外を含む識者や企業人11人からなるアドバイザリーボードが審査を進め、今月19日に文科省が結果を公表した。

 審査結果は、東京科学大の体制強化計画案に対し「研究分野・組織の壁を越える抜本的改革を目指し、執行部のリーダーシップの下、全学的に検討された計画」と評価。東京工業大と東京医科歯科大が昨年10月に統合して同大となった経緯から「統合を背景に医工連携の強力な推進を掲げた計画で、日本の新しい大学のモデルとなることが期待される。特に、臨床系教員の研究時間確保策は野心的」などとし、来年4月の計画開始が適当と判断した。初年度には百数十億円を助成する。

 京都大は「研究成果を社会展開につなげる仕組みや、世界レベルのスタートアップ企業創出につなげる意欲的な計画。新たな研究組織体制『デパートメント制』も、多様な視点での研究評価軸を設計し評価できる」などとする一方、「全学計画の策定や、全学のデパートメント制移行は途上」と指摘した。候補として最長1年間、計画を磨き上げた上で認定手続きに移るべきだとした。対応が不十分な場合、助成を減額する可能性があるという。

 東京大に対しては「極めて挑戦的な改革構想を掲げている」とする一方、「学内組織評価や資源配分の基準について、学内合意を経た上で実効性の確認が必要」「コンプライアンス(法令順守)上の問題の対応は、卓越大に求められる自律と責任あるガバナンス(統治)の構成要素として重要」などの意見をまとめた。最長1年間かけ審査を続けるとした。審査中にガバナンスに関わる新たな不祥事が生じれば、審査を打ち切るという。

 申請した大阪大、早稲田大、九州大、筑波大、名古屋大の5校は認定に至らなかったが「いずれも、初回公募時点から計画の水準が大きく向上した」と評価した。

 松本洋平文部科学相は19日の閣議後会見で「卓越大への支援を通じ、世界最高水準の研究大学の形成を着実に進めるとともに、地域の中核大学や特定分野に強みを持つ大学の研究力向上のための支援などを通じ、わが国全体の研究力の強化を図っていく」と述べた。

 海外トップレベルの大学が近年、豊富な資金を背景に研究力を高めているのに対し、国内では論文の質や量などの低下が指摘されている。こうした中、政府は大学に世界トップクラスの研究者の獲得、若手研究者の育成、研究者の研究時間確保のための負担軽減などが求められるとし、卓越大制度を創設した。ファンドは科学技術振興機構(JST)が2022年3月に運用を開始した。支援期間は最長25年。初回に認定した東北大への助成額は今年度が約154億円、来年度が169億円。第3期の公募を行うかは未定という。

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万引き対策、店員のあいさつは有効だがポスターや音は効果少ない 香川大 https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20251224_n01/ Wed, 24 Dec 2025 00:42:17 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=newsflash&p=55853  万引きを模した状況を作り出し、心理的にどのような対策が万引き防止に一番効果的か実験したところ、「店員のあいさつ」であることを香川大学の研究グループが明らかにした。警察庁の統計では2022年以降、万引きは増加傾向にある上に、検挙率は約7割と頭打ちで、社会的に大きな課題となっている。「窃盗犯罪防止のためには、店側が『いらっしゃいませ』や『こんにちは』など声かけのホスピタリティを持ち、サービスを良くしていくことだ」としている。

万引きは「死角」で起こり、高額な商品が持ち去られることが多いという。最近は米袋を持ち去る被害も多い
万引きは「死角」で起こり、高額な商品が持ち去られることが多いという。最近は米袋を持ち去る被害も多い

 香川大学教育学部の大久保智生教授(犯罪心理学・教育心理学)は、実際の店舗の協力を得て、擬似的な万引き状況を作って実験を行った。参加者の学生46人には「誰にも見つからないように、物を隠してもらう実験」と伝え、大久保教授が前もって購入して店頭に置いていた電池を、事前に渡したバッグ内に入れる行為を6回繰り返してもらった。

