レビュー

大学進学断念せざるを得ない困窮家庭の数

2011.01.04

 経済の停滞に加え、どこの国よりも早く少子高齢化社会に突入している日本の将来は厳しく、早くも庶民の生活にはその重みがずっしりと…。各新聞の年末の紙面はそんな記事が目立った。多くの人がさまざまな思いで読んだのではないかと思われる。

 では、実際にどの程度の人々が、どのくらい困っているのだろうか。九州大学が年末に「家計の困窮が才能ある受験生の進学行動にどれほど影響を与えているか - 2010年夏・長崎県における調査で正確な推定値を算出 -」という調査結果を明らかにした。

 丸野俊一・理事・副学長、渡辺哲司・高等教育開発推進センター 准教授らによる調査は、2000年以降、複数の卒業生が九州大学へ進学した長崎県内の27高校へ質問紙を郵送し、進路指導担当の教師に答えてもらうという形で行われた。質問内容は、2010年8月時点の高校3年生について「国内の主要大学(目安として「旧帝大」レベル)に進学できる学力・意欲を持っている生徒数」「それらの生徒のうち、家計の困窮を主な理由として進学先を地元の大学に変えるかもしれない、あるいは大学進学自体を断念するかもしれない生徒の数」などを問うている。

 結果は、県外の主要大学に進学できる学力・意欲を持つ高校3年生の3%が、家計の困窮のために大学進学そのものをあきらめるかもしれない、という現実を明らかにした。地域差も大きく、長崎、佐世保という大きな市では2%だったのが、その他の旧郡部や離島地域では5-6%に増える。

 九州大学によると、今回の調査対象となった長崎県内27高校は、2000年以降に長崎県の高校から九州大学に進学した人の92.2%を占めている。母集団を丸ごと調べる悉皆(しっかい)調査とほぼ等しいことから、結果の信頼性は高い。今後、九州他県で同様な調査が可能かどうか検討し、九州大学として経済支援にとどまらない総合的な地域の教育振興につなげることを目指す、という。

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