レビュー

日本に寄付文化は根付くか

2011.01.31

 菅首相が24日の施政方針演説の中で「新しい公共」の推進策として、認定NPO法人など「新しい公共」の担い手に寄付した場合、税額控除の対象とする新しい制度を来年度から導入することを明らかにした。

 これまでできなかったということは、日本社会にそれを阻んできた何かがあったということだろう。昨年6月に閣議決定された「新成長戦略」に次のような記述がある。

 「行政が独占してきた『公』を企業、NPO 等に開き、国民が積極的に公に参画することを重視する。このため、行政による直轄事業を見直し、企業、NPO 等の参画を認める事業、民間資金等活用事業や公共サービス改革を進める事業を重視する」

 これによって「国民が決める社会」の実現を目指すということだが、具体的にどんな取り組みが検討されてきたのか。内閣府に設けられた「『新しい公共』推進会議」は、昨年11月「寄付税制見直しの早期実現」を提言している。「認定NPO法人について、所得控除との選択制で税額控除方式を導入し、税額控除の割合は寄付金の50%(所得税額の25%を上限)とする。公益社団・財団法人、学校法人、社会福祉法人などについても、認定NPO法人と同じような税額控除方式を導入する。2011年1月から所得税の税額控除を適用する」というものだ。

 菅首相が来年度からの導入を明言した新制度は、この提言を受けたもので、税額控除制度とともに認定NPO法人の認定基準も大幅に緩和するとしている。3,000円以上の寄付者が100人以上あればよいという基準を新たに導入し、これまでの基準(経常収入に占める寄付などの割合が5分の1以上)とどちらかに合致すれば認定されるというものだ。

 こうした政府の動きに呼応し、昨年12月、日本ファンドレイジング協会が日本で初めてという「寄付白書2010 GIVING JAPAN2010」を発行した。ここで指摘されている主な事実は次のようなものだ。

 日本の寄付市場は1兆円規模。うち個人の寄付額は推計5,455億円で、法人の寄付は総額4,940億円。「日本でもっと寄付が進むようになるとよい」と答えた人が約60%いる半面、実際に寄付をした人は37.6%にとどまっている。また「税金を払っているので寄付する必要はない」と答えた人が26.0%いる。結局、寄付の重要性の認識や理解はあるものの、実際の行動につながっていない。

 遺産を寄付する意思があるという人も14.7%いて、要するに寄付をしやすくする社会の仕組みになっていないことが、寄付の伸びを抑えているということのようだ。

 現状でも寄付した個人・団体の税が控除される認定NPO法人の数は、国税庁によると1月16日時点で190しかない。NPO法人が約4万もあることを考えると、少なくともこれまでは、国税庁を初めとする官庁がNPO法人の役割を十分評価し、本気で支援してきたとみる人は少ないのではないだろうか。

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