 その際、棚の陰から出てきた店員が「いらっしゃいませ」などとあいさつして声をかけたり、ピカピカと光が発生する装置、不安定な音やリラックスできる音が流れるスピーカー、「防犯カメラピント調整中」と書いたポスターや目のイラストが描かれたポスターが参加者の視覚や聴覚に入ったりするようにして、これらの各防犯対策をどのように思ったか、アンケートを取った。

店員のあいさつで、電池をバッグに入れることを躊躇した人が最も多かった(香川大学提供)
店員のあいさつで、電池をバッグに入れることを躊躇した人が最も多かった(香川大学提供)

 その結果、「店員のあいさつ」で電池をバッグに入れるのに「躊躇した」と答えたのが36人と、他の対策を大きく上回った。一方で、「防犯カメラピント調整中」のポスターで躊躇したのは1人しかいなかった。電池をバッグに入れる際の心理的な状況を尋ねたところ、やはり「店員のあいさつ」が不安や混乱を有意に引き起こしていた。

ポスターや光、音による注意喚起は、店員のあいさつに比べると混乱や緊張といった心理状況にならなかった(香川大学提供)
ポスターや光、音による注意喚起は、店員のあいさつに比べると混乱や緊張といった心理状況にならなかった(香川大学提供)

 大久保教授によると、万引きは発見するのが店員や私服警備員といったいわゆる「万引きGメン」のため、警察の犯罪対策が最も遅れている分野の一つだという。そして、窃盗を契機に他の犯罪を起こす人も多いため、万引き対策は治安の維持のために非常に大切だとしている。

 近年、セルフレジやICタグを読み取るような、店員がいない会計システムを採り入れる店も多い。だが、大久保教授による他の研究では「テクノロジーが進歩しても万引きは防げていない。万引きする人は様々な手法でこれらの技術をかいくぐっている。AIを駆使しても現在のところ、それだけで万引きは防げないということが分かっている」という。

 万引きは店の全ての場所で起こるわけではなく、「ホットスポット」と呼ばれる人の目がない死角で起こるため、「ホットスポットに店員を配置したり、人手不足なら、動くロボットを配置したりするのが効果的だろう。もしくは、人の目をつくるために必ず客がホットスポットを通らないといけないような通路にするといい」と指南する。

 今回の研究で「見られている」感覚が万引きを抑止することが分かったため、大久保教授は「例えば、セルフレジでもカゴを移動させるのは店員が行うなどして、声かけの機会を増やすホスピタリティが店側にとって有効な対策」とした。今後は、ロボットによる声かけが抑制に効果的か調べるという。

 研究は株式会社IC(東京都港区)、東京海上日動火災保険、香川県警の協力を得て行った。成果は2026年3月に筑波大学で開かれる日本環境心理学会で発表する。

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「ボールミル」のボールは楕円体が最適、球形より粉砕効率10%高く 産総研 https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20251222_n01/ Mon, 22 Dec 2025 05:43:22 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=newsflash&p=55833  粉砕装置「ボールミル」において粉砕に用いるボールは、伝統的に使われている球形ではなく、楕円体を軽く押しつぶしたようないびつな形状だと粉砕効率が約10%高まることを産業技術総合研究所(産総研)が明らかにした。産業現場での実用性が確認できれば、鉱石から有用な鉱物を取り出す選鉱やセメント製造などで、これまで使われていた球形のボールに取って代わる可能性がある。

球面調和関数や接触エリア解析を駆使して、ボールミルにおいて粉砕対象物を効率的に挟み込める形状を設計した(産総研プレスリリースより)
球面調和関数や接触エリア解析を駆使して、ボールミルにおいて粉砕対象物を効率的に挟み込める形状を設計した(産総研プレスリリースより)

 ボールミルとは、回転する円筒内に硬いボールと材料を入れ、衝撃や摩擦によって材料の微粉化・混合を行う装置。鉱石やセラミックス、顔料、化学原料などの粉砕に広く用いられるが、円筒を回すなど投入するエネルギーの大部分が熱や振動として失われてしまう。粉砕効率の向上のために、ボールを弾丸に似た形などにするといった提案もこれまでにあった。しかし、再現実験で球を上回る結果が得られないという報告もあり、ボールには球形を使うことが100年以上にわたり伝統的に続いている。

