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特別枠予算各省要求に一般から意見募集

2010.09.29

中村 直樹 / 科学新聞

 政府は28日、来年度の予算編成に向けて、「元気な日本特別枠要望」として各省庁から出された189事業についての意見募集を開始した。(http://seisakucontest.kantei.go.jp/)締め切りは11月19日。科学・技術関連や教育などをはじめ多くの意見が寄せられるとみられる。

 来年度予算編成のルールでは、義務的経費や年金・医療関係の自然増などを除いた政策的経費を1割まず削減し、その上で、その1割分、ないし削減が1割を超えた場合は超えた分の3倍の額を1割分に加えた金額の特別枠を要望することができる。対象となるのは、◇マニフェストの実現、◇デフレ脱却・経済成長に特に資する事業、◇雇用拡大に特に資する事業、◇人材育成、国民生活の安定・安全に資する事業—となっている。全体の予算規模としては「1兆円を相当程度に超えるもの」としている。

 8月末に締め切った概算予算要求・要望では、文部科学省の8,628億円を筆頭に、国土交通省7,703億円、防衛省4,755億円、農林水産省1,887億円、財務省1,394億円、厚生労働省1,287億円と続き、合計で2兆9,455億円に上った。

 各省庁の要望内容を見てみよう。

 文部科学省では、小学校1・2年生の35人学級を実現するために2,247億円、小中学校の耐震対策に1,898億円、国立大学の運営費交付金や私立大学補助金、教育拠点形成事業に合わせて1,199億円、2大イノベーションの推進などの研究開発に788億円、基盤的な研究開発や人材育成に447億円などとなっている。35人学級や運営費交付金などはマニフェストや政策集にも盛り込まれた事項であり、またイノベーションや研究開発人材の育成は新成長戦略の要となる。

 国土交通省は、社会資本整備総合交付金に2,373億円、国土ミッシングリンクの解消に1,074億円、高速道路の原則無料化の社会実験に750億円、地域公共交通確保維持改善事業に453億円、国際コンテナ戦略港湾のハブ機能の強化に400億円、住宅エコポイント330億円、高齢者等住居安定化推進事業300億円など、国民生活に直結する事業が盛り込まれている。

 防衛省は、在日米軍駐留負担経費、いわゆる思いやり予算1,859億円を盛り込んだ。一般物件費2,790億円などと合わせて4,755億円の要望となる。

 農林水産省は、マニフェストにある農家戸別保証制度を本格実施するための予算1,318億円など1,887億円。財務省は、中小企業信用保険事業で日本政策金融公庫出資金596億円、海外への円借款など有償資金協力事業で国際協力機構有償資金協力部門出資金746億円など、合計1,394億円。

 厚生労働省は、健康長寿のためのライフイノベーションに233億円、子宮頸(けい)ガン予防事業に150億円、介護者支援等に128億円、障害者の支援に126億円、新卒者の就職支援に73億円など、社会的弱者や国民生活に直結する重要事業が並ぶ。

 これらに優先順位を付ける政策コンテストでは、各省庁が要望した施策について国民の意見を集め、国会議員や民間有識者による評価会議で絞り込みを行った上で、1兆円超の配分を首相が最終判断するという。

 各省庁の要望に優先順位を付けるという困難な作業に国民の意見をどのように取り入れるのか。来年度の予算編成に対してはこれまでになく国民の関心が高まりそうだ。

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