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「ボールミル」のボールは楕円体が最適、球形より粉砕効率10%高く 産総研

2025.12.22

 粉砕装置「ボールミル」において粉砕に用いるボールは、伝統的に使われている球形ではなく、楕円体を軽く押しつぶしたようないびつな形状だと粉砕効率が約10%高まることを産業技術総合研究所(産総研)が明らかにした。産業現場での実用性が確認できれば、鉱石から有用な鉱物を取り出す選鉱やセメント製造などで、これまで使われていた球形のボールに取って代わる可能性がある。

球面調和関数や接触エリア解析を駆使して、ボールミルにおいて粉砕対象物を効率的に挟み込める形状を設計した(産総研プレスリリースより)
球面調和関数や接触エリア解析を駆使して、ボールミルにおいて粉砕対象物を効率的に挟み込める形状を設計した(産総研プレスリリースより)

 ボールミルとは、回転する円筒内に硬いボールと材料を入れ、衝撃や摩擦によって材料の微粉化・混合を行う装置。鉱石やセラミックス、顔料、化学原料などの粉砕に広く用いられるが、円筒を回すなど投入するエネルギーの大部分が熱や振動として失われてしまう。粉砕効率の向上のために、ボールを弾丸に似た形などにするといった提案もこれまでにあった。しかし、再現実験で球を上回る結果が得られないという報告もあり、ボールには球形を使うことが100年以上にわたり伝統的に続いている。

 産総研の上田高生主任研究員(資源工学)は、対象物を挟み込んで粉砕する接触エリアが大きいボールであれば粉砕効率が上がると考えた。フーリエ級数の3次元版に相当する「球面調和関数」を用いて穴のない3次元形状を多数作製。極端にトゲがあって摩耗が起きやすいものなど、実用できない形状は除いた。

 残った形状5500個について、それぞれ1万回ランダムに回転させて接触する部分を測るといった計算をし、接触エリアの平均値を出した。各形状の平均値を比較したところ、楕円体を軽く非対称につぶしたようなそら豆っぽい形状の接触エリアが最も大きかった。

球形のボール(媒体)では接触エリアが小さい。接触エリアが大きいボールであれば多くの粉砕対象物を挟み込むことができると考えられる(産総研プレスリリースより)
球形のボール(媒体)では接触エリアが小さい。接触エリアが大きいボールであれば多くの粉砕対象物を挟み込むことができると考えられる(産総研プレスリリースより)

 数値解析で最適な形状が、実際に球形より効率良い破砕をできるかどうかについて、アルミナを削って球形とそら豆っぽいボール(OPTIPSE)を10個ずつ作り、直径10センチ、奥行き12センチの小型ミルで粉砕実験を行った。

アルミナで作ったボール。球形(左)とそら豆っぽい形状のOPTIPSE(産総研プレスリリースより)
アルミナで作ったボール。球形(左)とそら豆っぽい形状のOPTIPSE(産総研プレスリリースより)

 実験ではミルの回転速度や時間などの条件をそろえ、珪砂や石灰石約80グラムずつをそれぞれのボールで砕いた。粉砕後に粒径90マイクロメートル(マイクロは100万分の1)以下の微小粒子を集めて重さを計測。OPTIPSEは球形の時と比べて微小粒子の重量比率が7~16%増えており、粉砕効率がよいと判断できたという。

直径10センチ奥行き12センチの磁製ミル(容量約900ミリリットル)で粉砕実験をすると、粉砕の効率を示す微小粒子の重量比率が7~16%増加した(産総研プレスリリースより)
直径10センチ奥行き12センチの磁製ミル(容量約900ミリリットル)で粉砕実験をすると、粉砕の効率を示す微小粒子の重量比率が7~16%増加した(産総研プレスリリースより)

 ボールミル内の状況をシミュレーションすると、粉砕対象物との接触回数が多く、かつ大きな衝撃力が生じていることが分かった。「そら豆まではへしゃげていないが、転がしてもまっすぐ進まないいびつな形状が関わっていると考えられる」と上田主任研究員は話す。

 上田主任研究員は今後、ボールを実際に使用する鉄で作製しても同様の効果が得られるかなどを検証し、実スケールでの実証実験を目指すという。成果は11月8日に国際誌「ミネラルズエンジニアリング」の電子版に掲載された。

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