 産総研の上田高生主任研究員(資源工学)は、対象物を挟み込んで粉砕する接触エリアが大きいボールであれば粉砕効率が上がると考えた。フーリエ級数の3次元版に相当する「球面調和関数」を用いて穴のない3次元形状を多数作製。極端にトゲがあって摩耗が起きやすいものなど、実用できない形状は除いた。

 残った形状5500個について、それぞれ1万回ランダムに回転させて接触する部分を測るといった計算をし、接触エリアの平均値を出した。各形状の平均値を比較したところ、楕円体を軽く非対称につぶしたようなそら豆っぽい形状の接触エリアが最も大きかった。

球形のボール(媒体)では接触エリアが小さい。接触エリアが大きいボールであれば多くの粉砕対象物を挟み込むことができると考えられる(産総研プレスリリースより)
球形のボール(媒体)では接触エリアが小さい。接触エリアが大きいボールであれば多くの粉砕対象物を挟み込むことができると考えられる(産総研プレスリリースより)

 数値解析で最適な形状が、実際に球形より効率良い破砕をできるかどうかについて、アルミナを削って球形とそら豆っぽいボール(OPTIPSE)を10個ずつ作り、直径10センチ、奥行き12センチの小型ミルで粉砕実験を行った。

アルミナで作ったボール。球形(左)とそら豆っぽい形状のOPTIPSE(産総研プレスリリースより)
アルミナで作ったボール。球形(左)とそら豆っぽい形状のOPTIPSE(産総研プレスリリースより)

 実験ではミルの回転速度や時間などの条件をそろえ、珪砂や石灰石約80グラムずつをそれぞれのボールで砕いた。粉砕後に粒径90マイクロメートル(マイクロは100万分の1)以下の微小粒子を集めて重さを計測。OPTIPSEは球形の時と比べて微小粒子の重量比率が7~16%増えており、粉砕効率がよいと判断できたという。

直径10センチ奥行き12センチの磁製ミル(容量約900ミリリットル)で粉砕実験をすると、粉砕の効率を示す微小粒子の重量比率が7~16%増加した(産総研プレスリリースより)
直径10センチ奥行き12センチの磁製ミル(容量約900ミリリットル)で粉砕実験をすると、粉砕の効率を示す微小粒子の重量比率が7~16%増加した(産総研プレスリリースより)

 ボールミル内の状況をシミュレーションすると、粉砕対象物との接触回数が多く、かつ大きな衝撃力が生じていることが分かった。「そら豆まではへしゃげていないが、転がしてもまっすぐ進まないいびつな形状が関わっていると考えられる」と上田主任研究員は話す。

 上田主任研究員は今後、ボールを実際に使用する鉄で作製しても同様の効果が得られるかなどを検証し、実スケールでの実証実験を目指すという。成果は11月8日に国際誌「ミネラルズエンジニアリング」の電子版に掲載された。

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富士山にできる面白い雲たち、できる条件のナゾ解いた 筑波大など https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20251218_n01/ Thu, 18 Dec 2025 05:52:25 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=newsflash&p=55819  笠雲、つるし雲、旗雲――富士山の周りには、多彩な面白い形の雲ができることが知られている。それらができる条件を明らかにしたと、筑波大学などの研究グループが発表した。山を取り囲むカメラで長期に観察し、観測データと合わせて詳しく調べた。ほぼ経験的に語られるにとどまっていたこれらの雲の性質を、初めて科学的に検証したという。

 日本一の霊峰を飾るこうした雲は見応えがあり、親しまれている。それぞれの形ができる大まかな仕組みは考えられたものの、十分に解明されてこなかった。そこで研究グループは2019年1月~21年12月の3年間、富士山を囲む実質7台のライブカメラで雲を観察。また気象庁の観測データを基に、富士山の風上側の700ヘクトパスカルの高度、つまり概ね上空3キロの風向と風速を調べた。高度別の風速なども検証した。

 その結果、それぞれの雲で次の特徴を見いだした。(1)山が笠を被ったように見える「笠雲」は、主に暖かい季節の朝、強めの西南西の風が吹き、山頂付近か、より高い所に湿った空気の層がある時に見られる。

