レビュー

マスメディアからパーソナルメディアの時代?

2010.06.18

 21世紀はパーソナルメディアの時代—。17日都内で開かれたNPO法人ブロ−ドバンド・アソシエ−ション主催の会合で、講師の丸山不二夫 氏(早稲田大学客員教授、日本Androidの会 会長)から興味深い言葉が聞かれた。

 氏によると、20世紀の初頭は、電力ネットワークの形成とさまざまな新しいメディアが登場した時代と特徴づけられる。そしてまた、ラジオやテレビといったネットワークメディアがマスメディアとして発展した時代でもある。これに対し21世紀初頭は、グローバルなインターネットの発展と、さまざまなメディアのネットワーク上での統合と進展が特徴。そして21世紀はパーソナルメディアの時代、というわけだ。

 1日前に公表された総務省の「情報流通インデックス」計量結果によると、社会にさまざまなメディアを通じて流された情報の中で実際に情報の受け手が見たり聞いたりして認識した情報量(消費情報量)は、71.1%が放送を通してのものだった。興味深いのはマスメディアといえば必ず出てくる新聞は独立のメディアにされてない。印刷・出版9.4%の中に含まれていると思われる。放送と、印刷・出版を合わせると80.5%だから、まだ「マスメディアの世紀」は続いているようにも見えるが、子細に見てみるとやはり大きな変化が既に現れているとも言える。

 前年(2007年)度の調査結果を見ると、印刷・出版は9.3%でほとんど変わらない。ただし、放送は77.4%あった。つまり1年で6.3ポイントも下げている。この下がった分をインターネットとパッケージソフトが食っている。インターネットは1年で8.9%から5.2ポイント上げ、パッケージソフトも3.1%から1ポイント上げて4.1%に増えている。

 いま断トツに見える放送メディアもこのような低落傾向が続けば、丸山氏が言うようにパーソナルメディアに主役の座を譲り渡すことも十分あるように見える。丸山氏によると米国の音楽市場はオンライン販売比率が、2007年の20%から09年には35%に急上昇しており、2010年にはCDの売り上げを抜くと予想されるという。

 この日の丸山氏の講演の柱は、新しいネットワークメディアの時代をになうと見られるクラウドをめぐる国際的な動向であった。氏によると、ユビキタスという考え方も「平面上にアモルファスに広がる構造を欠いたネットワーク」であって、クラウドが持つ「ネットワークの背骨ともいうべき、明確な垂直構造をもたらすという視点を欠く」という。

 クラウドを活用する社会に向けて、米国の企業は着々と手を打っていることも報告されたが、果たして日本の生きる道は? 近々、公表されるとみられることしの情報通信白書にも注目したい。

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