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原子力安全委防災指針見直し案の意味するもの

掲載日:2011年10月21日

原子力安全委員会のワーキンググループが20日、「原子力発電所に係わる防災対策を重点的に充実すべき地域に関する考え方」を公表した(2011年10月21日ニュース「原子力安全委が原発事故防災対策区域見直し案公表」参照)。

現行の防災指針を大幅に変更する必要を示したものだが、他方、この文書から、原子力安全委員会メンバーをはじめとする原子力発電所の安全に大きな責任を持つ当事者、関係者が、大量の放射性物質を環境に放出するような事故について実際にはほとんどあり得ないと考えていたという事実も、あらためて読み取ることができそうだ。

文書には、「東京電力福島第一、第二発電所の事故から得られた教訓等について」という1ページの付属資料が付いている。その中に「使用済み燃料プールについて、冷却が行われないことにより、大きな事故につながる可能性があるとの問題点が顕在化した」という記述がある。これは「使用済み燃料プールが冷却できなくなる事態は、これまでほとんど考慮されていなかった」ということを意味しているといってもよいのではないか。

また、避難指示が順次拡大され、結果的に発電所の近くから段階的に避難が実施されたことに触れた個所では「情報伝達等の問題が指摘されている」とさらりと記されている。これは、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による放射性物質拡散予測図が事故発生から12日間、公表されなかった失態を含んでいると思われる。SPEEDIを管轄する文部科学省の中川正春大臣は19日、日本記者クラブの記者会見で「すぐに公表していれば、(放射線量の高い)地域の人たちもっと早く逃げられたということもあったと思う」と反省の意を表した。

中川文部科学相によると、放射性物質が放出された直後、モニターがこわれていたなどから放出量を知る精度の高いデータはなかったが、推測値と実際の気象データなどをSPEEDIに入れて放射性物質拡散状況を算出した。このデータを原子力安全・保安院、原子力安全委員会に届けたが、原子力安全・保安院、原子力安全委員会の判断で公表されなかった。こうした経緯を説明した後で、中川文部科学相は「推測値によるデータでも公表してもよかったのではないかと考えている」と語っている。

SPEEDIによる放射性物質拡散図の発表が遅れたことに対しては、原子力安全委員会からこれまで詳細な経緯と明確な反省の意は明らかにされていない。

また、「東京電力福島第一、第二発電所の事故から得られた教訓等について」で現行の防災指針にある屋内退避が短期間を想定していることに触れている個所では「20-30キロの地域では、屋内退避の期間が約1カ月(3月15日-4月10日)となった」と記されている。屋内退避措置が、指針の想定とは全く異なる形で実施されたことを認めたものといえそうだ。

さらに「放射性ヨウ素と放射性セシウムのそれぞれの特性、健康への影響が異なるため、これらを踏まえた対策を採る必要がある」という記述もある。放射性物質が放出された直後に素早い対応が必要な甲状腺被ばく防護策、中長期的な対策を迫られる放射性セシウムに対する防護措置のどちらもきちんと考えられていなかった事実を認めたものといえるのではないか。

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