富士山にできた笠雲。(左)接地笠(右)離れ笠(筑波大学、情報通信研究機構提供)
富士山にできた笠雲。(左)接地笠(右)離れ笠(筑波大学、情報通信研究機構提供)

 (2)空からつるされたように見える「つるし雲」は南西の風で、湿った空気の層がやや高い場所にあり、風速の高度差が笠雲の時より小さめの時に生じる傾向がある。できる仕組みは2説あったが、風が山を越えて吹く時に起きる大気の上下振動「山岳波」が働いていることが分かった。夏に西南西の風が吹き、風速の高度差が小さいために生じた山岳波が、湿った空気を持ち上げて雲ができる。従来のもう一つの説に関わる、風が山を通り過ぎる際に左右の二手に分かれ、その後に再び合流する効果は小さいとみられる。

つるし雲。(左)楕円型(右)翼型(筑波大学、情報通信研究機構提供)
つるし雲。(左)楕円型(右)翼型(筑波大学、情報通信研究機構提供)

 (3)旗がなびいているように見える「旗雲」は、寒い季節の、乾燥した北西の風が吹く日中に多くできる。風は山頂より低い所で弱く、山頂付近で急に強まり、上空で一層強くなっている。つるし雲とは逆に、山岳波が起きにくい条件だ。多くは、冬に西北西の風が山を通り過ぎて合流する際に発生する上昇気流が、湿った空気を持ち上げてできると考えられる。

旗雲。(左)馬のたてがみ型(右)積雲列型(筑波大学、情報通信研究機構提供)
旗雲。(左)馬のたてがみ型(右)積雲列型(筑波大学、情報通信研究機構提供)

 笠雲では山頂に接する「接地笠」、つるし雲は「楕円(だえん)型」、旗雲は「馬のたてがみ型」が、それぞれ主要なタイプであることも分かった。

 富士山に限らず、岩木山(青森県)や桜島(鹿児島県)といった、孤立してそびえる円錐(えんすい)形の山でもこうした雲ができることがあるという。

 風などの条件の微妙な違いが、多彩な雲を作り分けていることが興味深い。研究グループの筑波大学計算科学研究センターの日下博幸教授(気象学)は「これは役に立つかどうかより、面白いからやっている研究だ。さらに詳しく検証したい。風向や風速、湿度の高度分布、大気の境界層の構造といった主要因の、具体的な役割を調べたく、数値シミュレーションを進めている」と話している。

 研究グループは筑波大学、情報通信研究機構などで構成。成果は英国王立気象学会の専門誌「ウェザー」電子版に10月30日に掲載され、筑波大学が先月25日に発表した。

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コーヒーにミルク? 火星の冷たい「極冠」に熱い視線 https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20251216_n01/ Tue, 16 Dec 2025 06:52:05 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=newsflash&p=55813
欧州の探査機マーズエクスプレスが捉えた火星の南極の極冠(欧州宇宙機関、ドイツ航空宇宙センター、ドイツ・ベルリン自由大学提供。CC BY-SA 3.0 IGO)
欧州の探査機マーズエクスプレスが捉えた火星の南極の極冠(欧州宇宙機関、ドイツ航空宇宙センター、ドイツ・ベルリン自由大学提供。CC BY-SA 3.0 IGO)

 コーヒーにミルクをポタリ…にも見えるこの写真は、火星の南極にあるドライアイスでできた「極冠」を捉えている。欧州の探査機マーズエクスプレスが2015年に撮影した。3年後、この探査機のレーダー観測を基に、科学者はこの下に液体の水の湖があるとの見方を示した。火星に生命がいるかどうかなどをめぐり、再び議論が高まった。

 これに対し、米航空宇宙局(NASA)は先月25日、米探査機マーズ・リコネサンス・オービターの観測により、湖とみられたものは岩石やチリの層だろうと発表した。特別な技術で、レーダーの信号を地下深くまで到達させて調べた。関連する論文が同17日、米地球物理学連合の専門誌ジオフィジカル・リサーチ・レターズに掲載された。冷たい極冠の謎を、科学者の熱い視線がいつ解くのだろう。

 さすがにタコ型の火星人はいないにせよ、微生物のようなものはいるのか。つい9月にも生命の痕跡の新たな「有力証拠」が発表されたばかり。太陽系内では木星や土星の衛星にも熱い視線が注がれている。科学の地道な取り組みが続く。

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千葉県チーム優勝、第13回科学の甲子園ジュニア 姫路で激闘 https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20251215_n01/ Mon, 15 Dec 2025 06:00:53 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=newsflash&p=55799  全国の中学生が理科や数学などの知識や活用力を駆使して競う「第13回科学の甲子園ジュニア全国大会」が兵庫県姫路市で開かれ、千葉県代表チーム(市川学園市川中学校)が優勝した。主催した科学技術振興機構(JST)が14日発表した。

優勝した千葉県代表チーム=14日、兵庫県姫路市
優勝した千葉県代表チーム=14日、兵庫県姫路市

 予選である都道府県大会には計2万7474人の生徒が参加登録。各都道府県で選出された6人ずつが代表チームを構成し、計282人が全国大会に臨んだ。12日に開会式、13日に競技を実施。理科や数学などの複数分野に関する知識と活用能力を駆使し、さまざまな課題に挑戦した。筆記競技と2種目の実技競技の得点を合計した総合成績により、優勝は千葉県、2位は神奈川県、3位は愛知県代表チームに決まった。

 共催する兵庫県教育委員会の大久保拓哉教育次長は14日の表彰式で「さまざまな垣根を越えて集まった仲間が助け合い、励まし合いながら答えを導き出す経験こそが、この大会の醍醐味であり魅力。喜びや悲しさをばねに、さらに科学への興味関心を高め、これからも探求心を発揮し、さまざまなことに挑戦されることを期待している」と呼びかけた。

 来賓の松本洋平文部科学相は「チームの仲間と切磋琢磨(せっさたくま)しながら競技に取り組んできた経験や、全国の科学好きの仲間との交流を通じて得たつながりは、将来、皆さんがさまざまな分野で活躍される際の大きな支えになる」と映像であいさつした。

 2020年12月に予定された第8回が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受け中止。翌年は各都道府県会場で筆記競技のみ実施した。22年の無観客実地開催を経て、23年にコロナ禍前の通常プログラムに戻った。今年は初めて会場となった兵庫県立武道館に、多くの観客が来場。大会の模様はネットで中継された。

 大会は高校生を対象とした「科学の甲子園」の中学生版。科学と生活のつながりに気付き、科学を学ぶことの意義や楽しさを実感できる場を提供しようと2013年に創設された。第14回は来年12月中旬、姫路市で開かれる。

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ふたご座流星群、14日ピーク 月明かりの影響小さく好条件 https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20251210_n01/ Wed, 10 Dec 2025 06:09:59 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=newsflash&p=55727  流星(流れ星)が特に多く現れる三大流星群のうち、「ふたご座流星群」のピークが14日に迫っている。毎年起こる流星群の一つだが、今年は月が昇るのが未明で影響も小さく、好条件という。天気さえ良ければ防寒や安全、マナーに留意し、天体ショーの好機を生かしたい。

ふたご座流星群=2004年12月14日、茨城県常陸大宮市(国立天文台提供)
ふたご座流星群=2004年12月14日、茨城県常陸大宮市(国立天文台提供)

 国立天文台によると、発生のピーク「極大」は14日午後5時頃と予想される。最も多く見られるのは14日夜から15日明け方にかけて。空の暗い場所で、14日午後9時頃に1時間あたり30個と予想される。東京の場合、同11時~翌15日午前2時頃には同50個程度が期待される。その後は下弦を過ぎた、つまり半月よりやや細い月が昇ってくるが、月明かりの影響はさほど大きくならない。明け方にかけて同35~45個程度が予想される。前日の13日夜から14日明け方にも、多くなりそうだ。実際にどの程度観察できるかは場所や気象条件、熟練度、視力などによる。

彗星の軌道に帯状に残されたチリに地球がさしかかって、流星群が起こる(模式図、国立天文台提供)
彗星の軌道に帯状に残されたチリに地球がさしかかって、流星群が起こる(模式図、国立天文台提供)

 流星は、宇宙空間のチリが地球の大気圏に突入して燃え尽きる際、成分が光って夜空に筋を描く現象。彗星(すいせい=ほうき星)の通り道に多くのチリが帯状に残されており、地球が毎年そこにさしかかる際に大気に飛び込んで、流星が多発する流星群が起こる。地球がチリの帯を通り、流星群が起こる時期は毎年決まっている。チリを残した天体「母天体」はふたご座流星群の場合、活動的小惑星「フェートン」だ。

 活動的小惑星は小惑星に分類されるものの、彗星のようにチリを活発に放出する小天体。2021年には米国の研究グループが、フェートンが放出するチリの正体はナトリウムとみられるとする研究成果を公表した。日本はフェートンを探査する技術実証機「デスティニープラス(DESTINY+)」を計画。このナトリウムの謎にも迫るという。打ち上げは当初は昨年度とされ、後に今年度に延期された。さらに、搭載する予定だった小型ロケット「イプシロンS」の開発難航を受け、ロケットを大型の「H3」に変更し、28年度に延期することが昨年12月に決まっている。

気化したナトリウムを放出するフェートンの想像図(NASA、米カリフォルニア工科大学提供)
気化したナトリウムを放出するフェートンの想像図(NASA、米カリフォルニア工科大学提供)

 大小100以上の流星群のうち、特に流星が多発するものは「三大流星群」と呼ばれる。中でもふたご座流星群は、毎年ほぼ安定して多く出現するとされる。ただし極大の時刻と月明かりとの兼ね合いなどで、年により条件は変わる。

三大流星群。極大時の数は年により異なる(国立天文台などの資料を基に作成)
三大流星群。極大時の数は年により異なる(国立天文台などの資料を基に作成)

 流星群は空のどこにでも現れうるが、光の筋をさかのぼって延長すると一点の「放射点」に集まる。その向こうの宇宙空間から降ってくるチリが、地上から観察すると放射状に飛び出すように見えるためだ。ふたご座流星群の放射点はふたご座付近にある。時間により、放射点の高度が高いほど流星の数が増える。今回は木星がマイナス2.6等級でふたご座付近にあり、放射点を把握しやすい。

 一つ一つの流星がいつ、空のどこに出るかは全く予測できない。なるべく空の開けた場所で、肉眼で観察する。シートを敷いて寝転ぶと楽だが、利用できる安全な場所であることを確かめる必要がある。

ふたご座流星群の解説図(国立天文台提供)
ふたご座流星群の解説図(国立天文台提供)
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鮮やかな黄色い帯の新種ハゼ…あの人気キャラ釣り上げた!? https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20251203_n01/ Wed, 03 Dec 2025 04:43:20 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=newsflash&p=55679
新種「エレキハゼ(Vanderhorstia supersaiyan)」(平坂寛氏提供)
新種「エレキハゼ(Vanderhorstia supersaiyan)」(平坂寛氏提供)

 ヒレに鮮やかな黄色い帯。実にカッコよく、かわいらしくもある見慣れないハゼを、生物系ライターの平坂寛さんが釣り上げた。場所は沖縄県・石垣島沖の、わずかな光が届く海域「トワイライトゾーン」。母校の琉球大学で同期だった小枝圭太・同大助教に知らせると「ヤツシハゼ属の新種では?」。研究の結果、他の特徴もあり新種と判明した。

 ヒレの模様が人気漫画「ドラゴンボール」のキャラクターを思い起こさせるとして、その名をヒントに「Vanderhorstia supersaiyan(バンダーホルスティア・スーパーサイヤン)」と命名。標準和名は、体から放電するように見える模様をもとに「エレキハゼ」を提唱した。

 こんなに面白い姿の魚が、発見されていなかったなんて意外だ。「沖縄のトワイライトゾーンに、まだまだ未発見の未記載種や希少種が多くいる可能性が高い」と研究グループ。

 同大と黒潮生物研究所で研究グループを構成。成果は日本魚類学会の英文誌「イクチオロジカルリサーチ」に先月27日に掲載された。研究は笹川平和財団オーシャンショット助成事業、日本学術振興会科学研究費助成事業(科研費)、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業の支援を受けた。

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